〜カードと依頼書〜
初めてクレジットカードを使った時は魔法のカードと思ってしまうのではないだろうか?
実際にはクレジットカードの「クレジット」とは英語で「信用」「信頼」を意味していて、信用がなければカード使う事ができない。
信用があるかどうか【審査】で決まるのだ。
定住歴が長いもの、同居家族が多いもの……など、行方をくらましたり、支払いを怠る危険性が少ない人でなければ作る事ができないのだ。
そう簡単に信用などできない…
未成年の自分ではなかなか作れない魔法のカードなのだ!
「できたッス!これが冒険者カードッス!」
どうも浦田遼です。
まさか水晶に手を当てただけでこちらの身分証が作れるとは思っていませんでした。
彼女から冒険者カードとは何か結構丁寧に説明を受けたので簡単に説明。
・冒険者のギルドのカードでの身分証明。
冒険者ギルドに登録するには【証明の水晶】手を当てることで、出身地と種族、過去の犯罪歴を読み取り、問題がなければ、カードを作り、身分の証明することができる。
・ギルドでできる内容
仕事の仲介、報酬の受け渡し、素材の買取、貨幣の両替等を行なっている。(交換出来ないものもある。)
・登録情報
登録された情報は冒険者カードにて冒険者自身が管理することとなる。
罰金を払えば再発行は可能。だが、ランクは1ランク下がる。
大きな町には必ずあるギルドで登録することで冒険者になったり依頼を受けたり冒険者同士でパーティーを組むことも出来るらしい。
危険度のランクはブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナとあり右に行くほど危険である。
冒険者のランクもブロンズクラス、シルバークラス、ゴールドクラス、プラチナクラスでランク分けされ − + での評価がされる。 −から始まり、依頼達成の数で +に上がれる。各クラスの +になると昇格試験が受けられる。
初めて登録するとブロンズクラス −からスタートする。
だが、問題を犯したり犯罪を重ねると剥奪される。
一度資格を剥奪された場合は二度と登録は出来ない。
「というわけで!冒険者とは!ギルドで危険度によってランク分けされた依頼を受け報酬を貰う人達の事ッスけど安全なお仕事もあるッス!ここの小さな掲示板に貼ってある依頼書が安全な仕事で、でかいのがギルドが依頼してるような危ない仕事ッス!」
「な、なるほど」
ちょっと剣とか持って冒険とかモンスター討伐とか……憧れちゃうけど。
………うん、無理か。うさぎこわい。痛いの嫌です。
刺身にたんぽぽをのせる系の仕事がいい。
「依頼書にはどんな仕事か、どこでやるか、報酬はいくらかとかが書いてあるッス!
あ!文字が読めない人は受付で依頼の紹介サービスもやってますッスよ!あとどこでやるかは地図が依頼書の下に描いてあるッスから文字がわからなくても大丈夫ッス!
そんで、依頼書を持って依頼主に渡せばいいッス!依頼が成功したら依頼料が貰えるッス。
ギルドの依頼の場合は受付に持って行けば依頼料をお渡しできるッスよ!」
文字が読めないからしばらく受付に行けばいいのか。
文字の勉強もしなきゃだな。
地図も結構詳しく描いてあるから迷子にならない……かな?
「と言う訳で!このお給料の良い酒場のウエーターさんをオススメするッ…」
「すいません。別の仕事にしてください…」
勘弁してくれ!コミュ症の俺が酔っぱらった人なんて相手にできるか!?
それに居酒屋とかで注文した物を確実に間違える自信があるぞ。
「えー!なんでッスか!?え〜と他には…」
「で、できればあんまり人と関わらないで作業できる環境が良いです。」
喋れるようにはなりたいけどいきなりはむりっす。おっと口調が。
「えー…うむッス。最近そういう仕事はなかったと思うッスけど……あ。」
ボロボロの依頼書にアンドレーナさんの目が止まる。
「え?何かあるんですか?」
「え〜と、これはちょっとオススメしないッスけど…最低限度の人としか関わらないッスけど……いやでも…ポーションの精製の……は……でもッス…」
とアンドレイーナさんがブツブツと呟く。
!?ポーションの精製?なにそれかっこいい!
ポーションってあれでしょ!?
ハーフムーンさんがくれた、傷が凄い勢いで治った例のアレ!精製ってことは作れるの!?すげー!あれって作れるんだ!
あんなのあったらブラック◯ャック先生も割引しちゃうよ!?
……ハーフムーンさんのお返しも作れたら良いな〜。そんで仲良くなれたら………なーんて、なはは。
よし!決めた!
「アンドレイーナさん!」
「は、はいッス!?」
「それ!紹介してください!」
「うぇ!?いやでも…」
「あ、ランクが足りないとかですか?」
「いや……そういう訳じゃないッスけど…。……その…」
!そうか、ゲームみたいに神官や僧侶みたいに回復できる、知識のある人じゃないといけないのか?
あぁ…ポーションとかだと錬金術士か……無理だ、義手義足の主人公の漫画しか読んだ事がない。
……いや、もうこれにしよう!
そうだ!どうして諦めるんだ!死ぬ気でやればきっとできる!
もっと熱くなれよぉお!
「お願いします!恩返ししたい人がいるんです!この仕事ならそれに近づく事ができると思うのです!だから…せめてその依頼を出している人を教えてください!
その人の所まで行って…おねがいします!」
炎の妖精を思い浮かべて、アンドレーナさんの手を握ってお願いした。
「は、はいッス…お願いされたっす……」
おお!さすが炎の妖精の力!
「あ、ありがとうございます!じゃぁ!ここに向かいます!」
ボロボロの依頼書をもって地図に描いてある場所に向かう。
「ちょッ!内容を聞くッs……」
オレ達の冒険はこれからだ!
そんなことを一人で考えながら走り出した。
――――
そこは周り家屋からの離れた場所にあった。
闇に閉ざされたように暗く荒涼とした家、
そこから発せられるわけのわからない匂い、
家の煙突から毒々しい煙がモクモクと吐いていた。
うん…いかにも魔法使いの家って感じだ。
ポーションを大きな釜でネルネル作ってる気がする。
そうだ!きっと可愛い魔女っ子が作っているんだ!
きっとここなら美味しいポーションが『テーテッテテー♪』ってできそうな気がする。
よし!なんかやっていけそうな気がしてきた!
そんなことを思いながら家のドアの前に立つ。
「ぁぁぁぁ_。」
なんか呻き声が聞こえるんだけどぉおお!
え?なに?ポーションって人が原料とかないよね!賢者の石じゃないでしょ!
あれ?まずい?これちょっとまずい?
そんなことを考えていると、
『バンッ』といってドアが開き『バンッ』とドアが頭にぶつかる。
「あぎゃぁ!」なんて間抜けな声の次は
「誰じゃぁあああああ!
人の家の前でウロウロしているバカモンわぁぁぁぁあああ!!!」
爺さんの罵声が大きく響いた。
そして何より魔女っ子ではなかった事にショックを受けた。