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バード王子の独立記  作者: 市境前12アール
第四章・技術集約点ビオスフィア
26/44

4.飛行オタクと鳥オタク

2017.12.25 三点リーダーを修正。


メディーナさん視点です。

(バード君、ちょっと、どうしちゃったの?)


 フレイ・ウェイという名の少女と、バードとのやり取りを聞いて、メディーナが最初に感じたのは、そんなことだった。


 リョウ・アーシの屋敷の中庭。夕食を終えて自室に帰る途中。フレイ・ウェイという名の少女をバードは呼び止め、言葉を交わし、やがてバードの言葉が熱を帯びる。

 やがて、飛行機は鳥ではないとバードの言葉をフレイが否定し、小さい飛行機では研究できないとフレイの言葉をバードが否定する。

 そして、バードは熱を帯びたまま。フレイは静かな、涼し気な雰囲気をまといながら自分に没頭する。


 そんな中、バードの態度に不意を打たれた形となったメディーナは、口を挟む機会を失い、ただ二人の様子を眺めていた。



「そうね。検討する価値はあるわね。叔父様と相談してみるわ」


 フレイちゃん?の口からそんな言葉が漏れるのを聞いて、ちょっとホッとする。

 だって、バード君、さっきからちょっとおかしいよ。


 飛行機って、ちょっと前、バード君とイーロゥさんが見てた、空飛ぶ玩具だよね。確か、飛ばしてたのはフレイちゃんだったと思う。

 フレイちゃん、ちょっとクールな感じだけど、飛行機って玩具のことをすごく大事にしているのは伝わってくるのよ。バード君もそれは分かってると思うんだけど。


 なのに、いきなり駄目だしなんかして。バード君、飛行機って玩具のこと、全然しらないんだよね。そんな人がいきなり鳥のことを例えにだして否定したら、怒られても文句は言えないよ? それを前向きに受け取ってくれて、フレイちゃんが良い子でよかったよ、ほんと。

 後で、バード君にはちょっと言っておかないと。大人しそうな子なんだから、そんな怒ったような喋り方はしちゃいけないって。


 後で考えれば、ちょっと馬鹿げたことなんだけど、この時はそんなことを考えていたのよね。この後の展開なんか知らずに……



「叔父様って、リョウ・アーシさん?」

「そう。研究所の責任者だから。王子様の意見はちょっとおおごとだからね」

「今から?」

「……そうね。早い方がいいわね。王子様も来る?」

「うん。僕も話をして良いの?」

「大丈夫よ」


 ……なに? なんでそんなに仲がいいの?

 さっきまで、けんか腰に近くなかったっけ?

 さっき会ったばかりだよね?


 狐につままれたような感覚を抱きつつ、リョウ・アーシさんの部屋に移動する。



「いきなり大型化は無茶だ。許可できねえな」

「でも、必要なのよ!」


 ……今度は、リョウ・アーシさんとフレイちゃんの間で口論が始まる。

 そして、なにより驚きなのが……


「いまの大きさじゃ飛行機は作れないよ。本当に飛行機を創りたいなら、大きくしなきゃ絶対に(・・・)ダメだ」


 バード君が、今度はフレイちゃんの側に立って、リョウ・アーシさんに食って掛かってる。


 あのね、バード君。リョウ・アーシさん、私達を匿ってくれてるんだよ。いわば恩人だよ。そんな口聞いていい相手じゃないよ? 少し頭を抱えたくなる。ちょっと仲裁しなきゃ!


「バード君、ちょっと落ち着……

「メディーナさんは黙ってて!」「口を出さないで!」「部外者は引っ込んでろ!」


 ……ええぇ~

 なんで、リョウ・アーシさんにまで言われるの?

 バード君は部外者じゃないの?

