表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
280/326

斥候殺し

 何度かこちらを振り返りながら、ジンベジとライドスは国王派の町へ向かっていった。

 もし二人を追うような敵がいれば、私たちはそれを阻止する予定であったが、敵の姿は見えない。

 「隊長、ここまでは上手くいったようですが、この後はどうするのですか」

 くつわを並べるツベヒが疑問を口にする。

 「攻撃はしてこないにしても、敵は我々を見過ごしにはできないだろう。君ならどうする、ツベヒ君」

 質問に質問で返すのは間違っているが、ツベヒがどう判断するのかに興味があった。

 「そうですね。私なら、十分に距離を取って追跡できるような斥候を送ります。近すぎると攻撃を受けるので、半日は離れたところから移動の痕跡を追いかけます」

 教科書通りの回答だ。ツベヒは指揮官としての能力を十分持っている。

 「私もそう思う。敵の追跡部隊は四騎から十騎といったところか。その追跡者を討つためには、こちらの騎兵を二十名ほど伏せておけばいいだろう」

 敵の騎兵に追跡されることが目的ではあるが、正確に味方の位置を把握されると、こちらが奇襲を受ける可能性もある。

 「念のため、今晩から見張りを厚くする。敵の斥候を消さない限り安心することはできないからな」

 即座に反撃部隊を送り出し、夜襲をかけるという判断ができる指揮官が敵にいるならば、かなりの強敵だろうが、その可能性は考えておかなければならないだろう。一息ついて、はなしを続ける。

 「斥候を追い払えば、ここから西に進んだところにあるリヒハールという町を襲撃する。敵の拠点への攻撃を続けながら、ギュッヒン侯の騎兵部隊を西へ導いていく。私たちは餌だ。敵が食いつくまで、何度か襲撃を繰り返すことになる」

 ギュッヒン侯の一番正しい選択は、私たちを無視することだ。そして、戦上手のギュッヒン侯なら、間違いなく私たちを無視するのだろうが、無視できない要素がある。それが私だった。自分の子を殺されたという恨みが、ギュッヒン侯の目を曇らせてくれるかもしれないということに、一縷いちるの望みを持っているのだ。

 日が暮れる直前に、天幕を張って野営の準備をおこなう。天幕を張ることを止めるという考えもあるが、鬼角族たちがそれに納得しないし、夜はまだまだ寒いのだ。


 何事もなく翌朝を迎えた私たちは、さらに西へ向かった。リヒハールへはここから二日ほどかかるはずなので、あと一日野営する必要がある。

 天幕を片付けると、そのまま西へ向かう。昼過ぎに、進行方向の右側に林があるのを見つけると、ツベヒと顔を見合わせた。まさに、伏兵を置いておくのに最適の場所だ。

 「ツベヒ君。軽騎兵を十名、キンネク族から十名を借りて、あの林で敵の斥候を待ち伏せて欲しい。通詞つうじにユリアンカさんを連れていけ。わかっているとは思うが、敵が西に通り過ぎてから。仕掛けるんだぞ」

 「わかってますよ。ところで、捕虜は取りますか」

 私たちの予想通りなら、敵の斥候を捕らえる可能性もある。捕虜を取るのかという質問は、敵を皆殺しにするかという意味になる。

 「馬を奪えば、あとは放っておいてもかまわない。この部隊の指揮官が私であることを伝えておくことを忘れるな。ギュッヒン侯は私に個人的な恨みを持っているから、いい挑発になるはずだ」

 ツベヒは少しホッとした表情を見せた。戦うことのできない相手を殺すのは、殺人と変わらないという私と同じ感覚なのだろう。ジンベジには、こういう優しさはない。

 荒事はいつもジンベジに任せていたので、ツベヒにとっては初めての単独任務だといえる。

 「それじゃあ、頼んだぞ。私たちはこのまま西へ進む。できれば明日中に合流して欲しい」

 二十騎の騎兵とツベヒ、ユリアンカの姿が林の中に溶け込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