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飛行魚捕獲大作戦です。

みんなが料理に満足してくれたことでほっとしたのも束の間、どうやらそれは昼食だったようで、夕食を頼まれた。


でももうまともに食べられるマッシュはないとデデコさんが言ってた。


どうしようか…。


小麦粉だけはあるからうどんでも作ろうかと考えてたら、全身がビリビリ来るほどの鐘の音が鳴り響いた。


「な、な、何事かねー!怖いぃぃぃ…ねー」


デデコさんが震えてる。


キッチンから廊下に出ると、兵士さん達が慌てたようにバタバタと走っていた。


その中の一人に何とか声をかけて事情を聞くと『飛行魚(ひこうぎょ)』と言う大型のモンスターが、群を成して近くの集落へ向かって来ているんだそうだ。


飛行魚自体は大人しく、ただ空を泳ぐだけなのだそうなんだけど、何かの被害が出るらしい。


「飛行魚かねー?山の民が食べてたのを見たことがあるねー」


キッチンからデデコさんが大声で言ってきた。


魚と名がつくんだから、魚類系統のモンスターなんだろう。


だったら食べられるのも頷ける。


「あの、その飛行魚、捕ってきてくれませんか?食べられるみたいだし」


「え!?飛行魚をですか?」


「はい、お願いできますか?」


「由樹殿…飛行魚は10m級の巨大モンスターなんです。攻撃しない限り暴れないとはいえ撃退して追い払うのが精一杯かと思われます。」


「10m?!そんなに大きいんですか?」


「はい…過去に目撃されたものでは20mを越すものもいたとか」


絶句だった。


でもその時声がした。


「食材になるのでしたら、捕獲してきましょう!生死は問わないのですか?」


声の方を見ると、物凄く凛々しい女性がいた。


誰?と思っていたら兵士さんが「アーガイン様」とその人を呼んだ。


「え?アーガインさん?」


「ああ、この姿では初めてお会いしましたね。失礼。これで分かりますか?」


指をパチンと鳴らすと、全身が甲冑で覆われ、声まで男性の声に変わった。


もう何が何だか分からない。


「私はハーツリアンという種族でして、普段は女形、戦闘になると男形に変化出来るんです。」


そう言うとまたパチンと指を鳴らして女性の姿に戻った。


それにしても凛々しくて、それでいて綺麗な人だ。


ラベンダー色の腰まである髪。


真っ白い肌は少しラメが入ってるみたいにキラキラしてる。


ややつり上がり気味な大きくてエメラルドグリーン色の瞳は、見てると吸い込まれそう。


そして何だろう、これ見よがしに大きな胸。


スイカップってこういうこと?って位に大きな胸が、キャミソールみたいな白いシャツにパンパンに、はみ出そうになりながらもどうにか納まってる。


自分の胸が恥ずかしくなるくらいにご立派な物をお持ちで…羨ましいような、そうでもないような…


更にえげつない位にくびれた腰。


私と並んで立って欲しくない…


とにかくすごいスタイル抜群。


ハーツリアンって男にも女にもなれる種族までいる世界なんだ…


もう何でもありな世界なの?


「とにかく飛行魚を捕まえてくればよろしいのですね?」


「…あ、はい…でも、難しいんですよね?無理しなくても大丈夫ですよ」


「由樹殿の料理に使えるのでしたら、何としても捕獲してきましょう。何百匹の群です。気性は大人しいモンスターなので、一匹位捕まえられるでしょう。」


そんな話をしていたら、今度はさっきよりも激しく鐘が鳴って、バリーさんが慌てたように走ってきた。


「アーガイン!飛行魚が向きを変えてこちらに向かって来た!あと5分以内で砦に到着しそうだ!直ちに指揮を!」


「分かった!皆を配置につかせろ!私もすぐ行く!由樹殿は砦から出ないで下さい、危険ですので」


そう言うとアーガインさんは騎士の姿になり、走っていってしまった。


キッチンに戻ると、何故かデデコさんがキラキラした目をしてた。


「飛行魚かね?群が来るのかね?そりゃ祭りだねー!ユッキ、行くんだね!」


「はい?祭り?」


「飛行魚が来るとアッタシらに恵みの雨をもたらすんだねー。飛行魚が来るとアッタシらは増えて大きく育つ、だから祭りが始まるんだねー。」


恵みの雨?


………糞?


もしかして、被害が出るって糞害ってこと?


そうだとしたら絶対行きたくない。


デデコさんがあまりにうるさいから、デデコさんだけを外に出したら、嬉しいのか鼻唄を歌ってるのがずーっと聞こえてくる。





外が急に真っ暗になり、何かが雨みたいに降ってきたのが分かった。


デデコさんが歓喜の声をあげている。


窓から外を見ると、鳥の糞みたいな物が降り注いできてた。


空を見るととてつもなく大きな物がうようよとひしめいてる。


皮膚の感じは象かサイみたい。


ソーセージみたいな体にブーメランみたいな尻尾がついてる。


よく見てると、透明の大きな羽根があって、それがバサバサと動いている。


大砲のような音が何発も聞こえて、その度に窓ガラスが揺れてる。


『キーーーン』


という金属音に近い音が、大砲が鳴る度に聞こえてくる。


飛行魚の鳴き声なのかもしれない。


窓の外は見る間に薄汚い白に染まり、デデコさんは真っ白くなりながら嬉しそうに口を開けてるのが見える。


そんな状態が一時間程続いただろうか。


飛行魚が散り散りになり、周囲が明るくなった。


デデコさんは糞に埋もれてしまって、小さな山があるようにしか見えなくなった。




しばらくしてアーガインさんがやって来た。


「由樹殿!仕留めました!」


余程嬉しいのか、顔が紅潮してて鼻息が荒い。


「そのままでは室内に入りきれないのですが、どうしたら良いですか?」


「出来れば手頃な大きさに切ってもらえたら助かります。」


「分かりました!」


バタバタとその場を去ると、キッチンが一気に静かになった。


デデコさんは相変わらず糞に埋もれてるけど、嬉しそうな鼻唄だけは聞こえてきた。





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