 もう訳がわからないよ……



「まずは、これを読んでおいて」


 結局、リョウ・アーシさんは頷かず、私達は彼の部屋を後にして。

 フレイちゃんはひとつの冊子をバード君に渡す。


「これは?」

「飛行機についてまとめた資料。ちょっと行き詰ってるから。意見が欲しいのよ」

「だけど、大型化しなきゃ……

「今のままじゃ許可が下りないわ。だから、王子様にも付き合ってもらうわよ」

「……わかった。まずは読んでみるよ」


 ようやく落ち着きを取り戻してきたバード君が、フレイちゃんとそんなやり取りをする。

 ……退室するとき、別にリョウ・アーシさん、怒ってる風に見えなかった。むしろ、「頑張れよ」なんて声をかけてたくらい。今も、バード君とフレイちゃん、仲良さそうだし。


 そうね。バード君を叱るのは無理。訳がわからなさすぎだよ。とりあえず様子を見て、それからね、うん。



 その日、結構遅くまで、バード君とイーロゥさんは起きてたみたい。

 渡された資料、そんな読むのに時間がかかるほどの分量には見えなかったんだけどな……



 次の日、バード君がフレイちゃんの研究室に行くというので、私もついていこうと準備してたら、「別に来なくてもいいと思うけど」なんて言ってくる。

 ……なにか、バード君、私のことがすごい邪魔そう。だけど、明確に断る理由がないからしぶしぶ了解しているみたいな感じがする。


 あれかな? 思春期? もうバード君も13才だし。

 ……違うわね、絶対。私も人を見る目に自信は無いけど、昨日のあれをみて色恋沙汰だと思うのはどうかしてるわ。

 じゃあ、あれかな。なんか反抗的になる時期。男の子って、そんな時期があるよね? でもそんな感じとも違うんだけどな。


 でも、昨日のバード君を見ちゃうとね。明らかに普段のバード君とは違ったから。ちょっと一人で行かせるわけにはいかないよ。


 そうして、バード君と二人、フレイちゃんの研究室にお邪魔する。



「始めまして。メディーナです」

「フレイ・ウェイ、フレイでいいわ。一応この研究室の責任者。歓迎するわ」


 まずは自己紹介をして。昨日の剣幕が嘘みたいに冷静。ちょっと冷たい感じがする子だけど、嫌な感じはしない。きっと普段からこんな喋り方をする子なんだと思う。

 幼さが残る、薄くそばかすが残った顔。山吹色の髪が白く綺麗な肌を飾ってる。うん。将来は間違い無く美人さんだね。今でも十分にかわいいけど。


 ……やっぱり、昨日の剣幕が信じられないよ。物静かで、言葉はちょっとそっけない感じもする。だけど、呼ばれていない私にも丁寧に接してくれようとしているのが伝わってくるのよね。

 そんなことを思いながら、彼女の研究室にお邪魔する。



 来て良かったのか、悪かったのか……


 始めはね、和やかに三人で話をしてたのよ。リョウ・アーシさんとどんな関係だとか、なんで苗字が違うか、とか、そんなことを。

 アーシって苗字は特別で、ビオス・フィアでも偉い人の苗字だとか、例え兄弟でも家を持てば違う苗字に変えなきゃいけないとか、そういった事をわかりやすく説明してくれて。うん、この時は普通だったよ。


 だけど、飛行機の話になって。気が付くと、研究所の隅に置かれてた、飛行機って玩具のことをバード君が質問して。フレイちゃんがそれに答えてた。二人とも、私のことをそっちのけで。

 まあ、離宮の授業みたいな感じかな。バード君が質問して、フレイちゃんが答えて。こんな真面目に授業を受けるバード君、見たことないけど。

 飛行機って玩具のこと、ちょっと興味があったからこっそり聞こうかと思ってたんだけど、話してる内容はチンプンカンプン。もう、同じ言葉じゃないよね。ヨウリョクとかスイシンリョクとか。


 しょうがないからお茶を淹れようとお湯を沸かしたら、いきなりフレイちゃんが目を輝かせて、どうやってお湯を沸かしたのか聞いてくる。ちょっと実演してみたら、今度は根ほり葉ほり。どうやったら使えるようになるのかとか、他に何ができるかとか。

