風切 優駿
その男の名は「 風切 優駿 」(かざきりゆうしゅん)―――
華々しいデビューを飾った彼だが競馬学校入学当時はごくごく普通の男で
父親が元騎手や調教師など競馬関係者が多い世界でかれの父親は普通のサラリーマン
それまで馬に乗ったことのない彼は入学当時は明らかな劣等性だった
幼少の頃から馬に触れ合ってきたものの多い他の同期らとは大きな差があり修也はよく皆にバカにされていた
しかしそれは修也のみるみる成長していく姿を目の当たりにすることによってやがてやみ皆が認めていくのだった
そんな中、修也だけは他とは違いバカにするわけでもなくただただ無関心
眼中にないといわんばかりに修也とかかわることは学校生活3年間でほとんどなかった
つまり今日、初めて修也は優駿を意識する……
おそらく修也にとって初めての屈辱……
「絶好調だね風切君……おめでとう。」修也が勝利インタビューから帰ってきた優駿に声をかけた
「あ…ありがとう、長嶋君。」
「12Rは騎乗馬はなかったんだよね、惜しかったね新記録。」
「いやぁマグレが続いただけだよ、先輩ジョッキーも長嶋君を意識してたから。
て…てゆうか修也君が話しかけてくれるなんて嬉しいな。学校時代もあんまりお話したことなかったし。」
競馬学校時代から同期の代表的存在だった修也は優駿にとって憧れだった
「そういえばそうだね、これからおたがい頑張ろう。」
「うん、そうだね。」
言葉とは真逆に修也の心は怒りで満ち溢れていた
(思っていることと真逆な態度をとっていないと冷静でいられない。この僕があんな奴に負けてたまるか。)
12R修也の乗る馬は2番人気、本日1番勝てそうな馬の騎乗を控えていた
しかしここで予想外のことが起きた!!
前のレースで落馬したジョッキーが12Rの騎乗が出来ないとのことで優駿に白羽の矢が立った。
これで新記録の可能性がでてきた!!
低人気だった馬が優駿に乗り代わりすると知ってから馬券が売れて人気するという事態が起こる
優駿の乗る馬は明らかに格下の馬。しかし彼ならなんとかするんじゃないか……そんなことを皆考えだしたのだ
そんな現象を起こせるジョッキーは競馬界全体でも数名しかいない、ましてや新人でとなると
ここで新記録達成となれば一躍話題の人になり飛躍してしまいかねない
修也にとってはデビュー日にとんでもない試練を迎える
そして運命の12Rを迎える