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変態鬼畜教師の誰もが絶叫するような調教教育  作者: Kagari
変態教師、あらわる
9/23

ほんのわずかなやる気②

 更新遅れてすみません。

 さあ今回もlet's 鬼畜!

「はい?」


 童貞勇者が、呆れた声を出した。


「ああ、なんなら焼いてもいいぞ。破ってもいい。とにかく、お前らの手元から教科書という物を無くせ。こんな物、ただ重いだけの無用の長物だ」


「そ、それが先生の授業となんの関係があるというのですか?」


 未だにうろたえている童貞勇者に、サディは溜め息を吐いた。


「おい童貞勇者、まさか食べるとか言わないよな? 本の中で食べて許されるのはエロ本だけだぞ」


「誰もそんな事言ってないだろ! しかもエロ本も食べたら駄目だろ!」

 

 叫ぶ童貞勇者を、サディは可愛そうな物を見る目で見た。


「おい童貞勇者・・・・お前がエロ本を食べるとか言うから、クラスの皆がドン引きしてるぞ・・・」


「アンタが振った話題だろ!」


「ま、童貞勇者のナンパ自慢はどうでもいいとして・・・・お前ら、教科書捨ててきたか?」


 童貞勇者のツッコミを清々しいほどにスルーして、サディが生徒達に聞いた。しかし童貞勇者のように皆疑問に感じているのか、誰一人として捨てた物はいない。


「おいおい、なに躊躇ってるんだ? いいか、教科書なんてな、授業中の居眠りを隠すのと、イラついた時に一枚ずつビリビリ破く以外使い道がないんだぞ」


 サディが生徒達を説得しようと試みる。その時、一人の女生徒が立ち上がった。


「私は反対ですわ、先生」


 凛とした声で、少女が言う。今度はお嬢様キャラかよ、かったりぃなと思いながら、サディはしぶしぶ少女の方を向いた。


「なんだ? 不満があるなら言ってみろ」


 少女は背筋を伸ばすと、教室内に響き渡る声でサディにまくしたてた。


「ええ、言わせてもらいますとも。まず、この教科書は国が発行しているものです。つまりこれは、国民の税金によって賄われているのです。それを使わないならともかく、捨てろなどとはどういう事ですか? 私達に、税金を無駄にしろと⁉ 

 それにここには、私達が魔王を倒すために必要な魔法がほとんど載っているんですよ⁉ つまりこの教科書一冊で、魔王と対等に渡り合えるといっても他言ではありません。それなのに捨てろだなんて、どういう了見ですか⁉」


 サディは大きくあくびをすると、心底つまらなそうに言った。


「いや、こんな小手先の魔法ごときで、魔王と対等に渡り合えるわけないだろ」


 その、国全体を敵に回しかねない発言に、少女のこめかみに青筋が浮かぶ。


「この教科書の中に載っている魔法の中には、一撃で街を吹き飛ばす威力を誇る物もあります。それを一体なにと比べたら『小手先』と言えるのですか⁉」


 少女の怒声に、サディは面倒くさそうに答える。


「そんなの、魔王の使う魔法に決まってるだろ」


「「「「え?」」」」


 生徒達の顔に、驚愕が走った。だがそれも無理もない。

 生徒達は今まで、こう教わって生きてきたのだ。


 ーー魔王は人類の作った魔法を使えず、個々の持っている能力とその圧倒的パワーで人類を蹂躙する、と。


 その言葉が本当だと信じていたからこそ、人類は自分たちだけが使える『魔法』に頼ってきたのだ。魔王と同じ土俵で戦っても、勝てないことを悟って。


「知らなかっただろ? まさか魔王が魔法を使うなんて。まあ無理もないな、だってこれ国家機密だから。だが実際、魔王は魔法を使うぜ。しかも魔力容量も威力も桁違いだ。多分初級魔法で小国一つ滅ぼせる。どうだ、これに比べれば人類の使う魔法なんて『小手先』だろ?」


 自嘲するかのように笑うサディに、生徒達は何も言えない。

 しかし、やはり悔しいのだろう。先程の少女が再度立ち上がり、サディに言う。


「で、でも、この教科書には国が総力を結集して厳選した魔法が載ってるから、少しはーーーーー」

 

 少女の意見を、サディは一笑に付す。


「おいおい、俺が知ってる話だとその教科書、魔王【ビスマルク】の鱗に傷を付けた時、その功績を載せるために出来たらしいじゃねえか。お前らは魔王の装甲にかすり傷負わせるために、人生の半分を無駄遣いしてるのか? そりゃご苦労なことだな」


「ぐッ・・・・」


 少女はぐうの音も出ない。童貞勇者は、サディがアーチャを追い出した理由をようやく理解した。


 アーチャは良くも悪くも典型的な優等生だ。それこそ、教科書を擦りきれるまで読むくらいには。


 そんな彼女に、教科書が無駄だという現実を突き付けたらどうなるか。多分、悲惨な事になるだろう。


 それを避けるためにも、アーチャを追い出しておく必要があったのだ。童貞勇者は、サディの優しさに密かに感動した。


「さて、教科書の価値のなさを十分に理解してもらったところで、授業を始めていこうか!」


 少女が無言で、かつ屈辱に満ちた表情で着席したのを見届けてから、サディは嬉しそうな声を上げた。


「今俺が論破した通り、教科書なんて紙の無駄遣い、魔法なんて覚えるだけ時間の浪費にしかならない技術だ。じゃあなんで、政府はこんな本を発行するんだと思う?」


 生徒達は答えられない。その表情を満足そうに見ながら、サディは口を開く。


「答えは簡単。『現実を見ていないから』だ。政府の馬鹿どもは未だに、魔法さえあればなんとかなると思ってるんだよ。魔王が魔法を使える現実を知っている上でな」


 サディの口調が、だんだん吐き捨てるようになっていく。


「まったく、下らねえ。自分の保身のためだけに民を身代わりにして、自分はいかにも考えていますというフリ。なあ、お前らはそんな屑どもの身代わりになっていいのか? 国が作った魔法なんていう下らねえ物信じて、お国のために死ぬのか?」


 童貞勇者は首を振った。他の大半も首を振っている。


 それを見て、サディは大仰にうなずいて見せた。


「だったら、俺の授業をしっかりと学べ。教科書使ったお勉強ごっこはもう終わりだ。ひたすら実践重視、格好良さは二の次だ。恥も外聞も捨てろ。そして、魔王と戦って生き残れ。いやーーーーー

 逆に、魔王をぶっ殺せ」


 そこまで言うと、サディはニヤリと笑った。


「さあ、魔王を倒すための調教教育を始めるぜ」


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