 ちょっとお邪魔しちゃったかな、とか思ってバード君の方を見たんだけど、全然気にした風もなく、飛行機と資料を見比べてうなずいたりしてる。


 これはこれで、ちょっとバード君、変だよね……


 でも、仲はよさそうだったから、ちょっと安心してたんだけど。一通り質問が終わったら、今度はまた、バード君が暴走し始めて。口調こそ変わらないけど、フレイちゃんも結構熱くなってるみたい。言い争いみたいなのが始まって。


「まずは動力ね」

「違うよ! プロペラでしょ!」

「動力が確保できなきゃ何もできないわ。推力を得るためにも動力を確保するべきよ」

「プロペラがどのくらいの大きさかとかがわからなかったら何もできないよ! まずはプロペラを大型化して、どんな形がいいかとか調べなきゃ!」


 慌てて仲裁に入ろうとすると、口を開く前から、二人揃って怒鳴られる。


「「メディーナさんは黙ってて!」」


 ……ほんと、仲がいいわね、この二人。ちょっと拗ねたくなってきたよ。



 昼過ぎ、イーロゥさんが研究室を訪れる。そういえば、この研究所で教鞭をとってるんだっけ。すっかり忘れてたよ。

 二人の口論?は続いたまま。それを見てイーロゥさんは一人頷く。


「こんなことだろうと思って、サンドイッチを買ってきた。とりあえず中断して昼食にしよう」


 その言葉で、二人の口論はピタリと止む。ええぇ~


「そうね。ちょっと結論でそうにないわ。一旦休止しましょう」

「そうだね。ご飯にしようか」


 そうして、和やかに昼食が始まる。


「そういえば王子様、どうしてウチで匿われることになったの?」

「……その前に。その『王子様』って何?」

「王子様は王子様でしょ。今までずっとそう呼んでたけど?」

「……そういえば。だけど、逃げ出したんだから、もう王子じゃないと思うけど」

「逃げ出そうがなんだろうが王子様は王子様よ」

「……まあいっか。リョウ・アーシさんの家に匿われた理由はイーロゥ先生が一番詳しいんじゃないかな」


 そんな感じで、世間話を挟みつつ、穏やかに昼食の時間が過ぎていく。


 この二人、親しげだったり、興奮したり、和やかだったり、疲れないのかな?


 私はもう疲れてきたよ……



 午後、食事を片付けると、またもや口論になる。

 そこにイーロゥさんが割り込む。


「その二つは同時にできるだろう」


 その言葉に、二人が口論を止め、イーロゥさんを見る。


「話を聞くに、フレイ殿は動力を確保したいのに対し、バードはプロペラの推力を確保したい。プロペラの推力を研究するのはフレイ殿が適任だから結論が出ないのだろう?」

「そうね。プロペラの推力を王子様に手伝ってもらうのは無理よ」

「だが、動力はフレイ殿も専門外ではないのか?」

「ええ。だから、まずは知りたいの。飛行機に適した動力が何かを」

「思うに、フレイ殿は飛行機の全てを自分で(・・・)検討したいのだろう。だから、自分に知識の無い動力を優先して研究したいのだと思う」

「……そうね。否定しないわ」

「対して、バードは飛行機に特有の部品を研究すべきだと考えてるように思う。だから、他では研究されていない、プロペラに焦点を当てた意見を言ったのだろう」

「……そっか。そうかもしれない」

「……王子様?」

「自分のことは案外わからないからな。で、どちらも推力が最優先課題という認識に違いは無いのだろう」

「「もちろん(よ)」」

「なら、フレイ殿がプロペラを研究し、バードが動力を選定するのが良いと思うが、どうだろうか?」

「……担当を分けて、私が王子様の意見を容れるわけね」

「で、僕はフレイの重視する動力を担当すると。僕はそれでもかまわないけど」

「そうね。動力は私も素人よ。それで構わないわ」


 なんで、イーロゥさん、あっさり口論を仲裁できるんだろう。もしかして、私、取り残されてる?


