表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

初めての異世界料理、スタート!

「よろしくお願いします。」


デデコさんを、おそらくまな板であろう石台の横に移し、指示を仰ぐ。


「ヒャッヒャッヒャッヒャッ、愉快、愉快!」


得意気に笑うデデコさんに少しカチンと来たけど、悟られてなかった。


「目玉出汁をナッベに入れて、ミッズを入れて火にかけるんだねー。」


言われた通りに目玉出汁を鍋に入れようとしたら、目玉が私を捉えた。


まるで睨み付けてるみたい。


気持ち悪かったけど何とか鍋に入れたものの、水がどこにあるか分からない。


流し台であろう場所には、水を流す為の排水口的な穴と、私の世界なら水道がある位地に象の鼻のような土気色の物がニョッキリと壁から飛び出していた。


触ってみるとプルッとしてる。


何だか触り心地が良い。


クニュクニュと触っていたら先から水っぽいのが出てきた。


本当に水なのか分からなくて匂いを嗅いでいたら、横でデデコさんがまた笑ってた。


「ミッズも知らないんだねー。何にも知らないムッスメだねー。よくそれで生きてこれたねー。」


完全に馬鹿にされてる。


鍋に水をはり、目玉出汁を火にかけたら、鍋の中で目玉が凄い勢いで動き始めた。


益々もって気持ちが悪い。


「さて、マッシュの準備だねー。ほら、そこの『岩石(がんせき)マッシュ』を取るんだねー。」


岩石マッシュ?


沢山のマッシュの中でそれっぽいのを取ってみたら、デデコさんが呆れた顔をしてた。


「岩石マッシュはねー、ほら、そこの右端のマッシュなんだねー。」


教えられたマッシュは、まるで漬け物石みたいだった。


「これですか?」


「そうだねー、それだねー。それを切るんだねー。」


ずっしりと重い岩石マッシュは、触った感じも石っぽい。


それを石台の上に乗せて、デデコさんの指示に従い調理開始。


引っくり返すと裏側の中央に小さなへこみがあって、そこに指を突っ込むとみかんの皮みたいに外側の石みたいな皮が剥けた。


皮が剥けた岩石マッシュはマシュマロみたいな感触で、色はクリーム色。


こうなると何となく美味しそうに見える。


それを半円形の50cm位ある包丁みたいなので一口大に切り分けた。


「次に『トリックマッシュ』だねー。」


トリックマッシュは触ると色が変わるマッシュだった。


触る前は黄色だったのに、触るとピンクと黄緑の斑模様に変化した。


それをグーパンチで思いきり殴ると、不思議なことに一口大の大きさに分裂した。


「さて、そろそろ目玉出汁を取り出すんだねー。」


見ると、水がすっかり沸騰していて鍋の中は黄土色の液体に変化していた。


おたまが無かったから、小さい柄杓の様な物で目玉を取り出した。


すると目玉が青く光っていた。


デデコさん曰く、出汁が出た証拠なのだとか。


青い光が消えたらまた出汁が取れるようになるそうで、それまでは涼しい場所で休ませておかないといけないんだって。


だから流しに別の鍋を置いて、そこに水をはり目玉を入れた。


岩石マッシュとトリックマッシュを出汁汁の中に入れて火にかけた。


「まだ終わりじゃないんだねー。次に『ポッキリマッシュ』を折るんだねー。」


ポッキリマッシュはすぐに分かった。


棒みたいに細長くて、触るとポキンと簡単に折れた。


ポッキリ折れるからきっとポッキリマッシュなんだと思う。


それを手でポキポキと小さく折って鍋に投入。


するとキッチンに香ばしい匂いが立ち込め始めた。


なんでも、ポッキリマッシュは味より匂いを楽しむマッシュなのだそうだ。


「ワッタシは食べたことないけどねー、ヒットンがそう言ってたねー。」


料理して共食いでもしてるんじゃないかと思ったのに、ちょっと残念。


「あとはムッスメが味をつけるんだねー。」


恐る恐る味見をしてみたら、味はすごく薄いけど、深みのあるスープみたいだった。


塩っぽい調味料と胡椒っぽいので味を整えると、自分で作ったのにこう言うのもなんだけどすごく美味しくなった。


「ムッスメ、『ブレッタ』はないのかねー?」


「ブレッタ?何ですか、それ?」


「真ん丸い、ヒットンがマッシュと一緒に食べる食べ物なんだがねー。ムッスメ、それも知らないんだねー。」


「それより、さっきから気になってたんですけど、もしかしてデデコって普通に喋れません?目玉出汁とか岩石マッシュとか普通に言ってましたよね?」


「なっ!何を言うねー、ムッスメ!ワッタシは至って普通に話してるねー!断じて作ったりしてないんだねー!可愛くしたいからってわざとやってるんじゃないんだねー!」


………わざとなんだ。


いやいや、そのしゃべり方、全く可愛くないから!


