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〜青空魔法教室①〜

日差しが暖かい。天気の加減か、それとも自分の心の中の心境の所為か、町全体がツヤツヤと光っているような気がした。

風が屋台からの美味しそうな匂いを運び、陽射しは暖かく、街中では半袖姿の人をたくさん見かけた。

自分も少し汗をかいている。

暑いからというのもあるが、自分が女の子と歩いているというこの緊張感に汗をかいているからであろう。

街の物音が厚い膜に包まれたように、遠くかすかに響いているように聞こえて、アンドレーナさんと二人で歩いているこの場所は別の空間にでもいるように感じる。


………

な、何か話題を振らなければ!

…えっと。

『今期のアニメ何見ました?』

……だ、だめだ。こんな話題しか振れない。

こんなん女の子には絶対駄目な話題だし、そもそもここ異世界だから通じないわ!

どうすればいいんだ……。


「そ、そういえば、ウラ…リョ、リョウさんの名前ってここら辺じゃ聞かないッスけど………どうしてここに来られたんッスか?」

「え!?あ、えっとちょっと……。その……。」

急に名前を呼ばれ、キョド(挙動不審)ってしまった。

コンビニに行こうとしたらここ(異世界)に来ましたなんて言えないよ!

口籠っているとアンドレーナさんが察してくれたのか話題を変えてくれた。

「ご、ご家族は?」

「あ、えっと。父と母と自分の三人家族です。」

「おぉ。わ、私も今、妹達と三人で暮らしているッス!偶然ッスね〜。ご両親は今どちらに?」

「え、あーえっと。今はその……は…はな(ばな)れでして…」

「え?…あ!?そ、そ、そうなんッスか。」

「は、はい。」

「…………。」

「…………。」


か、会話終わっちゃったよ!

ご、ごめんなさい!だってあんまり言えないような答えだったんだもん!


ああぁぁぁ!アンドレーナさん今すごい困ってる顔してるぅ!

おおぃ!自分このままでいいのか!?

否!そんな訳ない!ここは自分が話題を振らなくては!

なにかないか?何か…。

そうだ!


「あ、あのアンドレーナさん。」

「はいッス!な、何でしょうか!?」

「その、魔力の使い方を教えてくれるって言ってくれましたよね?」

「い、言ったッス。」

「ですが…自分の国ではあんまり魔力とか使ってなかったからよくわからなくて……。師匠にちょっと教えてもらったくらいの知識しかないので、……あの…教えて欲しいな〜と思いまして…。」

「魔力を使わないッスか?なんと珍しいッスね。魔力を知らないという事は魔法も?」

「こっちに来て初めて見ました。」

ハーフムーンサーベルさんのとか師匠のをちょっと見ただけだけど。

「なるほど、では歩きながら説明するッス…そうッスね…。ゴホン。まず、魔力とはどういうものかどこまでご存知ッスか?」

「ええと、魔力は……色んなものに使われていて、何かを攻撃する為の【攻撃魔力】。

何かに変えることができるのが【変化魔力】で。生まれながらの特別な魔力【特殊魔力】があって、攻撃魔力にも変化魔力色んな分類の仕方がある…それを魔力って呼んでいるって師匠に聞きました。」

「はいッス。術式や分類、個人の魔力の質によって多少の差異があるッスけど、基本的に何にでも使える便利な力って言われてるッス。戦う為だけではなくて日常生活や武器の作りの時にも使われるッス。」

師匠のポーション作りの時の魔力みたいに変化魔力を使ったのとか…かな?

火とか水なんかも日常生活で使えそうだな。

「魔力は個人が通常使用する程度なら時間が経てば回復するッス。しかし、組織的に搾取・精製したり、特殊な存在を呼び出したりすると枯渇することもあるッス。枯渇すると大抵、よくないことがおこるので注意ッス!」

よ、よくないことって…怖いな。

「なるほど。魔力って増えたりするものなんですか?」

「鍛えたり、頑張って枯渇ギリギリまで使い続けたりすれば多少は増えると思うッスけど。やっぱり生まれた時の魔力総量でほとんど決まっちゃうッスね。」

枯渇するときって自分でわかるものなのかな?

「その魔力を活性化させて、現実に影響を与える力に変える…これが魔法行使の基本ッスね。

ではその【攻撃魔力】攻撃する為の魔法についてお話するッス。魔法についてはご存知ッスか?」

えっと……ホ○ミ、メラゾ○マ、スク○ト、バイキ○ト。

それにケ○ルにエア○、グラ○デ……って全部ゲームしか知らない…。

「えっと、物語に出てくる魔法ぐらいは……。」

「おぉ!もしかして『王都守護戦記』ッスか!?私も母ちゃ……母によく読んでもらったッス。」

「そ、そうなんですか。」

俺の知ってるのは、ドラゴン倒す物語とクリスタルと光の4戦士達のお話くらいです。すいません。

でも、『王都守護戦記』か。題名からして偉人の伝記みたいなものかな?こっちにも本があるなら読んでみたいな…。

「では、その物語に出てくる魔法について解説させていただくッス!

物語で活躍した魔法は大きく分けて5(いつつ)ッス。

属性魔法、召喚魔法、魔石魔法、特殊魔法そして結界魔法の5種類!」

『でーでん!』とクイズ番組の効果音が聞こえるような気がする。

「まずは属性魔法についてッス!

『さぁ悪しき者共よ!この炎をまといし剣にて浄化されるがいい!』そんな格言でお馴染みッスね。

……どうして右腕を抑えるッスか?え?続けていい?わかったッス。

属性魔法とは、一定の法則性を持った魔法ッス。

種類は火、水、氷、風、土、光、闇、支援となり、

火魔法であれば、火を扱う魔法を使えるようになり、それを武器や防具にまとわせて火属性の物理攻撃をモンスターに与えることができるッスね。他の属性でも、多少は違えど同じようなことができるッスね。

支援魔法は、自身や仲間の身体を鉄のように硬化したり、感覚を研ぎ澄ませたり、肉体の強化などが行えるッス!」

「アンドレーナさんは何か使えるんですか?」

「ふ、ふふ〜ん。私は支援魔法の【肉体強化】と【聴覚拡張】が使えるッス!」

ドヤァ顔である。

「それってどんな魔法なんですか?」

私の(・・)【肉体強化】は、素早く動けるようになるッス。」

「ん?私の(・・)ってことは人によって効果が違ってくるんですか?」

「そうッスよ。火魔法とかでも人によって火の威力や攻撃範囲が違うのと同じようにそれぞれ違う効果や継続時間があるッス。」

魔法ならみんな同じ威力で同じものかと思ったけど

「じゃぁ次に【変化魔力】何変えることができる魔法を教えるッ…。」

クゥ〜。

「…………。」

「…………。」

…………おい。やめてくれよ俺のお腹。

アンドレーナさんが色々解説してくれてんのに音ならすのはダメだろ。

確かに屋台から美味しそうな匂いはしてたけど空気を読んでくれよ。

自分の顔が熱くなり赤くなっていることがわかる。

「……ふふふ、続きはご飯を食べてからにするッス。」


そう言ってアンドレーナさんは屋台の方へ歩き出した。


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