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剣と魔法の異世界ライフ  作者: 春夏秋冬
ユースタンス一家
8/18

別れ

俺の三歳の誕生日に、シャルが死んだ。

その事実は、俺こと、ロイド・ユースタンスと、その父親、ミスタ・ユースタンスの心に癒えることの無い傷跡を残した。


シャルが死んだ次の日。

ユースタンス家では、家族会議が開かれることになった。


二人は今、庭にある簡易的な椅子に座り、机をはさんで向かい合っていた。

家の中で行わないのは、臭いが酷いからだ。

人の焼けた臭いが。


最初に口を開いたのは、ミスタだった。

「ロイド、大丈夫か?」

ミスタは心配そうに尋ねるが、それはこっちの台詞でもある。

ミスタの目は赤く腫れ上がっており、泣いた事が見てとれる。

目の下には隈があり、昨夜一睡もしてない事が伺える。

「大丈夫です。」

俺は機械的に答える。

このやり取りは、昨日から何十回もやっており、もう答えは分かっている。

だが、それでしか会話が続かないのは、今からする話が切り出しにくいからだ。


しばらくの沈黙が訪れる。

この沈黙も、昨日から何十度か続いてる。


しばらくして、ミスタが口を開く。

だが、言葉が出ない。

口が開きかけては閉じ、また開きかけたら閉じる。

それを何度か繰り返した後、ミスタが決心したように口を開いた。

「俺たちはお母さんを失い、家も失った。家はまあ…住めない事は無いが、あの様だ。ここはお母さんの墓にしようと思う。」

ミスタはできるかぎり優しい声で話してくる。

「はい… 僕もそれが… いいと思う…」

もう、子供の振りをする余裕も無い。

一人称は僕であるが、喋り方は前世とほぼ同じで、子供として限りなく怪しい。

ミスタはそれを気づいているのかいないのか、何も言わない。


また、沈黙が訪れた。

今度は、先程よりもずっと長く。


そしてまた、ミスタが口を開く。

「色々な問題が山済みだが、ロイドはとりあえず、修道院に預けようと思う。」

「!!!!!!!!」

唐突に告げられた事実に俺は驚きを隠せない。

この世界の事はよく分からないが、俺は一つの事を確信した。

ミスタとは離れ離れになる。

「修道院には、お前と同じくらいのガキが大勢いてな。きっと友達も出来る。」

ミスタに一言言おうと思って、俺はミスタの顔を見たが、とても辛そうな顔をしていた。

それでも俺は、一縷の望みをかけて、ミスタに尋ねる。

「お父さんも… そこに行くんですよね?」

俺に尋ねられた時、ミスタは一瞬顔を俯かせるが、真っ直ぐに俺の目を見て、はっきりと言った。

「お父さんは…」

「お父さんは、ロイドとは行けない。」


その言葉をきいた瞬間、切れた気がした。

この世界で生きていくために張り詰めていた糸が。


「じゃ、じゃあ、僕は… 僕はどうすればいいんですか!?」

俺は突然、ミスタに向かって怒鳴る。

ミスタはそれに目を大きく見開き驚いていたが、すぐにキリッとした顔になり、はっきりと言った。

「お父さんは、やらなければいけない事がたくさんある。

 ロイドは、修道院のシスターさんを頼れ。」

ミスタの声は優しかったが、俺は突き放された気分になった。」

「僕もお父さんも一緒に行きます!!」

「駄目だ。」

必死に訴えかけたが、ミスタにピシャリと断られる。

「ロイド、お前はその年で魔力を操る天才だが、まだ三歳だ。それに、お前を守りながら生きていく自身も俺にはねえ。」

ミスタのその言葉はこれまで聞いたこと無い冷たい声で、俺は何も言えなくなった。

「………」

俺が押し黙っていると、ミスタがさらに続けた。

「まあ、今すぐじゃないんだ。それまで、精一杯甘えろ。」

ミスタはふっと息を吐き、いつものような優しい口調で言う。

すると、目頭が熱くなる。

駄目だと思いながらも、止められない。

俺はその言葉で泣いた。

声は漏らさなかったが、涙が留めなく零れ落ちた。


一週間後、俺は修道院へ行く事になった。

俺たちが住んでいるユクゼリアという村から、馬車で半日程進んだ先に、リオンド王国という所まで行く。

ユクゼリアもリオンド王国の支配下であるらしく、国内を移動するだけらしい。



そして一週間後、俺が修道院へ行く日が来た。

「じゃあ、元気でな。」

俺が馬車に乗り込もうとしていると、ミスタが笑顔で見送りの言葉をかけた。

その言葉に涙が出そうになるが、ぐっとこらえ、ミスタの方を向く。

「はい。お父さんも、お元気で。」

俺は包み隠すことなく、自分の本心を伝えた。

子供の振りではなく、素のままの自分で。

それを聞いてミスタが安心したように微笑むと、俺は馬車に乗り込んだ。


馬車は進みだす。

ロイド・ユースタンスを乗せて、リオンド王国へ。



進みだした馬車の中でロイドは一週間前の事を思い出していた。

ミスタと離れ離れになると知り、ワガママを言っていた時の事を。

あのワガママは、俺が子ども扱いされたからじゃない…

俺が、一人になる事が怖かったからだ。

なんて嫌な奴だよ…

己の弱さを恨みつつ、ロイドは新たな決意をする。


大切な人を守る事の出来る力を手に入れる…!!



同時刻、ミスタもロイドと同じ時の事を思い出していた。

俺が弱いせいで、ロイドを一人ぼっちに…!!

そう言って、無意識の内に拳を握りしめる。

俺に、全てを守るだけの力があれば…!!!



二人ぼっちの家族は、それぞれの思いを胸に抱き、同じ決意をする。

二人がまた再開できる事を信じて。


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