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第十能力者『円滑』  作者: イノタックス


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34話 新庄家

新庄家に到着。まだ日付は変わっていないだろうけど、辺りはもう真っ暗、車の音もまばらだ。


「到着……っと。さ、正面から入ってくれ」


そう言って、玄関の前を指す新庄。


「言われなくてもそこから入るつもりだけど……ああ、庭とかを見られたくないのか?」

「いや、庭は綺麗にしているから見られても問題ない。──そこ以外の場所からは、入れないようになってんだよ」

「よく分からないけど、今は訊かないことにするよ。じゃ、お邪魔します」


新庄に続き、俺、正太郎、竹部さん、第四能力者、神林さん、橋本──の順で新庄家に入る。

疲れ切ったのか、眠ってしまった正太郎は、俺が背負っている。ずっと風たちに運ばせるのは、風たちに悪い気がしたからだ。



新庄家の畳の敷かれた居間で、新庄から説明を受ける。

居間には俺と新庄しかいない。他の人は、正太郎を寝かせた部屋に集まっている。


「ああ、だから入る場所を指定したのか」


どうやらこの家は、周囲の空間を新庄の『惑星(プラネット)』で何万倍にも膨らませているらしく、新庄が能力を解いて普通の空間に戻さない限り、入れない仕組みになっているらしい。一部分だけ能力を解くこともできるらしく、さっき場所を指定したのはそれが理由だったとのこと。

新庄の両親はまだ罪滅ぼしをしていて、当分帰ってくることはない。だから、新庄は実家(この家)で一人暮らしをしている。外出することが(当たり前だが)あるため、泥棒に入られないように……という意図があったとのことだが、今回はそれが『影だったもの』を侵入させない城壁になってくれたようだ。


「今説明した通り『影だったもの』はこの家には入れない。絶対とは言いきれないが、少なくとも今夜中は安全に過ごせるから安心しろ。じゃ、ここは任せたぞ」

「ああ。……って、え? どこか行くのか?」


立ち上がった新庄をあぐらをかいたまま見上げながら、訊く。

この非常事態に、一体どこに行こうというのか。


「俺たちだけじゃ『元影』には勝てないからな、リアさんとベイリーさん──『たち』を呼んでくるんだよ」


『たち』の言い方が少し変だった気がするが、気のせいだろう。


「なるほど、そういうことなら──任された。気を付けろよ」

「分かってるよ。じゃ、行ってくる」


ふすまを開け、廊下に出て、ふすまが閉じられる。

数秒後、玄関のドアが開く音。出かけていったようだ。


「……正太郎の様子、見に行くか」


立ち上がり、ふすまを開け、廊下に出る。



「今夜中は安心して休めるんだね、分かったよ。じゃあ、各自身体を休めましょう。布団は自由に使ってくれ──って新庄君が言ってくれたし、明日に備えて今夜はぐっすり寝ておきましょう」

「では、正太郎さんは私が──」

「第四能力者は休んでいてください。──と言うよりも、能力者の皆さんは寝てください」


強い口調で、第四能力者と竹部さんと俺にそう告げる。

でも、神林さんだってかなり疲れているはず。なのに──。


「神林さんの言う通りだぜ、五十嵐。俺と神林さんは戦力には全くならない。……力になれないのはマジで悔しいけどな。お前たち能力者が無理をして、明日負けたらどうする? お前だけじゃない、竹部さんや第四能力者、新庄、その他の能力者──全てが殺されるかもしれないんだ。そんな事態になるのは嫌だぜ、お前も嫌だろ?」

「……そうだな、お前の言う通り、絶対に嫌だ」


明日『影だったもの』に勝つことを前提に話す橋本の強い口調に、思わず笑みをこぼす。

そうだ、俺はあいつを倒して、俺の家族だけじゃなく、もっと多くの人を守りたい。


「じゃ、俺たちは寝させてもらうよ。──ありがとな、橋本」

「気にすんな、友達だろ?」

「……ああ、友達だ!」


押し入れから布団を取り出し、抱えて廊下に出て、居間に向かう。



それなりに広い家だが、何部屋も空いているわけじゃない。

この居間以外にゆっくり寝れそうなのは、正太郎を寝かせている部屋くらいだ。

だから、俺と竹部さんと第四能力者、全員同じ部屋で寝ることにした。


「あたしたち──女と同じ部屋で寝るの、嫌じゃない?」

「気にしてませんよ。俺が混ざっちゃって申し訳ないな……とは思ってましたけど、今はそんなことは言ってられませんから」

「私は少しワクワクしていますよ、他人と布団を並べて一緒に寝るのは、随分久しぶりですから」


本当に嬉しそうな笑顔の第四能力者。

俺には想像もできないような苦しい思いをしてきたから、こんな何気ない出来事を楽しいと思うのだろう。


「なら、よかったです。では、電気消しますね」

「はいよー、おやすみ、二人とも」

「おやすみなさい、竹部さん、五十嵐さん」

「はい。……って、もう?」


紐を引っ張り電気を消して、10秒も経たずに二人の寝息が聞こえてきた。

竹部さんも第四能力者も一日中能力を使っていたから、かなり疲れていたのだろう。


「よいしょ、っと……ふわぁ」


布団に入り、掛布団を掛けると同時、かなり大きめのあくびが出た。ずっと走っていたから、俺も疲れていたようだ。

走っていた時は第四能力者や風たちに手伝ってもらっていたけど、それでも疲労は溜まっていたのか、なんて考えながら、俺は、眠りに……──。

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