『公爵令嬢の華麗なる宮廷事情!?(短編版)』 -SW2.0 Replay Fleurir-
TRPG『ソードワールド2.0』のちょっぴり変わったリプレイ(短編版)です。
なお、このリプレイはPCデータ作成後に行った「お試しセッション」を文章化したものです。タイトル詐欺(宮廷が舞台じゃない)になっていることをご容赦ください。
イラスト素材:とくだ屋様、ユメウサギ様、誰そ彼亭様他
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(まるで、なにかの御伽話に迷い込んでしまったかのよう……。
だって、明りを目指して歩いていたら、目の前に現れたのは――)
公爵令嬢であるフェリーシア・グレナディエは、ごくありふれた宮廷生活からあまりにもかけ離れた存在であるソレを受け入れらず、幼い頃に読んだ絵本や童話を思い出すことで現実逃避をしていた。
その際に、淑女としてははしたないが、半開きの口から「おぉー」と感嘆がこぼれ落ちたりもしたが、それも致し方ないことだろう。
もっとも、フェリーシアは見た目だけならば宮廷屈指の儚げな美少女である。
そんな少しばかりの粗相もまた、“愛らしい”と感じさせるのは、きっと“女子力”とか“萌え力”とかが53万ほどあるに違いない。
周囲は、薄暗い洞窟。
そんな場所に、なぜかいる公爵令嬢の元へ――
「大丈夫か、お嬢ッ!?」(←イケメンその1)
「ボクが、リーシャちゃんを守る!」(←イケメンその2)
「フェリーシアさん、後ろに下がってください!」(←イケメンその3)
「チッ、手間かけさせるんじゃねぇ」(←イケメンその4)
まるで、お姫様を守る騎士たちの如く、颯爽と駆けつける4人の男性たち。即座に形成されたパーティは非常に華やかなものとなり、さらに御伽話チックとなった。
「あ、みんなも来てくれたんですねっ」
と嬉しそうに微笑むも、公爵令嬢の脳内では物語的クライマックスが大盛り上がりだ。
……ちょっと残念な美少女なのかもしれない。
そんなフェリーシアのがっかり目線は、さておき。
公爵令嬢たちに迫る危機について、説明しよう――
目の前のソレは、あまりにも強大な力を有していた。
体躯は10mを超えており、その全身は強靭な紅蓮のうろこに覆われている。並みの冒険者ではそのうろこに傷一つつけることは叶わない圧倒的なまでの強者。
その膂力から繰り出される鉤爪は城壁を引き裂き、口から吐き出す炎は鉄をも溶かす。赤い翼をはためかせ空を舞えば高速で移動し、その叡智からは高位の魔法を唱えることもできた。
ソレは、この世界における最高位である“神”に次ぐ存在、最も完成されているとも言われる生物――“竜”と呼ばれていた。
目の前の赤きドラゴンは成竜となったばかりとは言え、周辺でも生態系の頂点に君臨していると言っても過言ではない。
小さな都市程度であれば滅ぼすことも容易い力を持っているのだ。
そんな災害とも言える存在に人が抗うには、犠牲を出してでも軍隊で押し通すか。それとも、人の条理を覆した一握りの存在――英雄と呼ばれるような実力者たちだけであった。
そして、“竜殺し”とは子供のみならず大人も憧れる英雄譚、御伽話になるのだ。
ゆえに、このドラゴンに立ち向かう華やかな5人の男女は、ただの愚者か、それとも英雄と呼ばれる者たちなのか。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
魔力を帯びたドラゴンの咆哮により、洞窟全体がびりびりと揺れる。
そして、嵐の危険を察知して逃げる小動物のように、巨大な魔物までもがこの洞窟から慌てて逃げ出すのであった。
GM というわけで、いきなりだけど戦闘開始。『ソードワールド2.0』のチュートリアルだと思って軽くやってね(にっこり)。
一同 それで、ドラゴンなの!!?(笑)
*今回の『ソードワールド2.0』は、GMもプレイヤーも久しぶりにやる(中には、基本ルールブック以来の人もいる)にも関わらず、高レベルセッションという考えなしのセッションです。そんな不慣れな面子ですが、生温かい目で見守ってください。
GM まずは、魔物知識判定から。
クロノス・グライユール(以下、クロノス) (ころころ)僕の27が最高値のようですね。
