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背負うもの

 「いしゆみは、材料の問題で二(ちょう)しか用意できんかった。もっと木材があれば、もう少しつくることはできたがな。あと、槍は乾燥させた細めの布草を柄として、百本ほど用意してある。穂先は注文通りやじりに毛の生えたような小さいものにしたんだが、いいんだな」

 私はうなずいた。この槍は馬上で相手に突き立て、そのまま捨てるものなので問題はない。二挺しかないのであれば、弩にはあまり意味がないが、技術水準を確かめる意味では重要だろう。

 「これで、わしらの持っている鉄は全部使ってしまった。炭はなんとかなるが、鉄がないとこれ以上は無理だな」

 「鎧や鎖帷子(くさりかたびら)を修理することはできますか」

 「鎧くらいなら大丈夫だろうと思うが、鎖帷子は時間がかかるぞ。まあ、現物を見ないことにはなんともいえんが」

 穴の開いた胸甲では、これから向かうナユーム族の前で武威を示すことができなくなる。実用度はともかく、見栄えだけでもある程度なんとかしてもらわなければならない。

 「わかりました。見た目だけでもまともに見えるように、修理を頼みます。後で持ってきますのでよろしくお願いいたします」

 ベエカに確認すると、鉄の道具を融解して鍛え直すこともできるということなので、敵の鹵獲した武器を材料とすることもできるはずだ。礼を伝えてから、小屋を出た。

 キンネク族が放棄した大太刀が百本、ルビアレナ村で調達できた大太刀が二十本。敵の騎兵から奪った馬上刀が約三十本、冬営地に残っていた大太刀が十本程度だから、結局キンネク族の四十騎は貧相な使い捨ての槍しか持てないことになる。これは大きな問題だが、敵を襲撃していく中で装備を整えていくしかない。

 村長の家に戻ると、行列はなくなっていた。ノアルー村長に声をかけて、私たちの宿泊する場所を決めてもらう。ジンベジやホエテテは、イングとシルヴィオの暮らす小屋に。兵士たちは五名一組で、鬼角族の戦士は二人で宿舎を割り当てられた。ハーラントと私は、村長の家に泊まることになった。


 冬の平原では熱い食事がなによりの御馳走で、味の薄い小麦のかゆを貪るように流し込む。

 「村長さん、貴重な大太刀や槍をありがとうございます。この後、私たちはナユーム族のところへ向かい、助力を頼むつもりです。うまくいけばいいのですが、場合によっては生きて戻れないかもしれません。その時は、手紙を残しておきますので、手紙を持ってフェイルの町へ向かってください。そこにある、草原の民の店の主人であるニビという黒鼻族に手紙を渡してもらえば、食料の買い付けなどで支援してもらえるでしょう。同族がこの村に暮らしていることをはなせば、より円滑に交渉が進むはずです」

 村長は、食事の手を止めなかった。

 「ハーラントさん、ナユーム族の冬営地まで何日くらいかかりそうですか」

 「我が小さい頃、年明けの祭りのために、一度だけいったことがあるだけなのだが、おおよそここから五日ほどだったと思う。とものものは、何度か行ったことがあるはずだから、もう少し正確な日数がわかると思うぞ」

 「だいたいの日数でかまわないんだ。だったら往復で十二日かかるとしましょう。それまでに私たちが戻らなければ、最悪のことを考えて行動してください。往復でひと月ほどかかるはずです」

 粥をすする手を止め、ノアルー村長がこちらをみた。

 「わしらは馬に乗れん。そんな遠くへ旅には出られない」

 ポニーのような馬がいれば、ルビアレナ村の人々も騎乗できるのだろうが、たしかに普通の馬は大きすぎるかもしれない。

 「ならば、キンネク族に助けを求めてください。ハーラントさんの妹君である、ユリアンカさんに手紙を書いておきます」

 「おい、ローハン。ユリアンカは文字など読めぬぞ」

 「居残りのライドスに読んでもらえばいいですよ」

 もし、私やハーラントが死ねば、ユリアンカはどうなるのだろうか。大太刀の腕は達者だが、ユリアンカが族長のかわりになれるとは思えない。次の交渉には、自分のためだけではなくユリアンカの命運もかかっているのだ。

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