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三種の神器

 「キンネクでは、族長の地位はその長子へと受け継がれる。父のルネラントがお前たちに殺されたとき、族長の地位は我の兄であるサータンラントへ受け継がれるはずだった」

 「ひょっとして、その兄に嫌われたからここにきたのか」

 私の問いに、ハーラントは首を横に振った。

 「兄のサータンラントは、父とともにお前たちに殺されたわ」

 父親と兄を殺されたのであれば、私たちへの恨みはいかほどであろうか。ひょっとして、話しあうふりをして私を殺しに来た可能性もある。

 「それはいい」

 どうでもいいことのようにサラリという、ハーラントのことばに耳を疑う。

 「お前たち人間のように、キンネクは肉親への情が特に厚いわけではない。我と妹は人間の母に育てられたので、人間のことばや人間の社会について知っているが、キンネクでは力の強いものが尊敬される」

 「だったら長子相続ではなく、皆が納得するような強い族長を決めるべきじゃないのか」

 おもわず疑問を思わず口にしてしまうと、ハーラントは笑いながらいった。

 「そうだな。しかし、命をかけずにどうやってどちらが強いかを証明するのだ。相撲は男としてどちらが優れているかをはかることができるが、本当の強さは太刀で比べるしかなかろう。つまり、無駄な殺し合いをしないために、キンネクでは族長の長子が次の族長になることになっている。その族長が、よほど無能でない限りはな」

 ハーラントは酒を喉に流し込むと、またコップを突き出した。

 「本来は我が部族を支配するはずだった。戦いでも他の兄弟に後れを取ったことはないし、母から人間の暮らしや広い世界のことをきいておったから、知恵でも負けたことはない。それが父と兄が死んだとわかった途端に、爺どもが人間との混血がどうの他の部族が認めないだのイチャモンをつけて、弟のミゼンラントを族長にするということに決めおった」

 そういうと、ハーラントは怒りのあまり左手をテーブルに叩きつける。

 「まあ、落ち着いてくれ」これ以上やられると、テーブルが壊れそうだ。「だいたいのことはわかった。だが、わからないこともいくつかある。そもそも、なぜ私たちの方へ逃げてきたんだ。もし私なら、同じキンネクが暮らす西へ逃げるぞ。私がいうのもなんだが、人間よりも同族の方が信用できるんじゃないか?」

 「キンネクというのは我の部族の名前だ。隣の部族はナユームといって、その族長エルムントは我を人間との混血と嫌っておる。それに、我がナユームへ向かっても、我がキンネクの本当の族長であるというあかしがない」

 なるほど、話が見えてきた。人種的偏見は、このムキムキが東へ向かう理由の一つではあるだろう。しかし、それだけではない。私たちのところへ真っ先にきたのには、別の理由があるはずだ。

 「わかった。それで、君たちは()()を探しているんだ」

 鬼角族は、一瞬ハッとした顔をしたが、すぐに相好を崩した。

 「まったく、人間は皆お前のように賢いのか。まるで我が道化ではないか」

 「あなたのように、強い酒をグイグイ飲まなければ、誰でも私くらいには賢いよ」

 機嫌よく笑うハーラントを前に、ふたたび質問を繰り返す。

 「宝剣、指輪、兜、それこそキンネクの族長である証だ」

 鬼角族の答えをきいたうえで、本部天幕の中にある収納箱の鍵をあける。

 箱から死んだ族長が持っていた剣、かぶっていた兜、指にはめていた指輪を順に取り出し、テーブルの上に置く。

 ハーラントは目を丸くして、テーブルの宝と、私の顔を交互にみつめた。

 「これこそ、キンネクの宝剣、指輪、兜ではないか」

 「私たちが持っていても、物として以上の価値はない。条件次第では、あなたに渡してもかまわない」

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