一同 おお!!(感嘆)
GM それなら、弱点値も余裕で超えたね。敵はレベル16、〈ノーブルドラゴン〉だ。
「相手が若い竜だと甘く見ないでください! レッサードラゴンの中でも、優れた血統の持ち主です!!」
ドラゴンに相対するのが英雄とも言える者たちであるというのであれば、目の前の竜もまた、ただの竜ではなかった。
後、数百年も生きられれば、『偉大なる竜』と呼ばれる真の絶対者にもなりえる竜の中でもエリート。
しかし、それを一目で見抜いた男性は、どう見ても戦場で武器を振り回すより、部屋に籠って本を読んでいるのが似合うような文学青年であった。
眼鏡をかけた柔和な顔立ちに、冒険に向かない高級そうな白いローブをまとっていては仕方がないかもしれない。
事実、このクロノス・グライユールという青年は、争いは好きではなかったし、それよりも自宅で魔道書を読んだり、子供たちに魔法学を教える方が幸せだと思っているような人族だ。
しかし、最高級のローブに描かれた蒼と銀の模様は、王国に仕え、実力が認められた宮廷魔術師のみが身に付けられる証。しかも、平民生まれでありながらも伯爵位を前国王より賜った『クロノス・グライユール』の名は、この王国の魔術師、操霊術師であれば知らぬ者はいない。
そんな知識と魔術を使いこなすクロノスは、貴族社会において尊敬と同時に畏怖も込められた視線を向けられていることもが多かった。
◆ クロノス・グライユール ◆
爵位:伯爵位
種族:ナイトメア
性別:男
年齢:114才(外見:24才)
戦闘技能:ソーサラーL11、コンジャラーL11、セージL9
一般技能:教師L12、貴族L6
「本来であれば、ノーブルドラゴンは冷静で公明正大な性格なはず。それが、僕らを見るなり襲ってくるのは、なにかおかしいです……」
この小さな呟きは、竜翼の羽ばたきによる暴風により、他の仲間たちに届くことはなかった。
GM ちなみに、追加ルール『トレジャードロップ』でHPも多少増えているけど、誤差の範囲だと思ってるよ(←PCの実力がよく分かっていないGM)。
一同 ……(なんとも言えない表情)。
GM さて、次は先制判定をどうぞ。
ヨハン (クールに)……23だ。
天井のところどころが壊れ、隙間から僅かな太陽光が差し込んでいるこの場所はあまりにも広く、10mを超えた巨体が宙を舞っても、なお猶予のある空間であった。
ここは天然の洞窟ではなく、周囲にある崩れかけた壁や柱に魔法時代文明の文様が散見されることから、当時はなにかの巨大な施設の一部であったことが推察される。
そして、飛翔を始めたドラゴンの後ろ脚が地面から少し離れた瞬間、今にも崩れそうな柱が暴風の発生源に逆らうようにドラゴンの方へ崩れ落ちる。
ドラゴンは一瞬だがそちらに気を取られる。しかし、そのわずかな隙は実力がある者にとってみれば大きなアドバンテージとなるのだ。
その柱を意図的に崩したのが、ヨハンというエルフの男であった。
◆ ヨハン ◆
爵位:なし
種族:エルフ
性別:男
年齢:?才(外見:30才)
技能:シューターL13、マギテックL11、スカウトL10、アルケミストL6、エンハンサーL3
一般技能:従者L6、楽器演奏L5
漆黒に一滴の紫を染み混ませたような色の髪と瞳。
尖った長い耳や、細いが長身の体型にフィットした黒い執事服からその種族はエルフだと分かる。
派手さはない黒い執事服でも、見る者が見れば上等な布地からあしらえたことが分かる丁寧な作りをしていた。それは、やんごとなき御方に仕える者、それもバトラーと呼ばれるような従者の中でも管理職に属する者しか着用が許されない服装だ。
しかし、鋭い双眸を隠すようなサングラスが、ヨハンをただの従者ではないこと表していた。
手には、複雑な模様の描かれた二丁の拳銃。
そして、身のこなしや雰囲気に闇色をわずかながら匂わせていた。
そう、ヨハンは竜の咆哮や暴風によって起こされた遺跡の倒壊に紛れこみ、崩れる柱の向きを銃弾で変えることで絶対的優位に立てる時間を作りだしたのだ。
GM では、先制は君たちです。
ヨハン (不敵な笑みをわずかに浮かべ)フン、トカゲごときに遅れは取らない。
GM ど、ドラゴンがトカゲ扱い……。君たちは、どれだけ強いというんだ!?
