表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/33

03 最期の思い出

「こんにちは、こんにちは! ああ、なんて今日は天気が良いの!?」


 雲一つ無い高く澄んだ青空。膝丈のプリーツスカートを翻し、真っ白な生地に良く映える紺色のセーラーカラー。数年前の流行りの丈のソックスに、傷の付いた茶のローファー。

 胸元の桜の校章は隣町の学校の物。そして、黒のネームプレートには金の文字が刻まれている。


“Kanzaki Teru”


――今、何やってんのコイツって思った人いるでしょう?


 そう、私。神崎輝、二十一歳。セーラー服を来て堂々と街を歩いているのだ。


 つい数十分前、部屋の隅で見つけた紙袋。中を開けてみたらまさに玉手箱。三年以上もそこに封印されていたらしい、懐かしの高校の制服が入っていたのだ。

 そう言えば、卒業した後「制服テーマパーク」したいだか、何だか思って取っておいたのを思い出した。

 だが、そんな暇なく月日が過ぎ、忘れ去られていたようだ。


 さすがにもう制服なんて歳じゃないし……とごみ袋に突っ込んだ――はずだったのだが、今現在着用しているという矛盾が生じている。


「最期の思い出よー。いいじゃない、いいじゃない! ゴールデンウィークなんだからっ!」


 ちょっと人目も気になるが、そこは都会というこの町が全て許してくれている気がする。

 実際、こういった遊びをしているのは私だけではないだろう。明らかに年齢の高い女子高生を見た事が何度もある。

 チラッとショーウィンドウに写った自分と目が合った。


「……なんだ、そこそこイケてるじゃない。まさか、こんな事に役立つなんてねぇ」


 日頃忙しい為、CCクリームをぬりたぐり、アイラインで目の淵を描く。軽く眉毛を染め、薬用色付きリップを塗ってはい終わり。そんななんちゃって化粧で過ごしている私の肌は、それほど劣化していないようだった。


 “若干肌がくすんでる高校生”くらいには見えるのではないだろうか。


「にししっ」


 さすがにスクールバックは見つからなかった為、トートバッグで代用している。私はその中から有名ブランド“Semantha Thavesa”の財布を取り出し、憧れだった制服モクドナルドを満喫しに、自動ドアを潜った。


「いらっしゃいませ! ご注文お決まりでしたら、こちらでどうぞ」


 笑顔が素敵なお兄さんが、女子高生の私に向かって声をかけてくる。


――ああ、なんて楽しいのだろう! 


 このお兄さん、大学二年生位かな? もしかしたら、年下(に見える)の私に恋心とか抱いちゃったりして! (実際は私が年上だけど)


 なんてほんわりと妄想していると、お兄さんが少し困った顔で声をかけてくる。


「お、お客様……?」

「あ、ごめんなさい! えっと……」


 そう言えば、メニューを考えていなかった事に今更気づく。後ろを見れば、長蛇の列が出来上がっていた。


「ビックモック、コーヒーで。砂糖いらないです」

「びっくも……か、かしこまりました……?」 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