05 出逢い
ぼうっと目下の街並みを見続ける。
休日まで仕事なのか、足速に通り過ぎるスーツ姿の男。人混みにもまれながら必死に歩くお婆ちゃん。友達同士で走り回る小学生。双子コーデだかなんだか知らないが、ド派手な同じ洋服を切る女の子達。
「私もあんな高校生活を送ってたら、今はこんな事にはなってなかったのかなぁ」
教育熱心だった両親。その為にわざわざ一家で東京に越して、お嬢様高校とも呼ばれる規律正しい進学校に通わせてもらった。
もちろんその最中に遊ぶ暇なんて無かったのだ。
まあその熱心な教育に私は挫折してしまい、高卒で働いているのだが、別にそれで両親を憎んでなんかいない。
力が無かった私が悪いのだ。両親だって、私の就職に反対はしなかった。
「……って、あれ?」
ハッとして、街の一角を凝視する。
向かいのビルの入口付近で立ち止まり携帯をいじる学ラン姿の男子高校生。
その後ろにガラの悪そうな男がこっそりと近寄っていた。
男子高校生は耳にイヤフォンを付けていて、その気配を全く感じていない様子。
あたりの様子も気にしない男は、男子高校生の持っていたカバンに手を突っ込み、あろう事か財布を抜き取った。
「――っ! 泥棒っ!」
あまりの驚きに、私はガタンと音を立て椅子から立ち上がった。
「えっ、ど、泥棒?」
「あっ、えっと……」
その不振な行動に、周りの人が明らかに同様しているが、そんなことを気にしている場合じゃない。
私は手元に残ったビックモックをひと口で平らげ、ちょうどゴミ清掃をしていた店員に片付けを押し付ける。
「ごめんなさい、お願いします!」
「あ、ありがとうございました……?」
外へ飛び出した私は、一目散に被害者である男子高校生の元へと駆け寄る。それにすら気づかない男子高校生。
――今時の高校生は危機感ってものが無いの!?
怒りすら覚えた私は、なんの前触れも無く男子高校生の右腕を鷲掴みにし叫んだ。
「あんた! 引ったくりに遭ってるよ! さあ、走って」
「えっ、……えっ!?」
驚いた顔をした男子高校生の返事を待たず、私は無理矢理に走り出す。
「ちょ、まってください! な、何なんですかいきなり!」
突然に手を引かれた走らされた男子高校生は、もちろんの事動揺している。
私はそれよりも犯人に追いつかなくてはという一心で、彼を引っ張り走った。
が……。
「……きゃっ!」