クロノス いやいや、ヨハン君の台詞はただのロープレですよ(笑)。僕はレベル11しかないので、レベル16相手はかなり厳しいのですが(苦笑)。
*PCたちの冒険者レベルは11~13。データ作成時に経験点や所持金、成長回数を減らすことで、爵位や一般技能を入手できるという特殊なハウスルールで作成されております。
皆の信頼あふれるGMは、事前に「今回のセッションは、戦闘メインじゃないから好きに作っていいよ♪」と笑顔でプレイヤーたちに伝えています。……その割には、ガチなデータを持ったPCが多い気がするのは、解せぬ……。
フェリーシア・グレナディエ(以下、フェリーシア) (透き通るような声で)さ、さすがヨハンさんです。わたしもこのチャンスを有効に使って、みんなを魔法で支援します!
この場にいるのは、5人の男女。
しかし、彼らは英雄豪傑という言葉は似合わず、儀礼の場などで映える目の覚めるような美人ばかりであった。
この赤竜との対決も――当人たちの気持ちを除けば――劇場で演じられる1シーンにも見えるほど、彼らは華美な恰好や立ち居振る舞いをしていた。
争いや金銭のしがらみから逃れることの難しい冒険者たちとは、異なる生活基盤を持つ者たち。
中でも、4人の男性に守られながらも、気丈に立ち続ける儚げな少女は、社交界でも病弱ゆえにあまり顔を出さない深窓の令嬢として認知されており、竜との戦いに赴くような性格でもなかった。
むしろ、ドラゴンにさらわれるお姫様にしか見えない。
きめ細かい色白の真珠肌に、手入れの行き届いた銀糸の髪、ルビーでも最高級のピジョンブラッドを彷彿させる紅の瞳。
そして、すらっとした鼻梁に、ぷっくりとした桜色の唇。
14才という女性としての魅力が出始めた顔立ちには、美しさと愛らしさが絶妙に同居している。
そんな彼女が身につけているのは、極上のセイレーンドレス。
最上質の絹とセイレーンの羽根を素材から仕立てられたドレスは、ほんのりと光り輝いており、暗い洞窟内をほんのわずかながら照らしていた。そのドレスは羽根のような軽さで動きやすくはあれど、それは貴族の嗜みである舞踏の為であり、決して武闘の為ではない。防御という面でもドラゴンの鉤爪どころか最弱であるコボルトの肉球パンチですら防ぐことができない最高級品のドレスでしかなかった。
身体付きもエルフ以上に細く、表立って言う者はいないが、この王国の双子姫よりも麗しい顔立ちは、人間のそれを軽く凌駕していた。
それもそのはず、彼女は人族の中でも、劣る身体能力の代わりに優れた魔力、知性、美貌を持つ異端の種族。先祖返りのハイマンであった。
◆ フェリーシア・グレナディエ(通称:リーシャ) ◆
二つ名:“白銀に輝く歌声”
爵位:公爵位の継承権者
種族:ハイマン
性別:女
年齢:14才
戦闘技能:フェアリーテイマーL12、セージL8、ウォーリーダーL8
一般技能:歌手L14、貴族L8
彼女は、
人に愛され。
妖精に愛され。
音楽に愛され。
運命にも愛されている。
だから、この物語もフェリーシアという少女を中心に進んでいく。
決して、そんな少女が一級建築家のようにフラグを構築し、この王国に逆ハーレムを築く物語ではない、…………はずである。
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GM では、ヨハンが先制をとったところで戦闘開始と行こう。
相手は王者の風格を備えつつある竜、ノーブルドラゴンだ。ちなみに、クロノス先生のおかげで、弱点値も抜いている。
クロノス それなら、まずは僕たちからの行動ですが……皆さん、どうしましょうか?
一同 むぅ(←各自、キャラシートを眺める)。
ヨハン ……それなりの敵なら、まずは味方のサポート受けてから攻撃するのが基本だな。
フィーグ・ド・プルヌー(以下、フィーグ) となると、リーシャちゃんかクロノス先生かな?
フェリーシア (手を挙げて)はい、はいっ! わたしがみんなをサポートをします!
GM あ、うん。行動宣言は、手を挙げる必要はないよ?(笑)
フェリーシア まずは『鼓咆』の【強靭なる丈陣Ⅰ:抗心】でみんなのことを応援します!
