表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第十能力者『円滑』  作者: イノタックス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/41

22話 第十二能力者

色々とあった夏休みが終わり、授業が始まり、少し経った9月半ば。

古典の授業を受け、難しさからの退屈さに眠りそうになっていたが、突如開いたドアの音で眠気は吹っ飛んだ。

黒板側のドアから教室に駆け込んできたのは、クラスの担任。


「い、五十嵐はいるか!?」

「……どうしたんですか?」


クラスメートの視線を無視しつつ、ドアの近くで息を切らしている担任のところへ行く。


「の、能力者、が……」

「能力者って……まさか、襲撃でもしてきたんですか?」


当てるつもりで言ったわけではなかったのだが。


「そうだ、能力者が、攻めてきた」

「あ、そうですか……」


当たってしまった。


「多分、というか間違いなく、狙いは俺だと思いますから、先生が恐れる必要はないですよ」

「そ、そうだな……」


はぁ……授業中だけど、仕方ないか。


「その能力者は、どこにいるんですか?」

「校庭で、サッカーボールを使って、遊んでいる」

「……へ?」


遊んでいる?


「よく分かりませんが……行ってみます。案内してもらえますか?」

「あ、ああ、分かった」


担任に続いて、俺も教室を出る。


◆◆◆


「え、あれか?」


確かに、サッカーボールを、ゴールに向かって蹴って遊んでいる人は見つけた。

──人と言うより、『子供』と言った方がニュアンス的には正しいと思うが。

物静かそうな、男の子だ。

とりあえず、近くに行ってみるか。


「ね、ここは高校だから、今は君、来ちゃいけないと思うんだけど……」

「…………」


無視された。

知らない人とは話さないように、という教育を受けているのだろうか。

それはそれで正しいが、限度があると思う。


「見たところ、小学生っぽいけど……今日は学校じゃないの?」

「……あんなところ、つまんない」


つまらない……勉強が、だろうか?


「何がつまらないの?」

「教師の態度、児童の勉強への意思、モンスターペアレント」

「……そ、そうかい」


な、なんか、小学生とは思えない話し方だ。

『モンスターペアレント』なんて言葉も知っているのか、今の小学生は進んでいるんだなあ。


「で、つまんなくなったから、高校に来たの?」

「それもある」

「じゃあ、一番の理由は?」

「……あなた」


俺を指して、『あなた』と言ってきた。

どう考えても、俺のことを言っているのだろう。


「俺はそこまで有名じゃないと思うけど、俺に何か……」

「倒そうと思って!!」

「うわっ!?」


目の前の小学生は、懐から出したカッターナイフを、俺の首元に突き刺そうとしてきた。

間一髪で、なんとか避けられたからよかったものの、もう少しで殺されるところだった。


「何をするんだ、危ないだろ!」

「え、五十嵐さん、おれと同じ、能力者なんでしょ?これくらい避けられると思ったんだけど……」

「──!」


今の言葉が本当だとしたら、この子はやはり──能力者か。


「子供と戦うのは、さすがに気が引けるから……引き分けってことにしない?」

「いやだ、おれは絶対にあなたを倒す」

「そう言われても……怪我をしたくはないでしょ?」


この言葉で、諦めてくれると思うけど……。


「おれには関係ないね、さ、戦いを始めよう!」

「関係ないって、どういう……うおっと!」


目を離した一瞬で、子供は俺の足元に来て、右足のすねを切りつけようとしていた。

これも間一髪、なんとか避けられたが、本当に危なかった。


──なぜ、一瞬で俺の足元まで来られた?


俺は、数秒間目を離したわけじゃない。

ほんの『一瞬』だ。


「遅いよ」

「危なっ!」


また足元で、今度は左足のすねを切りつけようとしてきた。

なぜだ、なぜここまで早く動ける?