 ……そうね。良く分かったわ。バード君を心配する必要は無いって。取り越し苦労だったって。

 ええ、そうね。心配しなくていいって良く分かったよ。


 明日からは、もう来ないわよ、こんな場所。

 そんなことを思いつつ、その日の研究は終わる。


 ほんとに疲れたよ。もうヘトヘトだよ……



 次の日から、研究室に同行するのはやめた。だけど、行かなくなったわけじゃない。


「すまないが、食事を研究室に届けるようにしてほしい」


 イーロゥさんがそんな頼みごとをしてくる。

 イーロゥさんが言うには、放っておくと、食事を抜いて研究に没頭するんじゃないかと危惧しているらしい。昼食どころか夕食まで。

 だから、最低でも昼食。できれば夕食時も迎えにきて貰うようお願いされた。


 ……始めはね、そんな馬鹿なって思ったのよ。だけど、初日でその危惧は正しいって実感したよ。切りが付くまでとか言って一時間以上中断しないんだもの。


 さすがに怒ったよ。久しぶりに叱ったよ。平手打ちしたよ。

 バード君、ちょっとびっくりして。すぐに謝って。だけど本当に切りをつけなきゃいけないからって。数分だけ作業させてと言って。それだけは聞かなくて。

 嘘だったら魔法杖で思いっきり殴ってやるとか思いながら、聞き入れて。一分経たないうちに切りを付けて。ようやく肩の力を抜いて。


 フレイちゃんの凄く驚いた顔が印象的。だけど、見られたってかまわないよ。どう思われたって知ったことじゃない。バード君はもう十三才。良いこと、駄目なことは自分で判断しなきゃいけない歳。バード君はまだ十三才。間違ったことを誰かに叱られて、それで済ますことができる歳。だからちゃんと叱るのが私の役目。ここで正さなきゃ、大人になったバード君が困るから。


 そうして、フレイちゃんを一人置いて、研究所をあとにする。



 その日の夜、一人、リョウ・アーシさんの部屋に呼ばれて。部屋に入ると、リョウ・アーシさんとフレイちゃんが一人掛けの椅子に座ってた。


「ごめんなさい!」


 部屋に入るなり、フレイちゃんが慌てて立ち上がり、深々と頭を下げてくる。ちょっと!?

 慌てて止める。フレイちゃんの元に駆け寄り、頭を上げるよう伝える。


「まあ、とりあえず座ってくれ」


 リョウ・アーシさんに言われ、長椅子に一人座る。リョウ・アーシさんがコップにお茶を注ぐ。

 全員分のお茶を注ぎ終わったところで、再びフレイちゃんが口を開く。


「私が悪いんです。その……

「まあ、ちょっと落ち着け。別にメディーナ殿はそこまで怒ってねえよ。そうなんだろ?」

「えっと……?」

「今回、バード王子を叱りつけたそうだが、そうだな……。罰として二度と外に出さないとか、そんなことまで考えてるか?」


 リョウ・アーシさんのあんまりな言葉に、驚きながら首を振る。慌てて説明する。


「いえいえ、ちょっと待ってください。バード君、ちょっとだけ待たせるようなことを言って一時間以上も好きな事を続けたから、叱っただけですよ? そんなおおごとにはしませんよ」


 私の言葉に、リョウ・アーシさんは頷き、隣のフレイちゃんに説明する。


「だ、そうだ。だから言ったろ? たんにそれが王子の所のやり方なだけだって」

「でも……」

「なんだったら、明日王子にでも聞いてみろ。行かせるんだろ? 今日みたいに」

「ええ。……私が行ってもちょっと身の置き場がないですし」

「これで十分だろ。あとは明日以降にしとけ。今話しても迷惑をかけるだけだ」


 そうリョウ・アーシさんはフレイちゃんに声をかける。

 フレイちゃんは最後にもう一回私にあやまり、部屋を後にする。



「すまねえな。ウチの事情に引っ張り出しちまって」

「……えっと?」

「フレイはな。親にぶたれたことなんざねえんだ」


 ……言ってる意味が良く分からないよ?