GM おお、ヒロインっぽい! 効果は精神抵抗が上がるから、ドラゴンの魔法には有効だね。
フィーグ (データを確認しながら)でも、Ⅰランクだと、生命抵抗も下がるんだよね。生命抵抗が必要なドラゴンのブレスもあるし、このラウンドの『鼓咆』はスルーかなぁ。
フェリーシア で、ですよねぇ……(しょぼーん)。
GM おおっと、ヒロイン最初の応援を全員スルーかぁ!?(一同笑)
フェリーシア (儚げに微笑んで)いいんです……、いいんですよ? 次のラウンドからでも、いいんですよ(ちらっ、ちらっ)。
一同 悪女か、お前は!?(笑)
*フェリーシア、恐ろしい子……!
ヴェルミオン・プリムヴェール(以下、ヴェルミオン) (苦笑いを浮かべて)しゃーねぇなぁ。お嬢の最初の応援だし、受け入れるか。
クロノス (少し諦観した顔で)まあ、先生としても仕方ないですかねぇ。
ヨハン …………(←キャラとして迷っている模様)。
フェリーシア み、みんな……。
フィーグ ボクはデータ的に不利になるのは……ちょっ、え、なに? このボクが悪いみたいな空気!?(笑)
GM (ゲーマーとしては、フィーグが正しいなぁ(笑))まあ、正直なところチュートリアルの戦闘で苦戦はしないだろうけど。
ここは、フェリーシアの応援を受けて、なんとなく精神抵抗が上がった! 気がした演出でいいよ(笑)。
一同 異議なし!(笑)
*「スルー」という言葉が良くないのです。
GM それで、フェリーシアの主行動はどうする?
フェリーシア 【ヴァーチャルタフネスⅡ】でみんなのHPを増加させます。「光の妖精さん、お願い……」(ころころ)成功です!
クロノス 次は、僕の魔法を使う番ですね。
せっかくなので、味方の行動を増やし、敵の行動を停止させる深智魔法【バランス・タイム】を使います。(ころころ)やりましたっ、クリティカルです!!
一同 おおおお!!!(喝采)
クロノス (厳かな口調で朗々と)『深 、 第十一階位の 変双変 。 生命 、 減衰 …』
紡がれる高難易度の深智の魔術詠唱。
時を操る魔法の中でも、常人では到達しえない第十一階位魔法をここまで扱えるのは、王国広しと言えども、宮廷魔術師クロノス・グライユールしかいない。
それもそのはず、グライユール伯爵家には時間を操る……。
GM (ころころ)あ、ごめん。クリティカルで抵抗しちゃった……(笑)。
クロノス (驚愕の顔で)あれ? あれぇ!?
一同 クロノスせんせー!!?(爆笑)
クロノス かっこよく詠唱までして、恥ずかしい!?(一同爆笑) (どこか遠い目で)えっと……僕の行動は一人踊って、MPが減っただけでした(一同笑)。
GM ど、どれだけ減ったの?
クロノス ノーブルドラゴンの全部位にかけたので、僕のMPの半分ぐらいです(笑)。
ヴェルミオン ま、まあ……クロノス、気にすんなよ(←フォローのつもり)
ヨハン ――なんだ、クロノス。久しぶりの戦闘で緊張でもしているのか?(←フォローのつもり)
フィーグ す、すごい! クロノス先生の深智魔法が解き放……れないっ?(←フォローのつもり?)
GM みんな、ヒドスwww
クロノス (ひきつった顔で)まあ、僕は頭でっかちなキャラですからね! いいんですよ、これで!(笑)
というか、素直に味方だけに【ヘイスト】をしておけばよかったです……(さめざめ)。
GM クロノス先生の行動を聞いて、なんでレベル5も差がある敵に【バランス・タイム】を使うんだろうって思ってた(笑)。
クロノス 深智魔法が使えることに、舞い上がってしまいました(笑)。
*尚、クロノス先生のプレイヤーは、『ソードワールド2.0』の魔法使いキャラは今回が初めてでした。
ただ、忘れてはいけない。クロノス先生はクリティカルを出したのだ。失敗はしていない。相手が悪かっただけ。しかし、世の中には『過程』よりも『結果』が重視されるという悲しい現実がある。
GM 先生、最初から飛ばしてくれるなぁ(笑)。えっと、これで行動終わり?
