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第十能力者『円滑』  作者: イノタックス


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20/41

20話 2人の能力者

駐車場に戻る途中。


「──そうですか、分かりました」


神林さんが、誰かと電話で話していた。

なんか、深刻そうな顔をしている。

電話が終わったらしいので、訊いてみる。


「神林さん、誰と話していたんですか?」

「研究本部にいる研究員だよ。どうやら、新しく能力者が見つかったみたいでね、その件について少し話していたのさ」

「新しい能力者、ですか……」


ってことは、俺は先輩になるのか。

なんか、ドキドキするな。


「でも、それならなんで深刻そうな顔をしていたんですか?」

「実はその能力者、以前から他の能力者と知り合いだったみたいでね。知り合いの能力者と協力して、3時間前に研究本部を抜け出しちゃったみたいなんだ」

「えっと……抜け出すだけなら、問題はないように思うんですが」


また後日、検査すればいいだけだろう。


「問題大有りなのさ。その人たち、『能力者の頂上を取る』なんて風に言っていたらしいんだ。もしかしたら、こっちに来ているかもしれないんだよ」

「そんなまさか、たった3時間でここまで来れるはず……が……」


駐車場に着いた俺の目に飛び込んできたのは。


車の前に立ちはだかる、2人の女性の姿だった。


◆◆◆


「ハーイ!能力者の皆さん、ハロー!」

「へ?……は、ハロー」


金髪ストレートの髪型の女性は、やけにテンションが高い。


「初めまして、皆さん。十一番目に能力者になりました、ベイリー・パウエルと申します」


もう1人の、茶髪でパーマの女性は、かなり日本語が上手い。


「あ、ワタシの名前はリア・パーカーです!ヨロシクね!」

「ど、ども……」


リアさんの方は声も大きいので、押され気味になる。


「十一番目──ということは、あなたが『(ステーション)』の能力者なんですね?」

「ええ、そうですよ」


神林さんの問いに、ベイリーさんが答える。

ベイリーさんの能力は『(ステーション)』と言うのか。

電車を動かせたりするのかな?


「いいえ、電車は動かせませんよ」

「ああ、そうなんですか……え?」


あれ? 俺、今喋ったっけ?

もしかして、読心術の持ち主なのか?


