ギルドの朝
--- とあるギルド職員の視点 ---
「う~~ねむいッス…」
今ギルドに向かっている私はギルドで働くごく一般的な獣人種の女の子ッス。
強いて違うところをあげるとすれば………他のギルド職員より顔の造形が悪いって所ッスかね…。
ギルドの職員は腕のいい冒険者を街に引き止める為に容姿が良い人が多いんッスよ。
そのせいか私は受付の際は冒険者の方々に嫌な顔をされるから…受付の仕事が来ないで、雑用ばっかりで大変なんッスよ。
朝早くにギルドの鍵を開けて、掃除、依頼書の確認などの色々な雑務をして、嫌味を言われながら夜遅くまで仕事をして、一番最後にギルドから出て鍵をかける。
働いて2年なのに……まさか入ったばかりの新人さんにまでパシリにされるとは思ってなかったッス…。
まぁ、受付で冒険者の方々に気に入れられている方が偉いんッスよ……
あ、私の名前はアンドレーナ、ッス。アンって呼ばれ……たいッスね。
そんなわけでギルドにやって来たッスけど。
ふと見るとギルドのドアの前に一人のマントを被った怪しい奴が座っているんッスよ。
うわー。酔っ払いッス。浮浪者ッス。乞食ッス。たまにいるんッスよねー。金がないから貸してくれーとか酒代くれーって輩。
仕事を紹介してもやらないんッスから本当に駄目ッスよね。
まぁこれも仕事ッス。追い払うか、仕事をさせるかビシっとやるッス!
「あのー。すいませんッス。」
そう思って声をかけて肩を揺する。
すると突然「わひ!?」っと言って飛び上がったッス。
私が見ている目の前でマントがめくれてその正体があらわになったッス。
こいつぁーなんて可愛い男子なんだって思ったッスよ!
え?なんすか?なんすか?夢っすか?あんまりにも働きすぎて夢でも見てるっすか!?
ありがとうございます!我らの神ベスティア様!夢でも嬉しいッス!
可愛い男子はこちらを見て「す、すいません」って言ってどいてくれたッス。
可愛い声ッス。夢ならちょっとくらい触っときゃー良かったッス。
おっといけないッス。夢でも仕事はちゃんとしないっとッス。
そう言ってギルドのドアの鍵を開けたッス。
そしたら後ろから声をかけられたッス。
「あの、すいません。ギルドの職員さんでしょうか?」
私は反射的に
「ギルド職員番号!01566のアンドレイーナッス!」
しまったッス!いつも小さい声だと怒られてたんで大きい声で口に出してしまったッス。
やばいッス。男子めっちゃびびってるッス。やばいっす。
泣かれたら、そうでなくても警備兵を呼ばれたら確実に私が牢にぶち込まれるッス。
ごめんよ…可愛い妹達…。お姉ちゃん詰んじまったッス…。
男子はすぅ…と息を吸い込むと小さな声で、
「えっと…自分は浦田遼です。
あの……すいません、し、仕事を探しにきたのですが何かないでしょうか?」
「このアンドレイーナ貴方様にお合いするお仕事を提示させていただくッス!」
現実であろうと夢であろうとこのアンドレーナお仕事をするッス!