クロノス いえ、まだです!(くわっ) 「(メガネをくいっと上げ)研究中の術式に少し問題があったようです。ですが、次はそうはいきません……」
フェリーシア く、クロノス先生?(←まだ、続けるの!? という顔)
クロノス 「(びしっとポーズを決めて)今度は僕の時間に、ついてこれるかな?」
一同 ――!?(世界が停止した)
*……そして、時は動き出す。
一同 (わなわなと震えながら)あ、あんた、どこに行くの!!?(爆笑)
フェリーシア (身体を震わせながら、床につっぷして)ぷ、く、せんせ、せんせぃ……く、くふ。ま、魔法の失敗は、なかったことに……(爆笑)。
*悲しい現実は、『クロノス先生の大失敗』という印象を与えてしまった(笑)。
GM (そういえば、クロノス先生の二つ名候補に“時の支配者”とかあったような……今のキャラシートには書いてないみたいだけど(笑))
(死屍累々のプレイヤーたちを眺めながら)気を取り直して、次の人の行動をお願いします(笑)。
フィーグ なら、ボクが行くよ。フフ……。
GM え、なにその笑み。怖い……。
フィーグ まずは、〈レッサードラゴン〉に騎乗。【チャージ】【縦横無尽】【獅子奮迅】【バランス】しつつ、ノーブルドラゴンに接敵。
『練技』で【キャッツアイ】【ガゼルフット】【マッスベアー】【スフィンクスノリッジ】、《魔力撃》を宣言。
そこで、【デモンズブレード】、《魔神の一時解放》。
一同 え、えっ???
――ドラゴン。
人を超えた存在であり、もっとも完成された生物とも言われている幻獣の一種。
今回のように人を襲い牙をむくこともあるが、逆に人と共に歩む竜もいる。
そんな隣人とも言える竜で有名なのが、騎乗の最高峰“竜騎士”と騎獣の関係であろう。
友である飛竜に乗り、空を駆けるその様は、王国騎士以上に憧れる少年の夢のような存在だ。
そして、その実力はたった一騎によって、戦場がひっくり返ることさえある。
そんな“竜騎士”は、竜の絶対数の少なさ。そして、誇り高いドラゴンの背に乗ることを許されることが、どれほどの希少であり、誉れであるかは説明不要であろう。
“レーベル”と名付けられた蒼き竜は、フィーグ・ド・プルヌーの友であり騎獣である。
成竜したての為、やや荒削りな部分もあるが、それでも戦士としても魔術師としても一流の竜。そして、そんな竜に跨るフィーグは、この王国で“竜騎士”として名を馳せている……わけではなかった。
フィーグの外見はハニーブランドの髪に、女性とも見間違えるほど線の細い整った顔立ち。
14才という成長期でもあまり伸びない身長や、気弱な印象を与える顔だちや仕草から、ある女性からは母性本能をくすぐられる容姿、ある女性からは頼りない容姿と称される。
幼い頃、宮廷の庭園でフェリーシアと一緒に無邪気に花遊びをしていた二人は、女の子たちが遊んでいるようにしか見えなかった。
そんなある意味で目立つ風貌と、プルヌー男爵家の子息であり竜騎士ともなれば、王国中にその名をとどろかせていてもおかしくはない。
少なくとも、プルヌー男爵家が次期当主であるフィーグを喧伝しない方がおかしいのだ。
しかし、由緒あるプルヌー男爵家は喧伝をしない。
その為、プルヌー男爵家の子息――フィーグ・ド・プルヌーの認知度は低い。
正確には、フィーグを誇ってくれる両親はいないし、彼自身も誇っていないからだ。
それは、8年前に起きた“プルヌー男爵家の悲劇”と言えば、有名であろう。
この王国の闇の一端でもある、とある魔神事件の事…………。
ともかく、フィーグという少年はその事件によって、心に大きな傷を負い。
プルヌー男爵家の唯一の生き残りとなった。
そして、幼馴染であるフェリーシアとフィーグが再会したのは、かの事件から何年も経過した後のこと。
その間、フィーグは人に話すことを憚れるような生活を送ってきて、もう昔の頃――庭園でフェリーシアと無邪気な遊びをしていた頃――のようには、笑えなくなっていた。
……一年。
「たった一年」と見るべきか、「一年も」と見るべきか。
ともかく、幼馴染であるフェリーシアと再会してから、一年が経った後。
彼女と一緒に笑い合っているフィーグの姿がグレナディエ公爵家で見られるようになった――
◆ フィーグ・ド・プルヌー ◆
二つ名:“魔神の子”
爵位:男爵位の継承権者
種族:人間
性別:男
年齢:14才
戦闘技能:デーモンルーラーL13、ライダーL13、エンハンサーL5
一般技能:貴族L5、■■■■L5
フィーグ リーシャちゃんを傷つけようとする奴に、ボクは容赦はしないよ?(どこか歪んだ笑み)
『V%<&@;●M#K”……出でよ、魔神ドレッドバール』
GM えっと、〈ドレッドバール〉は巨大なワニの魔神だったよね? それに、騎獣の〈レッサードラゴン〉か。
フィーグ うん。これで〈ドレッドバール〉の3部位、〈レッサードラゴン〉の4部位があって、ボク自身を含めると計8部位ある。
一同 一人軍隊!?
