表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第十能力者『円滑』  作者: イノタックス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/41

19話 再戦

10分間の休憩中、自販機の前にて。


「あの、すみません」

「はい?って、あの時の……」


食堂で会った高校生が、話しかけてきた。


「能力者、なんですよね……?」

「ええ、そうですよ。第十能力者です」


自分のことを『第十能力者』なんて風に紹介したことはないので、違和感バリバリである。


「第十──ってことは、一番最近に発見された方ですよね」

「そうですね、新人ですよ」


まだ4か月くらいしか能力者をやっていないから、新人ってことでいいだろう。


「あの、これから戦う方は、強いんでしょうか?」

「かなり強いですよ。ま、見ていれば分かります。そろそろ始まりますので、俺はこれで」

「あ、手合わせ、頑張ってください!」

「ありがとうございます、頑張ります」


グラウンドへ向かう。


◆◆◆


グラウンドの中心に、俺と新庄が向かい合って立つ。


「精一杯遊ぼうぜ、五十嵐!」

「遊びじゃなくて手合わせだって……ま、いいか。分かったよ、遊ぶか!」


神林さんの『始め』という合図で、俺と新庄は同時に構える。


「早速行くぜ、『惑星(プラネット)』!」

「ん? ──おっと!」


俺の後ろに、分身の新庄が現れる。

ま、これくらいなら簡単に避けられ──


「まだだ、『惑星(プラネット)』!」

「なっ!」


避けようとした俺の身体を、更に現れた分身の新庄が拘束する。

分身の新庄が、俺の首に手を伸ばしてくる。

多分、俺の首にあいつの手が触れた瞬間、俺の負けが決定するのだろう。


「そうはいかないよ、『円滑(スムーズ)』、風たち、お願いします!」

「うおっ!」


新庄本人とその分身2体が、俺を中心にした風の渦に巻き込まれて、吹き飛んで行った。

分身は消えたみたいだ。

グラウンドの端の方まで飛んで行ったので、風たちと話す時間はなんとか確保できた。


「風たち、頼みがあるんですが、いいですか?」

『何でしょうか?』

「えっとですね……」


ちょっとした作戦を、風たちに伝える。


◆◆◆


「かなり遠くまで飛ばされたぜ……油断したな」


新庄が走って俺の近くまで戻ってきた。


「ん、五十嵐、右手に持っているのはなんだ?」

「見れば分かるだろう?葉っぱだよ」


道に落ちていた葉っぱを、前もって拾っておいたのだ。

ルークさんがペットボトルを持っていたのを見て、これもセーフだと思ったからだ。


「葉っぱ一枚で何ができるってんだ?」

「色々……はできないけど、ちょっとしたことならできるさ。風たち、頼みます」


俺の左手を中心に、超ミニサイズの竜巻が発生する。


「へえ、そんなことができるのか」

「これだけじゃないぜ。この竜巻に葉っぱを入れると……ほら」


葉っぱが左手の上でくるくると回転しているように見える。


「面白い手品だな、で、それで終わりか?」

「そんなわけないだろう? ──最後に、こうするのさ!」


竜巻の回転数をさらに上げて、葉っぱは平べったくて丸い、緑の塊になった。


「手裏剣みたいだろう?」

「形はメンコみたいだぜ」

「でも、殺傷力はバッチリだ……よ!」


回転する葉っぱを、竜巻ごと新庄に投げつける。


「遅いね、簡単に避けられるぜ!」

「避けていいのか?」

「は?何を言って──って、え?」


新庄はうなじに違和感を覚えて、手で触る。

何かを掴んで、目の前で手を広げて、新庄は驚いた。


「な、なんで葉っぱが俺の背中に──」

「おいおい、いつ俺が『葉っぱは一枚だけだ』って言った?」


新庄が避けた方向に、あらかじめもう1つ、葉っぱを巻き込んだ小さな竜巻を発生させていたのだ。

もちろん、当たっても怪我をしない程度の回転にしておいたが。


