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第十能力者『円滑』  作者: イノタックス


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36話 港での再会

「いったいどういうコト!? 神林サンからの電話で聞いた話じゃあ、第一能力者は死んだハズじゃあ……」

「私もそう聞いています。説明していただけますよね?」

「まーそう焦んないでくださいって」


リアさんとベイリーさんが疑問に思うのも仕方ないだろう。

俺や五十嵐が『影だったもの』と戦った時、影だったものは確かに『泥』を陰から出した。


──その時点で、妙だとは思った。

戦っていた場所は公園。土は地面にあるし、水は蛇口から入手できる。

もし『本当に』影だったものが貫太さんの能力とルークさんの能力、その『二つとも』を奪っていたのなら、その場で泥を作るくらい簡単にできるだろう、と思ったのだ。

だから、あらかじめ作っておいた泥を陰からそれっぽく出したのだろうな、と考えた。


それと『ルークさんの死体に利用価値がない』みたいなことを言っていたが、そこにも強烈な違和感を覚えた。

貫太さんと同じ、もしくはそれ以上の強さの能力を持っているルークさんの死体に『利用価値がない』?

そんなはずはない。俺たちを絶望させるために、わざわざ貫太さんの死体だけ見せるのは不自然すぎる。


いくつかの違和感から、俺は真相を見出した。

──『ルークさんは、生きている』。



「さすがの推理力だ。さすが『人格(アイデンティティー)』に治してもらっただけはある」

「あの人には感謝してもしきれないっスね。納得できましたか、リアさん、ベイリーさん」


どこか釈然としていない様子のリアさんとベイリーさんに聞いてみる。


「納得しないト、話が進まなイんでしょ? 納得したってことでイイわ」

「私も、リアと同じ意見です。ただ一つ、心配なことがあるのですが……」

「心配なこと? なんです?」

「この先の戦いで、第一能力者が力になるとは思えないのです」


確かに、そう考えるのも無理はない。

ルークさんの身体にも当然、異常は出ているようだし。

──でも、だからこそ。この人なら。


「生き残っている能力者の中で、最も強力な能力を持っているんです。戦ってもらわない手はないっスよ」

「そのぶっきらぼうな言い方では、まるで……」

「ボクの戦いの後のことは考えていない、と思ってくれているのかな、第十一能力者?」

「……ええ、まあ」


ベイリーさんの心配していることは、おそらく当たっている。

俺は、この戦いでルークさんを──使い捨てようと思っている。


「なんてこと考えているんですか、新庄さん!! この戦いは能力者を守る戦いですよ!?」


ああ、そういえば『(ステーション)』は心を読めるんだったな。

ならば、と俺の口からきちんと説明する。


「『回復(リカバリー)』の瑠璃さんがいない今、能力者の身体に出た『異常』を治す手は現状ではないんです。だったら──早く決着をつけて、『異常』を治す手段を見つけるべき。違いますか?」

「でも……」

「新庄クンの言ってるのが正しいト思うよ。ボクの身体の異常は、少なくとも現状では治せない。なら、死んでもいいってイウ覚悟で戦うしかないだろう?」

「……分かりました」


お、ようやくわかってくれたらしい。

よかった。


「とりあえず、ルークさん、リアさん、ベイリーさん、全員俺の家に来てください。俺の能力で、安全な場所にしてあるんで。それで、朝になったら能力者全員で『影だったもの』を──」

「俺がなんだって?」

「は? ──は!?」


俺の背後、少し離れた場所からの声。

振り返る。──真夜中でもわかる、黒目の周りで金色に輝く白目。

なんでこの場所が分かったんだ。バレないように俺の分身をダミーとしていくつかの地点に置いてきたのに。


「この俺の能力『最終終焉(ラストエンド)』をなめるなよ、第九能力者。『港に向かう』なんて不自然な行動を取っている時点で、お前が本物の第九能力者だ。──と、ごちゃごちゃ言うのはここまででいいか?」

「できればもう少し話したいんだけど、どうだ? ──『影だったもの』」

「それは他の能力者が来るまでの時間稼ぎか。分かっているはずだ、第九能力者。お前ら4人はここで俺に殺されるんだ。安心しろ、一般人には手を出さないでおいてやる」


俺にも死が迫ってる時点で、何にも安心できないが。


「ああ、そうだ」

「……?」


何かいい案を思いついたように、『影だったもの』は右の口角を上げる。


「邪魔されるのも癪だからな、一般人ではあるが、橋本とかいう人間も殺しておくか」

「っ!?」

「第十能力者をおびき寄せる、いい撒き餌になるだろう」


よし、決定。


「ルークさん。リアさん。ベイリーさん。……サポートをお願いします」

「新庄!? 無茶ダ、他の能力者を──」

「すいません、リアさん。俺、ブチギレたみたいなんで。──『惑星(プラネット)』!」


叫び、能力を使って港に大量の分身を作り出す。

『ダミーの分身は消さずに』。


出現させた数百の分身で、『影だったもの』に殴りかかる。


「勝てるものならやってみろ。数分で片を付けてやる」

「橋本は──俺の友達は殺させない!」


昔の俺なら考えられなかったこと。

誰かのために戦うなんて。


でも、何故だろう。

力が、湧いてくるんだ。


「『惑星(プラネット)』!」

「『最終終焉(ラストエンド)』!」


二つの能力が、ぶつかる。

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