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天使降臨

リュックにスーツケース一つ。

佐世保市の相浦駐屯地、正門前でタクシーを降りる。

中央病院からここまでの移動はスムーズだった。

周りの女性はみなとても親切だ。いちいち連絡先を聞かれるのは面倒だけど。


駐屯地の正門を通り、守衛所に待機する女性自衛官に告げる。

女性自衛官は、僕を遠くから凝視していた。

怪しいものではないですよ。ほら、ちゃんとしたスーツでしょ。


「立花一尉です。本日付けで連隊本部に着任しました」


「はい!承知しております。河北陸士長です。よろしくお願いします。

それでは、本部にご案内いたします」


かなり慌てふためいているようだ。落ち着いて。


「大丈夫です。一尉殿、お荷物、お持ちいたします。それでは、ご案内いたします」


「荷物は大丈夫。重くないし。案内、よろしくお願いします」


笑顔で返すと、女性自衛官の挙動不審度は増す。

手と足、同じ方が出てるよ。本当に大丈夫?


「きょ、恐縮です。お褒め頂き、大変、光栄に感じます」


・・・・別にほめてないけど。大丈夫かな?この人。


陸士長の後について構内を歩いていると、周囲に女性隊員の人だかりができ始める。

この世界、どうやら女性ホルモンと体力には正の相関があるようだ。

ほぼ全員が長身で、巨乳を薄いTシャツで隠している。

これが水陸機動団か・・・正直こちらの目のやり場に困る。


「見て!噂の医官よ!何あれ、超かわいい!」

「10年ぶりぐらいに至近距離で本物の男子見たわ。目に焼き付けとこ!」

「やばい!かわいいー!見て、歩いてる!」


って、歩くでしょ!ちょっと君たち!声、聞こえてるよ。

僕は恥ずかしくてうつむき加減になる。


「マジ、天使降臨キタコレ!あたし、貧血になろうかな!」

「あ!ずるい、じゃあ、私、生理不順になる!」

「生理ってあんた!それまずいでしょ?」

「婦人科も見てくれる?あたし、イっちゃうかも!」


・・・・君たちね・・・だんだん呆れてきたよ。

さすがに、これは騒ぎすぎでしょうと困り始めたとき、

女性フェロモンダダ漏れの、つまりはこの世界の猛者であろう長身セミロングの女性士官が、ポーズを決めて現れ、手を叩きながら周囲をいさめ始めた。


「はい、はい。みなさあん!そんなに見たら医官殿に失礼でしょ!職場に戻りますよお!」


「「「「「はーい!」」」」」


なんか、小学校の先生みたいだな・・・

そう思った矢先、突然、背の高いフェロモン女性の雰囲気が変わる。


「それじゃあ・・・・・気を付け!!!」


ビシッという音とともに、突然、全員が乱れなくその場で直立不動になる。

僕は心臓が止まりそうなほど驚く。


「回れ右!解散!!」


ザザッ!ダッダッダッダ・・・

一糸乱れぬ動きで回れ右して、全員が走り去り、辺りは静まりかえる。

再び守衛さんと僕だけになった。不安が募る。

防衛医科大学でも似たようなことはやったけど、レベルが違う。僕、大丈夫かな?


不安な気持ちでしばらく歩くと、3階建ての建物の前につく。

よく言えば質実剛健、悪く言えばダサい建物。

入口に、大きな木でできた表札がかかっている。


<西部方面普通科連隊 連隊本部>


ここか・・・


「こちらが連隊本部棟です。まずは衛生長(医官の責任者、僕の上司)のところにお通ししろとの事ですので、ご案内いたします!」


「はい。よろしくお願いします」


守衛さんに案内され、僕の職場となる医務室のドアの前まで連れてこられる。

守衛さんとは、ここでお別れ。いろいろありがとう!

そして、ドアの前で深呼吸して、心を整える。


コンコン。


「どうぞ!」


いよいよ、僕の1年間の部隊勤務が始まるのだ。


僕は期待と不安に胸を膨らませつつ、医務室のドアを開いた。



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