「……俺が避ける方向を、コントロールしたってのか」

「そういうことだ。上手くいってよかったぜ……」


気付かれていたら、俺の負けは確定していたからな。


「──俺の負けだ!ああ、こんなにあっさりと負けちまうなんてな」

「殺し合いだったら、俺が負けていたと思うぜ。新庄、お前本気を出していなかっただろ?」


グラウンドの隅まで吹き飛ばされたときでも、俺の周囲に分身を出現させることはできたと思う。


「本気を出したら、俺か五十嵐、どちらかが死ぬからな。それはやめておいたぜ」

「助かるよ。……神林さん」

「ああ、分かっている。──この手合わせ、五十嵐君の勝ち!」


再び、歓声。


◆◆◆


「すごいじゃない、五十嵐!」

「いえいえ、まぐれですよ」


新庄の、手加減のし過ぎもあって、なんとか勝てたんだ。


「俺の場合、自分の能力を使うというより、誰かに手助けしてもらう感じですから。風たちが俺の意図を完璧に読んでくれたおかげで勝てたんです」

「風とも話せるようになったんだっけ。ほんと、楽しそうな能力ね。風ってどんな声なの?」

「優しくて、温かい声ですね。色々なモノと会話できるのは、確かに楽しいですよ」


ゲームの中に入れる能力も、十分楽しそうだと思う。


「五十嵐クン、キミ、風以外とも会話できるのかい?」

「はい、機械の声も聞けますよ」

「オウ!そんな能力があったなんて……キミとも戦ってみたいね!」

「あ、あはは……」


俺は遠慮したいです。マジで。


「ルークさん、明日は俺と戦うんだぜ?忘れないでほしいね」

「分かっているよ。キミは純粋に強そうだからね、キミと戦うのも楽しみさ!」


人格が治っても、好戦的なことには変わりないみたいだな、新庄。


「神林さん、今日はこれで終わりですか?」

「うん、そうだよ。グラウンドを野球部に引き渡して、僕らはホテルに戻ろうか」

「分かりました」


こうして、2日目も無事に終わった。

明日は午前中に手合わせをするだけで、俺は休んでいればいいから、だいぶ気が楽になった。


◆◆◆


翌日、午前10時。

最終日なので、車の中には大きな荷物が置いてある。

買った物も入っているので、かなり大きくなってしまった。

今は、トレーニングセンターの体育館に来ている。


「新庄もルークさんも、頑張ってください!」

「2人とも、頑張れ~」


新庄とルークさんが、体育館の中心に立っている。

野球部と卓球部が来るのは午後からなので、今日はほぼ貸切状態だ。

俺たち観客は、体育館の2階から見ている。


研究員の『始め』の合図で、2人が構える。

ルークさん、早速ペットボトルを取り出して、『海洋(オーシャン)』と呟いた。

水が、浮かび上がる。


「早速仕掛けたわね、第一能力者」

「さて、新庄はどう出るかな……?」


新庄はポケットからピンポン玉を取り出し、ルークさんに向かって投げて、『惑星(プラネット)』と叫んだ。


「──おお」


投げられたピンポン玉は、空中で数十個に増えた。

そのまま、ルークさんに飛んでいき、ぶつかるかと思われたが。


「すごいな……」


ルークさん、水の盾でそれを弾いた。

よく見ると、盾の形になった水が、地面に垂直に高速回転している。


「流水、ね」

「ただの水の塊じゃ止められないだろうが、あれなら確かに止められるな。考えたな、第一能力者」


竹部さんと貫太さんの説明のおかげで、なんとなく分かった。

ルークさん、本当に自在に水を操れるんだな。


「あ、ルークさん、ピンポン玉を拾った……」


そして、左の手のひらに水の渦を作った。

その渦の中に、ピンポン玉を入れて、さらに渦の回転数を上げた。


「なあ、あれって五十嵐が昨日やったことだよな」

「あんなに簡単に真似できるなんて……さすがルークさん、ですね」


ルークさん、ピンポン玉の入った水の渦を、新庄に投げつける。

新庄は避けたが、案の定、避けた先にもピンポン玉の入った水の渦。

これはまた、新庄の負けだろうか。