…とは言わないでおこう。




「で、デデコさん、ブレッタの作り方とか分かりますか?」


「うーん…何か粉使ってたねー。確か…あれは『無限パウダー』だったねー。ほら、そこにあるわんだねー、キラキラした瓶に入ってる粉だねー。」


調味料の中で一番場違いな感じを醸し出していたキラキラの小瓶。


シルバーの瓶にダイアモンドみたいな蓋がついてる。


その蓋を取り中身を出してみると、どこからそんな量が出てくるんだ?って位に粉が出てくる。


匂いを嗅いで味を確認。


これ、小麦粉だ!


絶対そうだ!


薄力粉か強力粉かは不明だけど、間違いなく小麦粉だ。


「それはねー、大昔に、伝説の料理人が置いてった粉らしいんだねー。それを魔法のその瓶で無限に使えるようにして、全世界に行き渡らせたんだねー。」


「それって異世界から来たって事ですか?その料理人の人。」


「異世界?なに言ってるんだねー、このムッスメは。世界は1つしかないんだねー。つくづく馬鹿なんだねー。」


…私がその異世界から来たのですが?


とか言うとデデコさんがまたうるさくなりそうだから黙っておくことにした。


とにかく、私以外にも過去にこの世界に来た人がいる可能性が高い。


と言うことは、帰る方法もあるってことじゃない?


小さな可能性が見えた気がした。




とりあえず私が知ってる方法でパンを作ってみた。


強力粉だったらいいなぁと願いながら。


ベーキングパウダーがないから、小麦粉とぬるま湯と塩と砂糖だけで。


小麦粉と塩と砂糖を混ぜ合わせ、ぬるま湯を少しずつ加えながら捏ねる。


耳たぶくらいの固さるまで捏ねたら、中央を窪ませて濡れた布を掛けて、オーブンみたいな装置の中に入れて生地を寝かす。


デデコさんも知らないこの装置。


見た目はオーブンそのものだけど、温度設定するダイヤルもボタンも何もない。


ただ、中はほのかに温かくて、発酵させるには丁度いい温度っぽい。


この中で上手く発酵してくれたらいいんだけど。


発酵するまでの間、デデコさんの昔話をひたすら聞かされた。


どうやらデデコさんの武勇伝のようだった。


自分がどうやって40年の間人に採取されることなく生き抜いてきたかを、キラキラした目でひたすら話してた。


時計がないので適当な頃合いを見て生地を確認。


すると生地がちゃんと発酵してくれてた。


倍とまではいかないけど、最初の状態よりも大きく膨らんでる。


その空気を軽く押して抜いて、生地を10等分くらいに切り分け丸めたら、濡れた布を掛けて少し休ませる。


10分ぐらい経ったらその生地を成形して、オーブン的な装置の天盤の上に均等に並べて、濡れた布を掛けて二次発酵。


発酵が終わったら、私はパリッとしたパンが好きだから、デデコさんに霧吹きがわりに水をかけてもらい…この後どうしようか?


「パン焼きたいんだけど、どうやって焼けばいいんだろう?」


「ブレッタ確認。適温設定完了。」


呟いた途端、オーブン的装置から綺麗な女の人の声がした。


「ありゃー、今気付いたねー。そりゃー魔法機だねー。初めて見たねー!」


「魔法機?」


「そうだねー、魔法機だねー。たまにワッタシらを採りに来るヒットンが話してたねー。魔法の力で働く魔法機がたっくさん出来たってねー。でも高くてなかなか手に入らないってねー。」




魔法機、正式名称不明、にパンを任せておいたら、ちゃんと焼き上がった。


味見してみたらちゃんとパン。


これでみんなにちゃんとした物を食べさせられると思う。


食事が出来たことを知らせに行こうと思ったら、キッチンの外にすでにみんなが集まってきてた。


「みなさん、食事が出来ましたよ。どうぞ召し上がってください。」


言うが早いか、わらわらと料理に群がる人達。


どこから見つけてきたのか、ちゃんと食器やスプーンも手にしてた。


「由樹殿も、さぁ!」


「はい、いただきます。」


みんな美味しそうに食べてくれてる。


とりあえず良かった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