身体強化
ミスタとシャルに魔力の事を聞けたのはいいが、残虐性を秘めた二人との鬼のような修行の日々……!!
何て事にはならなかった。
そもそも二人に残虐性などはない。
そんな普通の事を知ったのは、今から一週間前の事である……
「じゃあ、ロイド、これから一緒に頑張ろうな。」
「頑張ってね、ミスタ。」
彼らの顔は笑顔だったが、俺の顔は引きつっていた。
それもそうだ。
初めて出た外には、剣を持ったミスタの周りに狼の死体が転がっている。
これだけでも充分ホラーなのに、ミスタが魔法で狼を焼き尽くす。
魔法を見たのは初めてではないが、この光景は紛れも無いR15物だ。
「さあ、ロイド、お父さんの所まで来なさい。」
ただそれだけの言葉に俺はビビッて肩をビクつかせる。
しかし、拒否したら殺されると思ったので冷静を装いながら少しずつミスタに近づく。
頭の中では狼の様に殺され、焼かれる自分の姿があったが。
ところが、始まったのは頭の中で思い描いていた物ではなかった。
「いいかい、ロイド。
魔力ってのは色んな使い方があるんだ。
お母さんみたいに炎を出すものもあれば、お父さんみたいに高く跳ぶこともできる。」
ミスタは丁寧に、優しく、まるで料理をおしえているかのように話す。
その姿は、某テレビ番組のお兄さんを思い出させる。
「お父さんは高く飛ぶような事しか出来ないけど、いいか?」
「はい、おとうさん。」
俺がそう言うと、お父さんは剣を抜いた。
一瞬、あれ、間違った事いった?などと心配したが、ミスタは剣を構えてから数秒、静止していると、突如爆発的なスピードで走りだした。
もちろん、俺のいる方向ではない。
走り出した先の大岩に人間とは思えない跳躍力で跳ぶ。
大岩まで5メートルはあったし、大岩もそれほどあるのに、だ。
その間に、剣を高く振り上げる。
「はあっ!!」
その声とともに剣を振り下ろすと、大岩は真っ二つになった。
着地したミスタが俺の方を向いて、言う。
「どうだ、ロイド。 カッコいいだろう。」
こちらを見るミスタの顔からは余裕と自慢が見てとれた。
「お前もやってみろ。」
俺の世界の常識では難易度ベリーハードの事をミスタは簡単に要求してくる。
「どうやって?」
俺はなるべく子供っぽく聞く。
「うーんとなあ、俺たちの体の中には魔力っていう力があるんだけどな、それを着る感じだ。」
俺が頭に?が出てきそうな顔をしていると、ミスタが補足説明をした。
「ごめんごめん、言葉が足りなかったな。
ロイドは最近喋れるようになっただろう?
それと同じで、力を体から出してから、着る。
こんな感じだ。」
正直分かりにくいが、要約するとこんな感じだろう。
体内にある魔力を体外にだして、身に纏う。
「わかった。 やってみる。」
とりあえず俺はやって見る事にした。
まずは体内の魔力を体外にだす……!
目を瞑り、体に力をこめる。
すると、体からふわっと何かが抜けていく感じがした。
体の周りに煙の様なものがモクモクと立ちこめている感じだ。
「おー、いいぞ。そんな感じだ。」
ミスタには魔力がみえるのか。
そんな事が一瞬頭をよぎると、今まで周りにあった煙の様なものが飛んでいく感じがした。
「惜しいんだけどな。集中力が切れちまったか。」
ミスタが言う。
なるほど、魔力は集中していないと何処かへいってしまうのか。
ならば疑問は解消していくべきだなと思い、ミスタに尋ねる。
「おとうさんは、まりょくが、みえるの?」
「見えないよ。でも、何となく分かるんだよ。」
戦士の勘ってやつかと思い、納得する。
「もういちど、がんばります。」
「頑張れ、ミスタ。」
先程と同じように目を瞑り、全身に力を込める。
すると、また魔力が体外にでてきた。
ここからだ… 集中しろ… 着るように…
そうして一分ほどしていると、回りの魔力が徐々に体に集まる。
そうして、さらに一分。
鎧を着たような、心強い感覚に陥った。
鎧を着ているといっても、質量は感じられない。
不思議な感覚だ。
「…ロイド、出来てる。」
ミスタの声により、俺の集中の糸は途切れた。
それにしても、かなり神経使うな。
「ロイド、すごいなあ。
二歳で魔力を操るなんて、聞いた事ねえ。」
ミスタは嬉しさからか、顔がニヤついている。
すると急にロイドは俺を抱き上げて、走り出した。
「シャル! ロイドは天才だ!! 凄い子だ!!!」
大声でミスタが叫んで走っていると、玄関からシャルが顔をだし、やれやれといった様な、優しい笑顔をしていた。
今日分かったことは二つ、俺にも魔術が使える事と、ミスタの親馬鹿は本物ということだ。 .
前話の間違い
やあ、ミスタ、これから一緒に頑張ろうな。」
前話の訂正
「じゃあ、ロイド、これから一緒に頑張ろうな。」