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プロローグ 〜兎に角〜

ジョギングは、一般的にランニングよりもスピードが遅く、長時間の有酸素運動ができるため、健康に良いとされている。   ※wiki参照

確かに健康にはいいのだろう、ただ自分のような見た目ではいつ警察に連行されるかわからないなどと言い訳に少しも身体を鍛えてなかった昔の自分をぶん殴ってやりたいと


「ぜぇっ!はぁ!うおぇっ!」


こんな声を出しながら自分は人生で一番走って逃げている。



「「「キュイィィィィィィィィィ!」」」

ツノの生えたうさぎの化け物の群れから






――――


自分は 浦田 遼(うらた りょう)。一人称は「自分」で17歳の普通の高校にいる男子生徒……でいたかったのだが、短足デブの不細工だ。

学校でいじめられて、対人恐怖症になり、学校に行かず家で何もしない日々が続く中ふとコンビニに行こうと思い扉を開いた瞬間。

広い草原に飛ばされた。ああ…自分は夢でも見ているのだろうと頭を掻きながら歩く。

緑に覆われた広い草原に柔らかく屈折する太陽光、草を踏む足の裏の柔らかい感触に自然と笑みが浮かぶ。


『なにニヤニヤしてんだよ。キモい。』そんな昔の言葉が頭をよぎり笑みを消す。

どうしてこんな辛いことを夢の中でも思い出さなければいけないのか、


「キュイ。」

そんな可愛い鳴き声が後ろから聞こえ振り向くと額に黒い痣のある白いうさぎが潤んだ青い瞳で見つめていた。

なんと可愛いのだろかと膝を曲げて近づこうとすると、鳩尾を殴られる感覚に襲われた。


「あばそっ!」


情け無い声を出す。痛みで目の前が眩むがそれを耐え、痛みの元を見る。

そこには先ほどのうさぎが身体を丸め赤い瞳でこちらをみていた。

そして後ろ足で立ち上を見上げると、


「キュイィィィィィィィィィ!」


耳を塞ぎたくなるほどの大きな鳴き声が響いた。


痛みで茫然としていると何処から現れたのか、うさぎが赤い瞳が幾つもこちらを睨んでいた。

そして目の前がうさぎの額の黒い痣から黒いツノが生成されていくのを見て全身から汗が噴き出し命の危機を感じ、振り返り走り出した。







――――


お願いします!なんでもしますから夢なら覚めて下さい!と涙目で考えていたが、鳩尾の痛みで夢で無いとやっと自覚する。

ズキズキと痛む鳩尾を抑えながら、吐きそうなるのを我慢し、走り続ける。

しかし、うさぎ達は距離を詰めてくる。

焦った自分は足がもつれ転んで、うつぶせになった時、『ヒュンッ』と風の音が頭の上のあたりを突き抜けるのを感じた。


 ドスッ!


目の前の地面にうさぎが突き刺さっていた。

「……あ……あ。」

やばい…やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!

あんなん刺さったら死ぬ!は、はやく立たなくては……


子鹿のように震える足を無理矢理にでも起き上がらせて走り出そうとすると、


あれ?右のふくらはぎが熱い?

後ろを振り返り見てみると、白い丸い物がついていた。

その下から真っ赤な血が流れていることもわかった。




「ぎゃあああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!!!」




人生でこんなに大きな声を出したのは初めてだろう。

痛みでまた倒れこみ、ふくらはぎに刺さっているうさぎを力任せに握り引き抜き投げた。

抜いた箇所からおびただしい出血で目が眩んだ。


しまった。抜けばこうなることは明らかだったのに痛みと恐怖でどうにかなってしまったのか。ふくらはぎを必死に抑えていると痛みで霞む視界に白い物体がうごめいている。

視界がクリアになるにつれ現状を理解する。

周りを囲まれた。

逃げられない。足が動かない。何か考えなきゃ。

そんな考える時間を与えるものかとうさぎ達は突進してくる。


腕を前に出し身を守ろうとするが腕もろとも突き刺された。

腕も肩も脇腹も刺された。


「うぐっ!があぁ!」


狩りを楽しむかのように最初のツノより短いツノで刺してくる。

全身の至る所さされる。

痛い痛い痛い。やだ。やめて。痛いから……やめてくれ……

…どうして自分がこんな目に合うのだろうか。誰か、誰か



「だ……だれか……たすけて……」





そんなか細い声を聞いて来てくれたのか、わからない。


それは真上から降りてきた。


白の中に金色の一線をかくし、囲んでいたうさぎが吹き飛ぶ。

少し顔を見上げるとその美しい姿を目の当たりにする。


空から降りてきた天使のように綺麗であった。本当にすきとおるようにきれいで、その姿を見たとき全身の痛みなど忘れるほどに綺麗であった。

17年間生きていて、目を見開くほどの美女は初めてであった。

髪が満月の月のような金色で長く、その隙間から見える耳は可愛らしく尖っていた。

うさぎ達を睨む碧眼の瞳が宝石以上に輝いていて、笑みを浮かべる唇は今出来たばかりで小さくて柔らかそうであった。

先ほどの地獄のような光景が、まるで天国のように思えた。見ていると眩しく、目を細めてしまうほどであった。





(なんて綺麗なのだろう)






ここから自分の冒険が始まった。





モンスター情報

【ブラックホーンラビット】

額に黒い痣のあるうさぎ。雑食で肉も食べる。

普段は瞳は青いが、敵を認識すると赤くなり凶暴になる。

黒い痣から魔力を生成し、10cm〜20cmほどのツノのような形状を作り出し攻撃する。ツノは伸縮可能。

群れの中でツノが一番大きい物がボスである。

柄は白や茶色、ぶち模様が確認されている。


額の黒い痣に魔石がありそれを壊すとツノは生成できなくなる。

ツノはとれても魔石と魔力があれば何度でも作り出せる。

とれたツノ、死んだときに頭に生えているツノでは消滅する時間が変わるので注意。

とれたツノではとれて数分後に消える。

頭に生えているツノは死んだ瞬間に消える。


ブラックホーンラビットに襲われた時の対策

ツノを刺されたまま殺してしまうとツノは消えてしまいその傷口から大量の血が流れて出血死してしまうので、

ツノを折ってからウサギを討伐し、ツノが消える前に回復手段を用意すること

※ギルドのモンスター討伐マニュアル 抜粋


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