「ええ、そうですよ。『(ステーション)』なんてややこしい名前を付けられてしまいましたが、ただの読心術なんですよ、私の能力は」

「へえ、そうなんですか」


俺も心を読むことはできるから、仲良くなれるかもしれないな。


「へえ、あなたも読心術が使えるんですか」

「真似事ですけどね。よく使う能力は、別にありますから」

「なるほど、『人と物とを繋ぐ能力』ですか」


俺の心の中、ダダ漏れである。


「面白い能力ですね。──早めに潰しておきたいですね!」

「え!?」


ベイリーさんが、俺に向かって殴りかかってくる。

これくらいなら、簡単に避けられ──


「『(ステーション)』」

「──っ!?」


景色が、一瞬だけ真っ白になった。

次の瞬間。


「ぐはっ……」


鳩尾を殴られていた。

マズイ、この人本気だ。


「五十嵐!? ──ベイリーさん、何をやってんだ、あんた!」

「新庄……お前は、リアさんの方に集中しろ」

「は? 何を言って……って、おわっ!」


新庄の身体が、浮かび上がる。

風たちの仕業ではない。

──リアさんの能力だ。


「アハハ!吹き飛ばすのって楽しいネ!」

「あんたら……俺らを倒すつもりか?」

「イエス!あなた達を倒して、能力者の頂上を取ります!」


風たちの言っていた、『空気を操る能力者』ってのは、リアさんのことらしい。


「五十嵐!新庄! ──リアさんとベイリーさん、覚悟はいいわね?」

「やめろ、竹部さん。ここは俺と五十嵐に任せてもらえないか?」

「何言ってるの!? あんたを吹き飛ばした、リアって人は第三能力者なのよ!?勝てるわけないわ、やめなさ──」

「勝てるわけない、と言いましたか?」


立ち上がって、ベイリーさんを真っ直ぐに見て、構える。


「俺が何のために強化合宿に参加したか、竹部さんは知っているでしょう?」

「それは……そうだけど」

「安心してください、リアさんは新庄に任せるので、怪我はしないと思いますよ」

「五十嵐、さらっと酷いことを言ったな、おい」


新庄のツッコミは無視して、話を続ける。


「竹部さんたちは離れていてください。……そういうことでいいな、新庄?」

「どういうことかイマイチ分からねえが……ま、いいぜ!」


新庄も、リアさんに向かって構える。

竹部さんたちは、少し離れた場所に行った。


「後輩として、しっかり下剋上をするぜ、リアさんよぉ!」

「先輩として、色々と教えてあげますよ、ベイリーさん!」


俺と新庄が、一斉に反対方向に走り出す。


「マテ、新庄!」

「待ちなさい、五十嵐さん!」


リアさんが新庄を、ベイリーさんが俺を追ってくる。


◆◆◆


グラウンドの隅まで、ベイリーさんを連れてくることができた。

さて、どうやって戦おうか。


「『どうやって戦おうか』なんて考えても無駄だと思いますよ」

「無駄? なぜですか?」


ベイリーさんは、腕を組んで余裕そうに語る。


「あなたはすでに分かっているはずです。私の能力が『読心術』の他にもあるということを」

「──さっきの、景色が真っ白になったやつですか」


景色と言うより、視界と言った方が正しいだろう。


「そうです。こんな風に!」

「──!」


また、景色が真っ白になった。

マズイ、何も見えない。


「おや、避けないのですか?」

「え? がはっ……」


腹に衝撃。殴られたらしい。

さっきと違って、今度はずっと見えないままだから、何が起きているのか分からない。

こんな力を持っているのか……思っていたより、強いな。


「視界をジャックする技は、私の能力のおまけの力なんですけどね」

「こんなに強いのに、おまけの力なんですか。もう何も言えないですよ……ぐはっ」


また、腹を殴られたみたいだ。

まだ視界は真っ白のまま。

どうする、どうすれば見える? ──そうだ!


「『円滑(スムーズ)』!風たちお願いします!」

『分かりました。相手は後ろにいます、前に走ってください』


言われた通り、前に5歩ほど走る。


「な、なぜ避けられるのですか!」


風たちの言った通り、後ろから声がした。

──お、視界が元に戻った。

振り向くと、呆気にとられているベイリーさんの顔があった。


「心を読めば、分かるんじゃないですかね?」

「言われなくても、読んでますよ!なのに、読めない……どんな細工をしたのですか、五十嵐さん!」

「細工なんて、1つしかしていないですよ?」


そう、たった1つの細工で、ベイリーさんは俺の心を読めなくなった。


「俺も、あなたの心を読もうとしているんですよ」


相手の心を読もうとしているのを、読もうとしているのを、読もうとしている……という無限ループを作り出したのだ。

能力のことには詳しくないから、勘でやったことだけど……成功してよかった。


「そ、そんな簡単なことで、私の能力を使えなくしたって言うんですか!?」

「ええ、そうですよ。……さあ、どうしますか? 降参するか、それとも──俺に倒されるか」

「わ、私の能力は、読心術だけじゃない!」


また、視界が真っ白になる。


「これで、私はどこにいるか分からないでしょう!」

「また後ろに回りましたね、ベイリーさん?」

「っ!? な、なんで……」

「先輩として、特別に教えてあげましょうかね」


振り向いて、ベイリーさんがいるであろうところに向かって歩き出す。


「どんな状況か、風たちから聞いているだけですよ」

「か、風……『人と物とを繋ぐ能力』を使ったんですか!」

「正解です。その能力で、こんなこともできるんですよ」


目の前に、俺の身長と同じサイズの竜巻を作ってもらう。

見えないけど、風が顔に当たっているので、サイズはなんとなく分かる。


「り、リアの能力まで使えるの!?」

「真似事ですけどね。あっちは『空気を操る能力』なので、若干違うんですよね」

「──はあ」


あれ、視界が元に戻った。


「私の負け、ですね」

「あれ、案外あっさりと負けを認めるんですね」

「そりゃあ、私の2つの能力の、どちらを使っても敵わないんですからね……認めますよ」

「そ、そうですか」


何だろう、拍子抜けというか、なんというか。


「あ、1つ教えてもらえますかね」

「なんでしょうか? 負けなら認めましたが……」

「そうじゃなくて、ベイリーさんの能力のことです。読心術と、もう一つは何なんですか?」

「……なんだ、そんなことでしたか」


そんなこと、って言われた。

俺的には、とても興味があるのだが。


「もう一つの能力は、『自分のイメージを相手に伝える能力』です。読心術とあわせて『(ステーション)』なんです」

「あ、視界を操る能力じゃなかったんだ……」


真っ白な景色をイメージして、それを相手に伝えていただけなのか。


「そういえば、たったの3時間で、どうやって研究本部からここまで来たんですか?電車と飛行機を使ってもそれくらいかかると思うんですけど……」

「リアの能力で、一緒に飛んできました」


そんなこともできるのか、『空気を操る能力』。


「新庄さんは、リアには勝てませんよ」

「なんでそう思うんですか?」

「新庄さんと違って、リアは初期に発見された能力者です。当然、リアの方が強いに決まっています」


胸を張って、自慢げにベイリーさんは語る。


「当然、ですか」

「なんですか、にやけたりして」

「いや、分かっていないな、と思いましてね」

「分かっていない……? リアの強さなら、十分に分かっていますが」


そこじゃないんだな。


「新庄は、強いですよ。俺の何倍も、ね」


強化合宿の手合わせとは訳が違う。

これは、本気の戦いだ。


あいつは、絶対に勝つ。

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