出会い系裁判
「被告人前へ」
オレは出会い系サイトのやり過ぎでついに逮捕、起訴され、今法廷で裁かれている。
被害者の女性達が合同で、被害届けを検察側に提出したのだ。
起訴状には、
「女性の人権を著しく侵害した、女性へのテロ行為」
と記してあった。
なぜだ!?オレは友達が欲しかっただけで、メル友になってくれた女性達には、とても紳士的に接していたはず。
不服だ。
全面的に争う方向で、オレは法廷に臨んだ。
被害者の一人、変態主婦香織は、被害事実を、涙ながらに訴えた。
「愛するダンナの単身赴任をいい事に、卑猥な言葉を沢山浴びせられました。それに、被告人から会おう、会おうと、シツコク言われました・・・。精神的苦痛でした」
「ウソだ!同意の上で、卑猥ラリーを楽しんでいたはずだし、ダンナとは不和による別居と聞いていたよ!」
オレの荒らげる声が、むなしく響く法廷内。
「写メはあんなに笑顔だったし、『取れたて』なる、片乳写真だって送りつけてきたじゃないか!オレの方こそ被害者だよ!」
しかしオレの訴えは棄却され、変態主婦香織はオレの顔をチラと見ることもなく、心痛な面持ちで席に戻った。
ダンナはかたわらでオレをにらみ、ピタリと寄り添う香織・・・
メールで香織の深層部分までは読めなかったが、彼女はオレとのメールのやりとりをとても苦痛に思っていたと、この日初めて知ったのだった。
そ、そんなバカな・・・愕然するオレ。
「次の原告、前へ」
次に現れたのは、Aカップ美容師、アリカだった。
「生理中にも関わらず、襲われた。抵抗するもムダでした」
と、シクシク泣いている。
オレはアリカを指差し、訴えた。
「待ってくれ!私は無理やり彼女に酒を飲ませたり、袋に詰めて拉致したり、そんな非道な事はしていない!同意の上での個室移動だし、同意の上でのオトナの溶け合いです!オトナの男女の、プロレスゴッコなんです!」
「意義アリ!」
原告団弁護団の一人、アリカ担当の敏腕弁護士が挙手をした。
アリカの弁護士の、意義申し立てを許可する裁判長。
「被告人の原告に対する行為は、『溶け合う』という表現に美化された、鬼畜の所業です。プロレス!?抵抗する女性に、プロレスまがいの技を掛けるなど、暴力以外の何ものでもありません」
すぐに反論をするオレ。
「技!?体位と言ってくれ!体位が暴力と言うのならば、アナタだって暴力の末の産物だ!自分の親を訴えられるのか!?抵抗する女性、というのにも語弊がある!イヤヨイヤヨも、もののあはれなり!」
オレを冷やかに見る、アリカの弁護士。
「以上です、裁判長」
席に戻る弁護士とアリカ。
こりゃあ状況は不利だぞ・・・
しかし、オレの形勢を一気に逆転せんが為に、国選弁護人の津島氏が、オレの起訴事実に対する弁護をここでしてくれる事となった。
「裁判長、彼は無実です。彼は女性に無理強いのメールや、過剰な誘惑など、そのような起訴事実は、一切しておりません。お酒を、彼は確かに女性に勧めはしましたが、それは飲みに行けば当然の行為です。まれに焼酎の割合を濃くし、女性を酔わそうとする事実はあったかもしれませんが、それはその場を盛り上げようとする彼の思いやりです。飲む飲まないは女性の意志に委ねられる事であり、大人の自己責任といえましょう。個室移動のその先に何があるかは、大人の女性であれば容易に想像できる事であるし、彼に襲われたという原告側の表現は、不適切を帯びています」
津島氏の弁護を後押ししてくれる人物も、証人として法廷で証言することになった。
鬼流だった。
彼もオレと同じ起訴事実により、刑が確定。
出所後の今は法の網を潜るように、未だサイトを利用している。
鬼流は毅然とした口調で言った。
「寂しい人妻、寂しい女性。誰しも自由にユーザーとなれる出会い系サイトにおいては、釣り上げられる側に、自己責任の全てが託されるべきなり。出会い系サイトという、寂しさの海を迷泳中に、隙間産業の釣り糸をつかむは、是、自分自身の救済なり。女性を救済する釣り糸なり。テロと相反する、救済の糸口なり!!」
「おおお〜!」
どよめく法廷内。
「救済なり、救済なり」
シュプレヒコールが、法廷内から湧き上がった。
そして判決のハンマーが、オレの頭に振り下ろされる。
「被告人を無罪とする!」
当然だ。
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もちろん上記はフィクションであるが、登場人物の女性は実際にオレがメル友だった女性達だ。
バンドマンの間では、何人かガールフレンドのいるのが常のようです。
しかしお客さんである、いわゆるバンドギャルに手を出しては何かとトラブルにつながるのがオチ。
そこで目を付けたのが、「出会い系サイト」です。
あまり印象のよくない風潮な出会いの形ではありますが、マナーを守って遊べば出会い系サイトはとても楽しい交流の場です。
自分は現在進行形で出会い系サイトをやっています。
その赤裸々なリストを、ここに記しておこうと思います。