「──お、動いた」


新庄、今度は分身を自分の傍に出現させて、その分身に弾き飛ばしてもらって、もう一つの水の渦から逃れた。

強引な手だが、新庄らしい。

そして、油断していたルークさんの後ろに、分身の新庄が出現する。


「あ……」


次の瞬間。

ルークさんの首に後ろから、新庄の手が触れた。


◆◆◆


「新庄クン、中々面白い避け方をしたね!」

「ああするしか方法がなかったからな。五十嵐との戦いで学んだんだよ」


楽しそうに話している、ルークさんと新庄のもとへ行く。


「面白い戦いでした。ルークさん、本気で戦ったらとてつもなく強そうですね」

「そう言ってもらえると、嬉しいね!」


昨日と今日のルークさんは、知的かつ大胆な戦い方をしていた。

そういう戦い方をする人が、敵にしたときに一番厄介だろう。


「新庄も凄かったわよ、あの避け方は想像できなかったわ。分身に突き飛ばしてもらって避けるなんてね」

「強引だけど、新庄らしい戦い方だと思うよ」

「褒め言葉として受け取っておくぜ。ほら、最後は第二──貫太さんと竹部さんの番だぜ」


そうだ、次で最後なんだ。


「よっしゃ、今度こそ勝ってみせるぜ!」

「ただじゃ負けないわよー!」


竹部さん、最初っから負ける気なのか。

失礼だが、俺も勝てるとは思っていないので、何も言わないでおく。


◆◆◆


体育館の外の通路で、竹部さんと貫太さんが向かい合って立つ。

地面は土なので、貫太さんの方は問題ないが、竹部さんにはかなり不利だと思う。

俺たち観客は、体育館の中から見ている。


研究員の合図で、貫太さんが構える。

竹部さんも、遅れて構える。


「貫太さん、早速動いたな」


貫太さんの周りに、土の塊が浮かんで、竹部さんに飛んでいく。

竹部さんは、かろうじて避けている。

やっぱり竹部さんの方は、戦い慣れていない感じがある。


「あ、勝負あったかな?」


竹部さんの後ろの地面から、土の拳が出てくる。

竹部さんの首に触れるかと思われた、その瞬間。


「た、竹部さんが消えた!?」

「違うな、下だぜ」


新庄に言われて、竹部さんが立っていた地面を見る。

そこには、ゲーム機が落ちていた。

そして、そのゲーム機から竹部さんが出てきた。


「ゲーム機の中に入って、土の拳を避けたのか……」

「中々考えた戦い方をするじゃねえか」


戦闘向きの能力でない分、頭を使って戦わなければ勝てないものな。


「あれ、竹部さん、自棄になったのかな?」


竹部さんが、ゲーム機を持って貫太さんに突進していく。

当然、貫太さんはそれを簡単に避ける。

──が。


「あ、貫太さんの後ろに──」


貫太さんが避けた先の地面に、ゲーム機が落ちていた。

よく見ると、竹部さんの手にはゲーム機はなかった。


「あれ、また消えた?」


貫太さんの目の前から、竹部さんの姿が消える。

そして、貫太さんの足元のゲーム機から、竹部さんが出てくる。

竹部さんの手が、貫太さんの首に触れそうになったが。


「……すげえな」


貫太さんが振り返って、竹部さんの腕を掴み、後ろに回って竹部さんの首に触れた。

──貫太さんの勝ちだ。


◆◆◆


「お疲れ様です、貫太さん、竹部さん」

「やっぱ強かったわ、第二能力者」

「竹部さんも、トリッキーな戦い方で、最後勝てそうだったじゃないですか」

「それすらも読まれていたっぽいけどね……」


まあ、それは仕方ないだろう。

貫太さんの方が、場数を踏んでいるだろうし。


「皆さん、これで強化合宿は終わりになります」

「ルークさんとは、ここで別れるんですか?」

「いや、ボクは研究本部に行くから、キミ達と一緒の飛行機に乗っていくよ」

「あ、そうなんですか」


よかった、話したいことがまだまだあったんだ。


「では、荷物を持って車に集合してください」


神林さんたち研究員に続いて、歩いて行く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