01 ほんの出来心
「――なーんて言うと思った!? あんたバッカじゃないの?」
「うん、馬鹿です」
深夜十一時。そろそろ終電を気にしなければいけない時間帯の居酒屋で、焼肉の網を挟みながら大声を出す残念な二人組がいた。
話の内容は突拍子もない事――今日の昼間に男子高校生に告られたという物だった。
「――で? なんて答えたのさ」
「……今は何も考えてないって」
神崎輝、二十一歳。社会人四年目の干物のように乾いた私は、昼間あった出来事を同期の末廣真純に話していた。
「土曜日に呼び出しがかかって何事かと思えば、そんなくだらない話だったなんてね。つか、その男子高校生と初めて会ったのはいつなの?」
真純は口こそ悪いが、優しい人だ。そうでもなければこんな数時間も私に付き合ってくれるはずが無い。
「ゴールデンウィークから……」
この際全て洗いざらい話そうと、思い切って言うと、真純は掴んでいた肉をホロリと落とした。
「はぁ!? 何それ、ぜんっぜん聞いてないんだけど。……最近つきあい悪いと思ったら、そんな若い男と遊んでたの。ビックリドン引きやわぁ……」
「その節は大変申し訳なく」
肉の破片が歯に詰まったのか、楊枝でシーシーする彼女に向かって、私は頭を下げた。
「ゴールデンウィークっつーと、だいたい三ヶ月の付き合いね。告られるまで何も感じなかったの?」
「……いや、その……」
「あー分かった分かった。その前に一つ初歩的な質問していい?」
先程から、はぁ、だの、ほぉ、だのしか返答しない私に真純は最もな質問をぶつけた。
「つか、なんであんた制服着てたの?」
「……ほ、ほんの出来心だったんですぅ!」
「出来心って何じゃそりゃ!」
「……なんかさ、制服って、卒業してから着たくなる物じゃない?」
「ンなもん、お前だけだ阿呆」
こんばんはm(*_ _)m
作者の千歳実悠です。こちらのお話は一つを短く、そしてリズム良く更新して行きたいと思います。
どうぞよろしくお願いします(*^^*)
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