──まあ、そういう能力だから、なんだろうけど。


◆◆◆


「え……正太郎が?」

「はい。予想は出来ていたのではないですか?」


超能力研究本部、神林颯の研究室。

神林颯と水面瑠璃が、テーブルを挟んでソファーに座っていた。


「予想はしていたけど、あの子も能力者に……」

「両親が能力者ですから、なるべくしてなったと言えるでしょう。……で、ここからが本題です」

「え、今のが『伝えなければいけないこと』じゃないの?」

「今のは前置きですよ」


そう言って神林颯は、ホッチキスで綴じられた書類をテーブルの上に置いた。

タイトルには、こう書かれていた。


「『神と言う存在』──神?」


水面瑠璃の頭には、疑問しか浮かばなかった。

『神』という単語こそ知っているが、その存在について書かれた書類が目の前に開かれている状況を、上手く整理できなかったのだ。


「ええ、神、です。意味は分かりますか?」

「国によって意味は変わると思うわよ?」

「では、日本でよく使われている意味でお願いします」


水面瑠璃は、書類を見ながら少し考え、答える。


「人々の上に立つ存在、ってとこかしら」

「その解釈で、大丈夫でしょう。では、本題に入ります」


神林颯は、書類の1枚目をめくった。


「この書類には『神』が誕生した経緯と、その『神』の現在についての調査結果が書かれています」

「え、ちょっと待って?」


水面瑠璃は不思議に思い、神林颯に訊く。


「まさか、神は実在したって言うつもり?」

「ええ、そうですよ。能力者が存在するんですから、神がいたっておかしくはないでしょう?」

「そ、それを言われると……」


神林颯は、もう1枚紙をめくった。


「ここから、『神』の生まれた経緯について書いてあります」



この世界は元々、ある1つの存在によって治められていた。

人々はその存在を知らなかった。

力と知能を身につけた人々は、『神』という存在を作り、信仰し始めた。

日照りの夏には雨を、寒波の冬には太陽を、『神』に求めた。


信仰によって生まれた『神』という存在は、冒頭に記した『ある1つの存在』に代わって、この世界を治めはじめた。

『ある1つの存在』は、それを承認していた。


時が経ち、『神』を信仰する人が少なくなり、次第に『神』は消えていった。

『神』が完全に消えた時、その力は、人間に渡った。


そして、『超能力者』は生まれた。



水面瑠璃は、開いたページを読み終わり、ソファーの背もたれに寄り掛かった。


「信じ難い話ね」

「かなり信憑性の高い調査結果なので、信じてもらえると嬉しいのですが」

「『信憑性の高い』って……どういうこと?」


水面瑠璃は、疑問に思った。

こんな現実味に欠けた調査結果に、信憑性なんてこれっぽっちもないと思っていたからだ。


「ある方に協力してもらったんですよ」

「歴史学者とか、考古学者とかに協力してもらったのかしら?」

「正解です。歴史学者で、考古学者でもある、南アフリカ出身の方です」

「南アフリカ?」


神林颯は、書類の一番後ろのページを水面瑠璃に見せた。

そこには、調査に関わった人物の名前が載っていた。


「……なるほど、そういうことね」

「はい。『第四能力者』の彼女自ら、参加すると言ってくださったんです。『能力者のルーツが知りたい』と言っていましたね」

「それで、結果『神』に結びついた、と」

「そういうことです」


神林颯は、『神』に関する調査結果の書かれているページを開き、水面瑠璃に見せる。


「まだページがあるのね、ここまでで調査結果は終わりのような気がするけど」

「ええ、このページで『神』に関する調査結果は終わっています。この後のページには、確実な情報ではなく、『根拠の少ない』情報が書かれています。なので、半信半疑を心掛けて読んでくださると嬉しいです」

「分かったわ。で、一体何が書かれているのかしら?」


水面瑠璃が、1枚紙をめくる。

数秒後、──水面瑠璃の表情が、暗転する。


「これは……信じたくないわね」

「確実なことではないので、まだ信じてもらわなくても大丈夫です。ですが、多少は根拠のある情報である、ということもお忘れなく」

「……これは、貫太には?」

「まだ伝えていません」


神林颯は、水面瑠璃の目を見て、話す。


「貫太さんには、後日僕から伝えます。今日は仕事があるということでしたから、仕方ないとは思いますが……今後は仕事よりもこちらの用事を優先してもらえると助かります」

「ええ、こんなことがあったんだから……そうするわ」

「ご協力、感謝します」


神林颯は立ち上がり、ドアを開けた。

水面瑠璃も立って、研究室から廊下に出た。


「それじゃ、私は橋前高校に行ってみるわ」

「正太郎君は五十嵐君のところへ向かったんですか?」

「多分、ね。あの子に五十嵐君について話したことがあったから、橋前高校に行ってると思うわ。それじゃ、またね」

「はい、お気をつけて」


水面瑠璃が行ったことを確認して、神林颯は研究室に入り、ドアを閉めた。


「瑠璃さん……どうか、お気をつけて」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