07 オバサン心
どうしよう、どうしようと慌てる男子高校生。どうやら私の事を疑っては居ないようなので、もう放って置いてもいいかと、私は彼に背を向けた。
「……」
だが、これも年の功なのか……?
あたふたと慌てている男子高校生が、“迷える子羊ちゃん”のように可愛らしく思ってしまったのだ。
ここ四年間で蓄積された私のオバサン心をくすぐる。
「……財布。いくら入ってたの?」
「に、二千円!」
食い気味に答えるには、あまりに小さな金額だったため、クスリと笑いたくなる。
今の私にとってはそこまで高額な金額でなくても、彼にとっては大金なのであろう。
「まあ、お金は諦めるしかないけど、他に大事な物は入ってなかった?」
完全に気が動転している男子高校生に冷静に鳴ってもらおう、と、私は彼を誘導する。
「だ、大事な物?」
「そう。例えば……健康保険証。あれって一応借金出来るものだし」
まずは思い当たる所から攻めていく。
“健康保険証”の名を聞いた男子高校生は、目を丸くして不思議そうに答える。
「……? あ、いや。入ってない」
そうか、それなら安心だ。と私は一息ついた。
そして他には何も無かったかな? と空をみて考える。
「じゃ、運転免許証は? あれは紛失届け警察に出さなきゃ行けないから」
「……持ってません」
「あ! 一番大変なやつ。銀行のカードとかクレジットカードは――」
カード会社などに急いで連絡しないと、と言おうとして、彼の顔に視線を向けた瞬間、私は「ゲッ」とした。
「あのさぁ! ふざけないでくれないか!? 俺はまだ十六だぞ!? そんな物持ってる訳ないだろーが」
「えっ、あ、ああ!」
またもや大声で彼に怒鳴られ、気付いた。
そう、彼は男子高校生。クレジットカードや免許証なんて持てる年齢ではないのだ。
さらに言うのであれば、私も一応女子高生――を装わなければ行けないのに……。
「――って、お母さんが言ってた」
「超ウソくせぇ!」