フィーグ ――ボクの全力、見せてあげるよ!
*ここから、フィーグの「ずっと俺のターン」並に怒涛の攻撃がくる。【チャージ】【縦横無尽】から行われる【デモンズブレード】の二回攻撃から始まり、騎獣、魔神たちの計7回波状攻撃!!!
GM/ノーブルドラゴン (永遠とも思える連続攻撃を喰らって)「GYAAAAAAAAAAA!!!」とドラゴンが悲鳴を上げて、片方の翼部位が落ちる。
《攻撃障害》がなければコア部位も、危なかった……。尻尾による範囲攻撃が2回、ブレスの範囲攻撃も2回……。
一同 …………(呆然)。
フィーグ (禍々しい両手剣を振り回しながら、笑顔で)やったよ! リーシャちゃん!!!
フェリーシア ……す、凄過ぎてよく分からなかったのですけど。でも……その力は、そんな風に使って欲しくは、ない……です(ぽつりと)。
ヴェルミオン (表情を歪めて)あいつ……。
GM まあ、分かっているとは思うけど、邪悪な魔法使いとされる“召異術師”の力は、人目があるところでは使えないものが多い。ましてや、王国の宮廷で魔神召喚を行うのはもっての他だ。
さらに、ドラゴンもまた宮廷という空間で使える場面はそうはない。だから……。
フィーグ (GMの言わんとすることに)ボクも分かっているよ、それがまずいことだって。でも……。
フェリーシア フィーグくん……。
GM フィーグの背景は、かなり重たいよね。
フィーグ (真剣な顔で)……でも、ドラゴンの騎乗ぐらい許してよ!? それがないと、ボク、すっごく弱くなるんだよ!(笑)
一同 えええええええぇ!!?(爆笑)
*シリアスな空気がなくなった瞬間であった。
GM あ、うん。フィーグはゲーマーだなぁ(笑)。宮廷だと庭園ぐらいしかドラゴンが入れそうなところを思いつかないけど、そんなところでドラゴンのブレスとか吐いたら……。
ヴェルミオン しこたま怒られるだろうよ(笑)。
フィーグ だって、騎乗できないボクはただの非力な美少年になっちゃうよ!(笑)
一同 自分で、「美少年」言うなぁぁぁ!!?(笑)
*完全にシリアスな空気がなくなった瞬間であった。
GM 言い直す。フィーグのデータ処理は、かなり重たいよね(笑)。
一同 うん!(笑顔で同意)
*というか、最初からそんな空気はなかったのを悟った瞬間であった(笑)。
GM もう何度目か分からないけど(笑)、気を取り直して次の人の行動お願いします。
ヴェルミオン うっし、やっと俺の行動だ。やれやれ、長かったぜ(苦笑)。
フィーグ あははっ(←やりきった、いい笑顔)。
ヴェルミオン その笑顔が少し気になるが(笑)、翼の部位が落ちているのは助かる。
ヨハン (クールに同意して)……だな。オレの銃も、《飛翔》がない方がやりやすい。
ヴェルミオン ドラゴンに通常移動で近づきつつ、【クリティカルレイ】【キャッツアイ】【ビートルスキン】【ガゼルフット】【マッスルベアー】《魔力撃》で胴体に攻撃!
(ころころ)クリティカル命中! 49点の物理ダメージでぶった切るぜっ!!
ドンッ!!!
