33話 新庄家へ
るりさんが、やられた。
かんたさんも、ころされた。
るーくさんも、ころされた。
『嘘──だろ……?』
しんじょうの、つぶやきがきこえる。
おれのうしろで、どさっ、とたおれるようなおとがした。
『正太郎!? しっかりしなさい、2人とも!』
ああ、もう。
どうにでもなれ。
「うああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁああああ!!!!」
ぜんぶを、つかいきろう。
おれのなかの、ぜんぶを。
◆◆◆
「正太郎! 正太郎ってば!」
「おい五十嵐! 正気に戻れ! 五十嵐!」
瑠璃さんが死んだ瞬間を見た正太郎と五十嵐は、地面に崩れ落ちた。
2人とも、精神が崩壊してしまったのだろう。
さすがに、『国土回復』でもどうしようもなかったようだ。
ああ、他人の心に干渉できる能力があれば、五十嵐を元に戻すことができたのに……。
(ホントよ、今はあたしの能力なんて、ちっとも使えないわ)
「だよな、竹部さん。ちくしょう……俺らの能力じゃ、どうしようもないのか……? ──ん?」
「へ?」
「え?」
俺今、竹部さんと話していたよな。
いやでも、正太郎を必死に正気に戻そうとしている竹部さんは、少し離れた場所にいる。
大声が聞こえたわけじゃない。あくまで普通の声量の声と、話していたんだが。
──もしかして。
(竹部さん、この声、聞こえるか)
「っ!? き、聞こえる……」
「──ビンゴ。この力は……『円滑』だよな、間違いなく」
さっき五十嵐が叫んだ時、風圧──というか、何かの『圧力』を五十嵐から感じた。
これが五十嵐の本気なのだろうか。
「ということは、だ」
こんなこともできるのだろうか。
確か五十嵐は、こう呼んでいた。
「風たち! 俺の声に応えてくれ!」
「新庄、何を言ってんのよ、あんた」
「多分、俺の勘が正しければ……」
そろそろ、だろうか。
『──まさか、私たちの声が聞こえるのですか?』
「っ! あ、ああ、あんた──たちが、五十嵐が話していた『風』なんだな」
『ええ、そうです。しかし、なぜ私たちの声が……』
「五十嵐の能力だと思うぜ。……っと、そんなことを話している場合じゃなかった。『影だったもの』を吹き飛ばしてもらえるか、俺はその隙に、五十嵐たちを正気に戻さなくちゃいけないんでな。──って、おわ!?」
突然、空から土が降ってきた。──高速で。
「こっちは話してんだ!邪魔すんな、『元影』!」
「誰と話しているのかは知らないが、死んでもらおう。『最終』……っ!?」
『吹き飛びなさい!』
……圧巻の一言。
竜巻が、『影だったもの』を上空へと吹き飛ばした。
──のだけど。
「こんな程度の竜巻に、邪魔されてたまるか!」
『ぐっ……』
「……おいおい、嘘だろ……?」
『影だったもの』が地面に降りてくるにつれ、竜巻の規模はどんどん小さくなっていった。
『すみません、限界です……』
「そうと決まったわけじゃないぜ。──『惑星』!」
対象は、風たち。
規模は──倍!
「な、何だと!?」
「俺もいることを忘れるなよ、『元影』!」
とてつもない規模になった竜巻は、『影だったもの』をはるか上空へと吹き飛ばした。
『……ふひゅう。私たちの力が倍になったような気がしたのですが、もしかして』
「ああ、俺の能力だ。俺も能力者なんだ、よろしく頼むぜ」
『はい、よろしくお願いします。……そろそろ、五十嵐さんたちを元に戻した方がよろしいのでは?』
「おっと、そうだった。ありがとな、風たち!」
感謝の意を伝えると、それに応えるように、ぴゅうっ、と一回強く吹き、そして風は消えた。
面白い体験をさせてもらった。
さて、と。
「五十嵐に向けて……『円滑』!」
五十嵐に対し、五十嵐の能力を使う。
1秒ほどで、俺と五十嵐の心が『繋がった』感覚がした。
他人の能力を使うなんて体験初めてだから、少し戸惑いつつ、五十嵐の心に話しかける。
『大丈夫か、五十嵐』
『……しん、じょう』
返答を確認。
あとは──この一言を言えば、正気を取り戻すだろう。
『お前が守りたいものは、なんだ?』
『まもりたいもの? おれは、おれは……俺は』
五十嵐の目に、生気が戻る。
一度目を瞑り、開いて、俺の目をじっと見つつ。
「俺は、俺の家族を守る……あいつを倒して!」
よし、もう大丈夫だな。
「やっと戻ってきたな、五十嵐」
「迷惑かけちまったな。……で、ここからどうする?」
既に、この後行くところは決まっている。
俺の中で勝手に決めたことだが。
「俺の家に行く。そこで、正太郎を休ませる」
「あいつに追いつかれないか?」
『影だったもの』を睨みつけながら、五十嵐は当然の疑問を呟く。
「大丈夫だ。理由は──行けば分かるから、今は逃げるぞ」
「ああ、分かった。正太郎は風に運んでもらう。そういうことでいいですか、風たち?」
『分かりました。早速運びます』
五十嵐の言葉と同時に、正太郎の身体が風によって宙に浮く。
「……ということで、全員、俺の家まで逃げますよ」
「ええ、分かったわ」
──と、竹部洋子さん。
「分かりました」
──と、『熱と冷』で『影だったもの』を押さえつけている第四能力者。
不規則な風によって、『影だったもの』は未だに押さえつけられている。
橋本と神林さんも、話を理解しているようだ。
「よし、出発!」
俺、五十嵐、竹部さん、第四能力者、神林さん、橋本。そして──未だに正気を取り戻さない、正太郎。
来た時よりも一人減った7人で、俺の家へと走って向かう。