「……そっか。メディーナ殿には通じねえか。まあ、そうだな。罰を与えねえって意味じゃねえんだ。叱りつけもする。だけどな、手を出すことだけはしない、そんな育てられ方で育ったんだ」


 ……できるの? そんなこと。ちょっと想像つかないよ。


「まあ、フレイは実際よく育ったと思う。そう考えると間違いじゃねえんだろ。だけどな、そんな育ち方をしちまった子に、メディーナ殿のやり方は相当ショックだったみたいでな。王子たちが帰ってきたのに戻ってこないんで様子を見に言ったら、研究室で一人泣いてたって、そんな訳だ」


 ……えっと、えっと、ええぇー!

 私、フレイちゃんを泣かせちゃったのーー!


「フレイの研究はな、王子がくるまで停滞してたんだ。それが、王子の言葉で突破口がみつかってな。ちっと暴走しちまったんだろ。まあ、研究所(ウチ)じゃよくあることだ」

「……よくある、のですか?」

「ああ。一晩徹夜くらいなら日常茶飯事だ。もっとも、フレイはついこないだ成人した(15才になった)ばかりだ。そんなことはさせないようにしてたんだがな」


 そう言って、リョウ・アーシさんは苦笑いする。


「まあ、俺も技術者(同類)だったってことだな。普通ってやつをひさびさに認識させられたよ」



 フレイちゃんが落ち着いたら、もう一度謝罪すると思うから、その時はよろしく頼むと頭を下げられる。頭を下げられることじゃないと慌てて止めてもらう。そうして、席を立って自室に戻る。

 寝室で一人、さっきの会話を思い起こす。


 バード君を叱ったら、隣の子が泣き出しちゃったって……

 どうすればいいのよ、もう。


 浮き上がる弱気を振り払う。大丈夫。バード君だってちゃんと育ってる。夢中になれるものができて、仲のいい子ができた。フレイちゃんも悪い子じゃない。むしろいい傾向だと思う。だから大丈夫。きっと大丈夫。



 次の日の昼食の後、帰り間際にフレイちゃんに呼び止められる。研究所の休憩所で改めて謝罪される。別にあのくらいなら、昔は日常茶飯事だったと伝えると、バード君も同じことを言ったみたい。

 その上で、私が迎えに来たら必ず終わるようにすると言ってくれる。


 ……うん。微妙に違うね。


 ちょっと訂正させてもらう。ちゃんとご飯を食べること。遅くなる場合はそう伝えること。寝る時間には帰ってくること。帰ってくるときはイーロゥさんと一緒に帰ってくることを約束してもらう。

 大体、フレイちゃんも女の子なんだから、一人で夜道を歩くのはダメだと思うんだけど。叩いたことがないとか言ってたし、この子の親、どうなってるんだろう、ふとそんなことを思う。


 ……後日、夜間に帰るときは馬車を使ってるって話をきいて心底びっくりしたよ。なに、そのお姫様待遇。バード君よりよっぽど王族待遇だよ。

 そっか。そう考えると叩かれたことがないのも不思議じゃないか。フレイちゃんはちょっと変わったクールなお姫様。ちょっと王族らしくない普通なバード君とはいいコンビよね。そんなことをふと思ったよ。


 この数日間、色々あったけど、悪い事じゃない。王城から出て、囲われることが無くなった。変化があるのが当たり前。まだまだ窮屈だけど、それでも世界は広がった。


 クローゼ様、見てますか? 今のバード君、すごく楽しそうですよ。きっとこれからもそうですよ。お墓まいりには行けないけど、見守っていてくださいね。


 イーロゥさんとバード君がいない部屋で。心の中でクローゼ様に語りかける。


 さあ、今日も一日、頑張って仕事しますか!


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