爆撃のような重音と共に、ドラゴンの厚い紅鱗が砕け散る。
ヴェルミオン・プリムヴェールの真正面からの両手剣の斬り降ろし。
それは、優秀な王国騎士を輩出し続けたプリムヴェール家の剣術であり、ヴェルミオンの幼少からの地道な鍛錬の積み重ねによって繰り出された、一振り。
同じ能力、技量でも、人はその背負うものによって籠められる重みが違う。
訓練時や平時には、大きな差はない。
しかし、ここ一番。特に生死が問われるような場面では、明白にその差が出てくる。
そして、王国の騎士位を持つ『サー・ヴェルミオン』の一撃は重い。
その騎士の背にあるのは、王国騎士としての誇り、プリムヴェール家の誇り、守るべきグレナディエ公爵家でもあり、フェリーシアという少女やその仲間たちがあった。
ゆえに、その斬撃は成竜の厚鱗をも打ち砕ける。
――王国貴族の爵位には、序列がある。
爵位は下から、フィーグのプルヌー家のような男爵位から始まり、子爵位、クロノスのグライユール家の伯爵位、侯爵位。
王家の血筋も流れ、王位継承権もある、フェリーシアのグレナディエ家の公爵位。
そして、王国頂点となる王位となっている。
もちろん、同じ爵位でも格式、財力、人脈などでさらに細かい序列はあるが、そんな貴族社会での序列とはまったく異なるのが“騎士位”となる。
領地を持たず、一代限りとされる“騎士位”は国王からの叙勲によってのみに与えられる。
王国に大きく寄与した有力な冒険者が騎士位を叙勲されるという話があるように、実力を認められば平民でも得られる地位としては、もっとも分かりやすいものだ。
しかし、貴族社会においての“騎士位”とは世襲制が基本である他の爵位とは異なり、本人の実力のみを持って為し得る“名誉ある地位”となる。
特に、貴族でありながら騎士であるというのは、貴族社会において一種のステータスになるのだ。
爵位を継ぐことができない貴族の次男や三男のみならず、跡継ぎである嫡男にも箔付けの為、“騎士位”を持たせるべく教育を施すことは珍しくない。
もっとも、それゆえに自分の子供が“騎士位”を得るために、裏工作を行う貴族も少なくない。
そんな中で、『プリムヴェール家』というのは騎士一族として有名であるが、決して貴族ではない。
数代前のプリムヴェール家は戦の功績によって叙爵の話があったが、当時の当主は辞退したのだ。国王の申し出を辞退をする――それは、プリムヴェール家が二度と王国貴族になれないほど重い意味を持っていた。
しかし、かの一族は実力のみで“騎士”となり続けることを国王に誓ったという英雄的な一族として知られている。
そんなプリムヴェール家の嫡男である『サー・ヴェルミオン』……赤銅色の髪に、活発な少年の面影が残る顔立ちをしているが、その身体にはいくつもの傷跡があった。
しかし、それこそが若くして“騎士位”を叙勲したヴェルミオンの誇りであり実力の証でもあった。
若さゆえか物事に熱くなりやすく、口や態度も上品とは言えないところは宮仕えする王国騎士としては完璧とは言い難い。だが、少女を守るべく巨大な竜に真っ向から立ち会い、剣を振るうその様を見れば、誰もが彼のことを“騎士”と呼ぶだろう。
◆ ヴェルミオン・プリムヴェール ◆
爵位:騎士位
種族:人間
性別:男
年齢:18才
戦闘技能:ファイターL13、プリースト(ザイア)L10、レンジャーL7、アルケミストL5、エンハンサーL5、ライダーL1
一般技能:騎士L6、絵画(油絵)L5
GM うーん、ヴェルミオンはまさに正道だな。
フィーグ ボクとは大違いだね(笑)。
GM 高レベルの戦士技能、ザイアの神官技能に、それらを補うサブ技能。宮廷内でも遺憾なく実力が発揮できるという点では、フィーグとは大違いかもね。
ヴェルミオン そういうコンセプトでデータを作ったからな。もっとも、一回の火力はかなり落ちるが。
それと、俺とお嬢とは幼い頃から一緒にいたから、幼馴染みたいなもんか?
フェリーシア はいっ! 昔から一緒にいてくれた「お兄さんっ」て感じなのです。
ヴェルミオン まぁ、お嬢は……目を離せない奴だしな。なんかふらふらしてて、危なっかしいつうか(苦笑)。
フェリーシア わたし、そんなにドジじゃないですよっ!?
