サディ、半覚醒
さあ今回もlet's 鬼畜!
目が覚めると、そこは保健室だった。
「そういや俺、女子の身体測定しようとして失敗したんだっけ。チッ、あわよくば数人妊娠させてやろうと思ったのに・・・」
文句を言いながらベッドから身を起こす。受けた魔法が水魔法だったおかげか、服は無事なようだ。
「さてと、今何時か知らないがこのまま体調不良って事で帰るとするか」
思いっきり教師らしからぬ事を言い、大きく伸びをする。すると、隣から声を掛けられた。
「あ、あの・・・」
見ると、ベッドのそばにあるパイプイスに、女子生徒が座っている。
「ん? 誰だお前」
サディの質問に、女子生徒が身を震わせる。
「え、えっと・・・」
蚊の鳴くような小さな声で女子生徒は言う。
「さ、先程は、ありがとう、ございました・・・」
俺なんかしたっけ。
何に対してお礼を言われているかサッパリ分からないサディは、女子生徒をまじまじと見つめた。
そして、お礼の心当たりに気がつく。
こいつ、俺が割り込まなきゃ魔法くらって殺られてたはずのアイツか。
サディの中で女子生徒の認識が、『一介の生徒』から、『メス豚候補』に変更される。
そんなサディの不純な発想にも気づかず、女子生徒は頭を下げた。
「さ、先程はありがとうございました。先生が守ってくれたおかげで、私は無傷ですみました。本当に、ありがとうございます」
「よし、じゃあそのお礼に服を脱げ」
「え?」
「いや何でもない。で、お前はそんな事のためだけにわざわざ俺ご起きるのを待ってたのか? ご苦労な事だな」
サディの皮肉げな口調に、女子生徒は首を振った。
「いいえ、先生はすぐに起きたので全然大丈夫です。私の名前はレーナ=ハンニバルと言います。以後お見知りおきを、サディ先生」
「おう、こちらこそよろしく。で、何の用だ?」
「そ、その・・・」
レーナは躊躇うような仕草をすると、呟くようにして言った。
「わ、私、記憶力があまり良くなくて、魔法があまり上手く使えないんです。クラスでも一番魔法が下手で、こんな私でも本当に魔王が倒せるのか不安になって・・・」
言葉がだんだん尻すぼみになっていく。サディは大あくびをすると、「で?」と続きを促した。
「前任のヤダル先生が居なくなって新しい先生になったら、ますます授業についていけないんじゃないかって心配になったんですけど、先生今日ちゃんと授業をやっていなかったのでせめて授業方針だけでも聞いておこうと思って・・・」
「それでわざわざ俺が起きるのを待っていたと。なるほどな。ところで、皆はもう帰ったのか?」
「は、はい。担任不在という事で、ホームルームを行わずに即
帰宅になりました」
「そうか。ま、そりゃそうだわな。で、俺の授業方針だっけ? 悪い、まだ考えてなかったわ」
「え?」
レーナが驚いた顔でサディを見る。
「とりあえず前の学校みたいに、全員まとめて調教しようかと思ったんだがそれも無理そうだしな。一日考えさせてくれ」
「は、はい。分かりました」
レーナが頭を下げる。律儀な奴だ。
「じゃ、お前は帰れ。じゃなきゃ俺も帰れん」
「あ、はい。では、さようなら」
レーナがまた頭を下げて退出していく。サディはその後ろ姿を見送ると、教科書をパラパラとめくった。
「さて、どうしたもんかね」
サディの家は、学校から歩いて10分ほどのところにある一軒家だ。マンションだと鞭とあえぎ声が近隣に聞こえてしまうから、が主な理由だ。
「ただいま」
ドアを開けて声をかける。すると、部屋の奥からパタパタという音が聞こえて来た。
「お帰りなさい、お兄様」
エプロンを着けた少女が顔を出し、笑顔でサディに言う。サディはそれを聞くと、満足そうに頷いた。
「ああ、ただいま妹よ」
彼女はカンナ=ハルシオン。サディの義理の妹で、この家で唯一家事が出来る人間だ。
義理の妹というだけで既に大変なのに、その上性格も良好、家事も出来ておまけに美少女といった、まさに完璧な美少女である。鬼畜、変態、快楽主義と三拍子揃った駄目人間のサディとは大違いの人間だ。
サディが余韻に浸っていると、
「お帰り、バカ兄貴」
部屋の奥から、もう一人の妹の声が聞こえて来た。
「おう、今帰ったぜ。というか、お前は相変わらず口が悪いな、リサ」
サディが皮肉げに言うと、リサと呼ばれた少女は鼻を鳴らした。
「アンタがロクでもない事しかしないからだろ。今日の授業の様子、聞いたぞ。また馬鹿な事やってたらしいな」
妹その2、リサ=デーモンド。
こちらはれっきとしたサディの妹だ。男まさりの口調に、男のような格好。美少女である事に変わりはないのだが、こちらはとにかく口が悪い。ツンデレ、と呼べば可愛いものだが、悪く言えばただの毒舌家である。それ故サディに時々、「カンナが居れば要らない子」と揶揄されている程だ。
それと、格闘術が超絶的に強い。とある事情で強くなりすぎて、一軍隊を相手取っても負けないサディを瞬殺出来る程度には強い。
「あ、それ私も聞きました。なんでもお兄様、生徒を鞭でめった打ちにしていたのだとか」
「純粋な心を持った妹よ。そんな物騒な言葉を使ってはいけませんよ」
「うっさい、バカ兄貴。アンタのせいでこっちが恥ずかしい」
「うふふ。でもリサったらお兄様の名前が出たとき、誇らしげでしたよ」
「ばッ、んなわけないだろ!」
これがデーモンド家の日常である。
「なあ、この教科書って何年前から使ってるんだ?」
カンナが作った夕食を食べながら、サディが教科書を見せる。
「えっと確か・・・魔王【ビスマルク】の鱗に傷を付けられた時と同じ年なので、ちょうど5年前ですわ」
「そうか。ちなみに、その教科書には何が乗ってるんだ?」
「その位自分で読めよ、バカ兄貴」
リサが毒舌を吐く。サディは眉をひそめた。
「おいリサ、お前そんなんじゃ妊娠出来ないぞ。処女のまま終わってもいいのか」
「兄貴キモイ。そしてウザイ」
「はいはい、二人ともそこまでにしてください」
カンナが間に割って入る。その言葉に、二人とも矛を納めた。
「悪かった。で、続けてくれ」
「はい。えっと、魔法を起動するための呪文一覧と、過去の魔王に付けた攻撃の記録ですわね。それと、僅かですが各魔王の情報も少々」
魔王は一人ではない。その種類は未知数、現在確認されているだけでも十二体の魔王が、この世界で幅を効かせている。さらに魔王は一人一人が強く、討伐したという記録はない。あくまで討伐した記録は、だが。
「それだけか? 他には」
「ありませんわ、お兄様」
「そうか。ありがとう妹よ。おかげで助かった」
サディがカンナの頭を撫でると、カンナは嬉しそうな顔をした。
「いえ、こちらこそお兄様のお役に立てて光栄ですわ」
その少し過激な兄妹のスキンシップを、リサは不機嫌そうに見ていた。
授業二日目。
その日、サディは学校に行かなかった。
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