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〜昼の市場〜

太陽の光が眩しいと自分はフードを深く被る。

師匠の教えてもらった場所に近づくにつれて、ガヤガヤと賑わい、溢れんばかりの人がいる。

客引きの声や食品の匂いと人々の臭いが混ざり合う。様々な人種、種族が様々な物を露店で売っている。

この辺で繁盛している市場だそうだ。




「おわぁ〜……」

初めて都心の街にきたような声を出してしまった。

なんていうか、こう…活気のある市場ってワクワクしたするよな。

夏祭り然り、コミケ然り!

いや〜楽しくなって……


なんか臭くない(ヒソ ヒソ ヒソ)?』

うわぁ、本当だ。(ヒソ ヒソ ヒソ)

あいつじゃない(ヒソ ヒソ ヒソ)?』



前言撤回。もう帰りたいです、師匠。




さてはて、なぜ自分がこんなところに来ているかというと……

それは朝こんなことがあったからである…



――――


朝食のパンを齧っている時の師匠との会話。


「最初の試作というのは何故か失敗するものだが、何度目かで少しずつできるようになってくるんだ…。

が、お前さんは全く上手くなっておらんかった。」


「全くですか…」


「ああ、薬効成分が足りてたし、やはり魔力の所為かもしれねぇな。」

「【変化魔力】の質によってポーションの出来も値段も大きく変わる。

こればっかりは、生まれ持った才能だからな、数日やってもできなかったら諦めな。」


そ、そんなぁ。

「…自分って魔力が無いって事ですか?」

「いや、おめぇにはちゃんとあるだろ。この依頼書見ればわかる。」

そう言って自分の持ってきたボロボロの依頼書だった。

「これに?」

「ああ、これにはお前さんの水晶でわかる事が書かれているんだ。

え〜と確か、水晶でわかるのは…出身地と種族、犯罪歴、依頼の成功率、魔力の有無が書かれてんだ。どれくらいあるかは書かれてねえがな。」

そう言って依頼書の文字を指でなぞっている。

師匠は目が見えていないけど

「触って文字がわかるんですか?」

「ああ、依頼書のインクは特別なものでな。

文字が読めない奴でもわかるように魔力で伝えてくるんだ。」

そう言って依頼書を渡し、一番上の文字を触らせる。


(ポーションの精製の材料の採集のための手伝い兼護衛。)


こいつ……直接脳内に…!?

書いてある文字はよく分からないが触っただけでわかるのはすごい便利!


「さてと、俺は少し休んだらポーションの材料を採集してくる。」

「あ、じゃぁ自分も……」

今度こそ薬草を見分けてやると思い立ち上がるが、

「おめぇはここで留守番だ。」

「えぇー…。」

出鼻をくじかれつい、不満の声が出てしまう。

「ここら辺で一番弱いモンスターにビビってるおめぇを連れて行けるかよ。」

「う。」

それもそうだと図星を衝かれて口をつぐむ。

「まぁ、今回はここにいろ。

……ああ、そうだ。おめぇにやってもらう事がある。」

「?…なんですか?」

「それは………」

ディディ師匠が真剣な目でパンを持つ。

なんだろう…。ポーションを作るために必要な……。

そうか!修行か!

「そ、それは…?」

ゴクリと喉を鳴らし、真剣な目で答える。


ディディ師匠がパンをシチューにつけて口に運び、モグモグと噛み終わり、

「ふぅ」と一息ついてこちらを向く。









「夕飯を作っておいてくれ。」








――――


という訳で、昼まで休んだ後、師匠が置いていったお金を持って………


ここに来たのである。


『雑用も仕事のうちだ!』そんな師匠の言葉を聞いて落語家の弟子入りの話を思い出した。

師匠に付いて仕事先へのかばん持ち、師匠の家の雑用、そして落語の稽古、着物の着方やたたみ方、鳴り物の稽古などの落語の修業をするらしい。

師弟の関係とはどこも変わらないのだなと

押しかけておいて、ご飯をいただいて、勝手に師匠と呼んでいるのだから少しでも役に立つ事しようと決意する。

さてはて、その為の夕ご飯を作るための食品を買いにここまで来たのはいいがどこで買えばいいのだろうか?


・・・・・・・・(ヒソ ヒソ ヒソ)

・・・・・・・・(ヒソ ヒソ ヒソ)

・・・・・・・・(ヒソ ヒソ ヒソ)


なんか見られてるし……

早く買い物終わらせて帰ろう。え〜と。

師匠が置いていってくれたお金は……

中、小の銅貨が3枚、大きい銅貨が1枚入っていた。


この世界通貨は硬貨であるらしい。単位は【ルト】。

小銅貨(1ルト)銅貨(10ルト)大銅貨(100ルト)

銀貨(1000ルト)

大銀貨(10000ルト)

金貨(100000ルト)

白金(1000000ルト)

の7種類あり、小銅貨が一番価値が低く、白金貨一番高い。

簡単に言うと、銅貨一枚でパンが買えて、小銅貨10枚で銅貨と同じものが買えるらしい。

日本の感覚で言うと

小銅貨は十円

銅貨が百円

大銅貨が千円

銀貨が一万円

大銀貨が十万円

金貨が百万円

白金貨が一千万円

のようだ。

…しかし、自分の感覚では一枚で一千万の硬貨なんて考えられないけどな。

あっても外に持ち歩けないような気がする。

…ってそんな大金を持つ訳ないか。


それで師匠がくれたのは、133ルト。

日本円にして1330円くらいかな?

1食分にしては多くもらったのではないだろうか。



どこで買えばいいのだろうか?

師匠もいつも買っている場所とかここが安いとか教えてくれればそこに行けるんだが…

師匠曰く。

『しのごの言わずにやれ!』だそうだ。

スパルタだ…。

…まぁ、何もできない自分にはありがたいことなのかもしれない。

うだうだ言ってもしょうがない。

でも早く帰りたいから一回の買い物で済ませたい。野菜とか魚や肉、色々なものが置いてある所がいいな。




少し辺りを見渡す。


野菜、鳥、果物、道具、雑貨品らしきもの様々な物を売ってる。どこも賑わいとても自分では入れないような空間であった。

そんな混み合っている市場に、少し不自然なくらい人の集まっていない露店に目がいく。

座っている店主らしき茶色い髪の人は客引きをしておらず。混み合っている市場でその場所だけ異様な雰囲気であった。

人が集まっていないので、少し離れている自分の位置でも色々な食べ物や雑貨品らしきものが置いてあることがわかった。


異様な雰囲気であったが、行ってみるだけ行ってみようと考え足を運んだ。


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