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〜青空魔法教室③【肉体強化】の魔法〜


昼下がりの広場には身形みなりから判断して、街の奥様やじゃれあう子供達。先ほどギルドで見たような冒険者の人達、ギルドの職員もここで休憩したりお喋りしたりしていた。

自分の昼休みは図書館に行くか、机で突っ伏して寝るふりをするかのどちらかである。

外に出て遊んでる奴らの気が知れないと思っていたが今こうして出てみるとこの暖かい日差しを浴びるのも良いのかもしれない。

しかし、この昼下がりの日差しや人にも慣れてきたけど、それでもこのフードが手放せないな。


……これ返す時に似たようなフード買おう。そうしよう。


さて、自分は今、小太りの……女性?の像の前にてアンドレーナさんの正面に立ち彼女を観察している。

ジロジロ見るのは失礼だとは思うのだがアンドレーナさんが『今から実際に魔法をやってみせるから見ててほしいッス!』と言われたので見させて貰っている。

赤みがかった髪は肩に少しかかるくらいあり、髪と少し色味の違う垂れ下がった耳、後ろの尻尾は耳と同じ色で少し揺れている。

ギルドの上の白い制服に首にはネクタイ、青いスカートから見えるスラリとした足がなんとも……たまらん。

おっと。いけない、いけない。さすがにそんな風に見ると失礼すぎる。

目線を上に戻し、アンドレーナさんの顔を見る。

アンドレーナさんは目は瞑り、りきんでいるのか少し顔が赤い。

アンドレーナさんは『集中……集中……』と念仏のようにつぶやいている。

じっと見ていると、アンドレーナさんと目が『カッ!』と開く。


「じゃぁ、いくッスよ!【肉体強化】!」

アンドレーナがそう唱えると彼女の体になにか…こう…オーラみたいな、少し空気が変わった……ような気がする。

「リョウさん!手を出して!これをどこかに投げて欲しいッス!」

そう言ってマントの間から手を出すと枝を渡される。

え?投げる?

「えっと…えい!」

誰もいない所を探して枝を投げる。

枝は放物線を描き地面に……


シュンッ


急に風が吹いたと思ったら投げたはずの枝が無くなっていた。

「あ、あれ?枝はどこに…」

投げたはずの枝はアンドレーナさんが持っていた。それに加えもう片方の手には沢山の葉っぱが握られていた。

「ふっふふ〜んッス♪次はこれをばら蒔いて欲しいッス。」

「え?あ、はい。」

現状を理解できず、言われるがままに自分は葉っぱを受け取りアンドレーナさんの前に葉っぱをばら撒いた。


瞬間


本当に一瞬に葉っぱが無くなり、アンドレーナさんの手に握られていた。

次第にアンドレーナさんにあったオーラが無くなっていく。

「ふふ、どうッスか?これが私の【肉体強化】ッスよ!」

ドヤ顔である。

でも…

「すごいです!全然見えなかったです!アンドレーナさんすごい!自分も支援魔法覚えたらこんなこともできるのですか!」

『すげぇ!マジ魔法ってヤベェ!』今、自分の中はこの言葉でいっぱいである。

「えへへ、えっとじゃぁリョウさんもちょっと体験してみるッスか?」

「え!」

「私の【肉体強化】は人にもかけられるッス!リョウさんにも【肉体強化】の恩恵をえられるッスよ。」

ktkr(キタコレ)!やったぜ!

「是非!お願いします!」

「じゃ、じゃぁいくッスよ。」

アンドレーナさんは目は瞑り右手を胸に当てる。先ほどのように集中するようだ。

一呼吸置くとゆっくりと目を開き、右手をこちらに向け、口を開いた。

「我が魔力よ!昵懇じっこんせし者に付属せよ!【肉体強化】!」

そう唱えると、こちらに向けた手のひらから先ほどのオーラのようなものが飛んでくる。

「……。」

「……。」

ん?特に変わったような気はしないのだが?

……いや待てよ。アンドレーナが固まってる?


その時…電流走る―!


『これ魔法の影響でクロックアップ状態なんじゃね?』と

アンドレーナさんの【肉体強化】は、素早く動けるようになると言っていた。先ほど見せてくれた行動から「高速移動」を可能にする魔法であろう。

野球選手が「ボールが止まって見えた」と言ったり、プロボクサーが「パンチがゆっくり見えた」といったことを言うあれ(・・)なのではないか。あの現象はアドレナリンが大きく影響しているという。 アドレナリンが分泌された状態では、時間の進み具合が遅く感じ、脳が加速状態にあり時間の感覚が伸びる現象だとかなんとか。


このアドレナリン出まくりな状況で一つの事を思う。


テンション上がってきた


とりあえず、どれくらい動けるのか知りたかったので何年かぶりの反復横跳びをする事にした。




「ハッ!ハッ!」

「……。」


自分でやっておきながらなんだが、すごい光景だな。

女の子の前で淡々と反復横跳びをする男。

これ警察とか呼ばれないよね?大丈夫だよね?


おっと魔法の効果を知るためにやっているんだった。

しかし10秒も経っていないが体力の限界に近づいてきた。

「ゼーハー。ゼーハー。」

ぎ、ギブアップ。つ、疲れた。

手を膝に置き前屈みになる。

魔法の効果を受ける前と変わらない気がするのだが自分の気のせいだろうか?

いや、今周りの人から見れば自分は超高速で動いているはず…

「大丈夫ッスか?」

「ひゃ!?」

あれ!?今、自分高速で動いているはずだよな?

…は!彼女もまた魔法の効果で自分は超高速で動いているのk…


「も、申し訳ないッス。ちょっと私の【肉体強化】が効かなかったみたいッス…。」

「え?」

「私もこんなこと初めてだったんッス、んでちょっと困惑してたらリョウさんが踊り出して……」

「………。」

うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

やっちまったぁああああああ!

恥ずかしすぎる!


何が「電流走る」だ!馬鹿野郎!

でも、男子だったらクロックアップとか、高速移動とかって結構 夢だと思うんですよ!

朝の番組から、相手の背後に回りこんで『残像だ』というまでが男のロマンだと自分は思うんですよ。


そんな自分の中で持論を語っていると、


「ちょっと考えたんスけど、何だか打ち消されたような気がしたッス。そのマントの効果ッスか?」

「打ち消された?」

そういえば前に露店の店員さんにスキルのついたレア装備だって言われてたな。

【隠遁】【感覚保護】【耐暑耐寒】だっけ。

「そのマントを外して魔法をかければできると思うッス。」

そ、それは反復横跳びを始める前に言って欲しかった…。

いや、もう忘れよう。自分は反復横跳びなんてしていない。

心を落ち着かせて……

ヒッヒッフー。ヒッヒッフー。

よし。


「じゃぁ、脱いでみますね」

そう言ってマントをはだけようとすると、

「ブッ!」

とアンドレーナさんが吹き出した。





 


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