*「ハイマン=身体能力が低い=ドジっこ」という生物学的根拠に基づく理論(笑)。
GM さて、そんなヴェルミオンの攻撃を喰らったが、まだノーブルドラゴンのコア部位は健在だ。……それ以外はもうボロボロだけど(笑)。
ヨハン 生命力だけはあるトカゲか。もっとも……オレの銃なら、直に急所を狙えるがな――(二丁拳銃を構えて)《ファストアクション》。【ガゼルフット】【キャッツアイ】【メディケーション】【レーザー・バレット】【ホーミングレーザー】……【リピートアクション】。
ヨハンの流麗な動きは、優秀な従者が主人に紅茶を注ぐように。銀の食器を用意するかのように自然で無駄がなく、美しくもあった。
もっとも、その従者の手には、主人に敵対するものへの御礼――小型の拳銃が納められていたが。
激鉄を起こす手先がブレたかのように見えるほどの早撃ちをすると、両拳銃からは弧を描くような軌道の光弾が複数放たれる。
その僅かな時間差で魔動機術の媒体〈マギスフィア〉が光り輝き、ヨハンの虚像を作り上げ、先の優雅とも思える射撃を模倣する。
そうして放たれた五条の光は、薄暗い遺跡にキラキラと輝く美麗なアートを描きながら、竜の方へと吸い込まれていく。
そして、花火にも似た美しい閃光に誰しもが見惚れた瞬間、それらは強者であるドラゴンに致命的なダメージを与えた――
ヨハン (ころころ)頭部に全弾命中。ダメージが27点、26点、22点、22点、35点。
GM/ノーブルドラゴン 「ANGYAAAAAAAAAA!!!!」と叫んで、ちょうど五発目の弾丸でコア部位のHPがゼロ以下になる。そして、ズズーンっという大きな音を立てて、全長10メートル以上のノーブルドラゴンは倒れていく。
ヨハン (わずかに冷笑を浮かべ)やはり、大したことはない。
そこで、限界の超えた〈マギスフィア〉がパキンッという乾いた音を立てながら割れ、地面に落ちる。
そんな砕けた破片を感慨もなく眺めながら、ヨハンは慣れた手つきで懐から煙草を取りだす。
ヨハン (紫煙をくゆらせ)……オレからすれば、所詮はトカゲだ。
一同 うおおお、カッコいー!!!(大喝采)
GM …………でも。
すぐそばに、レッサートカゲに騎乗している男爵子息もいますよ?(笑)
フィーグ ほっといてよっ!(一同笑)
フェリーシア・グレナディエを中心とした物語は、ドラゴンを倒すことが目的でもなければ、ドラゴンの財宝目当てでもない。
そして、宮廷生活を送っていた、か弱くも麗しい公爵令嬢(見た目だけ?)がなぜこんな遺跡にいたのか?
そんなことを説明する為にも、少しだけ別の時間軸に目を向ける必要がある。
公爵令嬢でハイマンの、『フェリーシア・グレナディエ』。
騎士、『ヴェルミオン・プリムヴェール』。
男爵子息、『フィーグ・ド・プルヌー』。
宮廷魔術師でナイトメアの、『クロノス・グライユール』。
従者でエルフの、『ヨハン』。
そんな優雅で――覚えづらい字面の名前を持った五人。
剣と魔法の世界『ラクシア』にある『フェンディル王国』の宮廷を舞台の中心とした、華麗なる物語の開幕です!
プロローグ――FIN
……と、こんな感じで、この『SW2.0リプレイ・フルリール』(Fleurir:フランス語で「花が咲く」とかそんな意味)は、GMにまったくない“エレガントさ”など、なんかキラキラしたもの(?)を醸し出して……いたらいいな、と思いながら書かせていただいております。
それに伴い、双子姫がいるフェンディル王国についても、「オリジナル設定 > 公式設定」といった舞台にしているので、そういうのが苦手な方は申し訳ありません。
それと、このリプレイは「前書き」にある通り、PCデータ作成後の余った時間に行った「お試しのPC紹介&模擬戦」から文章を書き起こしました。参加者のノリが想像以上によかったので、急遽リプレイ化したのがコレです。
時間がないので、せめてコレだけでも! と自分の気持ちを盛り上げるために公開した、自己満足リプレイです。
連載版を公開するかどうかは現時点では不明ですが、せめてタイトルにある「宮廷」を舞台にしたセッションぐらいは、なんとかできたら……と構想中です。