表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/33

02 部屋掃除

――さかのぼる事、三ヵ月前。


 五月晴れとはよく言ったものである。窓を開けると、ひんやりした空気と共に、花の甘い香りが吹き込んで来る。眩しさに目を細めると、雲一つない高い空が広がっていた。


「いー天気」


 ボサボサの頭をきながら、私はベット脇に直おきしてあるテレビを付けた。


『今年のゴールデンウィーク初日は、天気も良く、各地観光地は賑わいを見せております。帰省ラッシュも始まっていて東名高速道路は下り線六キロの――』


 テレビでは毎年恒例の帰省ラッシュのニュースが放送されていた。テレビのチャンネルを変えても、街角のインタビューや、新人芸人特番など、これと言って私の興味を引くものはない。


「今年はお母さん達、旅行りょこう行っちゃうし、実家帰るわけでもなし! ……やる事ないなぁ」


 二十一歳という人生の中でまだ華のある年頃の女……の筈だが、その“華”があるかどうかは、個人の差が大きい。

 私はどうやら“無い”方の人種らしかった。


「真純は……」


 昨晩のうちに連絡してあった真純へのLONEロイン――メッセージ交換アプリ――を確認する。


「チッ。いいよなぁ、彼氏持ちは」

 

 池袋の有名なパイを食べに行こうと言った誘いは、“悪ぃ、彼氏”の一言で玉砕された。

 友達もいない訳では無いが、十八歳からほぼ休みのないブラック企業に務めた事をきっかけに、疎遠になってしまった。

 唯一繋がりのある高校の友達は大学四年生。忙しい時期だろう。


「仕方ない。随分とご無沙汰になってたコイツら。片付けますか」

 

 私はパイプベッドの上に仁王立ちにになり、散々な模様の部屋を見下ろした。

 脱ぎ散らかされた洋服達。不思議たことに、コートが床に落ちている。ここ半年まともに部屋の掃除なんてしていなかったのだ。

 私は部屋の窓を全て開け、マッハで片付けを始めた。


 やり方は簡単。用意するものはごみ袋と洗濯カゴだ。散らかりの原因がほとんど洋服やお弁当のごみ、ペットボトルなので、捨てるか洗うかの二択なのだ。


「これは、捨て! 洗濯。……んー、もう毛玉だから捨て!」


 ブラック企業に務めて以来、如何いかに“時間”が大切かを学ばされた。仕事の癖が抜けないのか、そもそもそれが性格になったのかは知らないが、私は躊躇せずに仕分けをしてゆく。


「仕分け仕分け……二位じゃダメなんですかっ! なんつって……って、あ! これ――」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