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剣と魔法の異世界ライフ  作者: 春夏秋冬
ユースタンス一家
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はじめてのまほう

誰かの声がする…。

まだ眠いよ…。

そう思い二度寝をしようとしたが、俺は転生した事に気づいた。

馬鹿な話だと思うが、ノンフィクションだ。


「起きたぞ!!」

「本当ですか!?」

大人の駆け寄ってくる足音がする。

たしか名前は…ユースタンス夫妻だったか。

「可愛いなあ おい!!」

「ふふ。 そうですね。」

二人は美男美女だった。

「シャル!! この子の名前は…!!」

「ええ。 男の子ですから、ロイドでしょうね。」

「ありがとう! シャル!!」

「あなたの努力のお陰です。 ミスタさん。」

「おいおい、さん付けは止めろっていってるだろう?」

「ふふ。 そうでしたね。」

どうやら、騒がしい男が俺の父親、ミスタ・ユースタンス。

優しい笑顔が特徴な女が俺の母親、シャル・ユースタンスか。

二人の会話を聞いていると、腑に落ちない所もあるが、ラピによるものだろう。

それにしても、言語が通じるのはいい。

加えて思考や記憶は、前世のままだ。

この辺はラピに感謝しよう。

「ロイドー。 パパですよー。」

ミスタはだらしない顔で話しかけてくる。

ミスタは親馬鹿なんだな。 きっと。

「ふふふ。」

ミスタの隣から、シャルの声が聞こえる。

この声を聞いていると、安心する。

流石は母といったところか。

「どんな子になると思う?」

「ふふ。 どんな子でも構いませんよ。 元気な子であれば。」

「そうだな。」

そんな明るいやりとりを聞いて、心が暖かくなったような気がした。


一歳にもなると、俺は歩けるようにはなっていた。

しかし、決してクレイジーな行動はしない。

ラピも子供らしくいるようにといったんだから、わざわざ逆らう事はない。

それでも、自由に行動できないもどかしさとはおさらばだ。

行動出来るとあれば、この世界の事を知る事が出来る。

すなわち、魔力について調べる事が出来る。

正直に言おう。

とてもワクワクしている。

いや、めさくさワクワクしている。

ラピの話が本物なら、魔力では空を飛ぶ事もできる。

何も無いところから物質を生み出すことが出来る。

頭の中では亀マークの人や金髪三つ編みチビが浮かんでくる。

魔力についてミスタやシャルに聞いてみたいが、子供らしくいるならば、まだ言葉を発する必要は無いだろう。

本当は喋れるんだけどね。


なので、家の中を探検してみる事にした。

家はポ○○ンの家のような二階建てで、木材建築だった。

部屋数はさほど多くなく、一階に三つ、二回に二つである。

一階には家族全員が集まるようなリビングのようなダイニングのような部屋と、キッチンに、シャワールームである。

まだ一度も使った事はないが、トイレはシャワールームと同じ部屋にある。

まだオムツだからだ。


二階には、寝室と物置があった。

まだ入ることは出来ていないが、物置には一度入ってみたいものだ。


外への探検は行っていない。

ちなみに、何故外に出ないかと言うと、親馬鹿ミスタが全力で阻止するからである。

魔力の事も外への探検も、まだまだ先になりそうである。


一歳と半年になると、少しずつ喋り始めた。

急にペラペラ喋りだすのは不自然だからな。

喋れる子への目標は、二歳ってところか。

そのために、俺は今日も拙い言葉で会話をする。

非常に恥ずかしい。


晴れて二歳になったので、シャルに魔力について聞いてみることにした。

今更だが、この世界にも一日は24時間、一年は365日という概念は存在する。


「かあさん、まりょくって、なに?」

多少は慣れたが、未だにこの喋り方は恥ずかしい。

「それはね、ロイドや母さんの中にある力の事だよ。

 目には見えないけど、今もいっぱいお空に飛んでいるんだよ。」

シャルの喋り方は本当に優しく、母親という感じがする。

前世の母には悪いが、シャルの方が母親らしい。

「それで、なにをするの?」

「火を起こしたり、お空を飛んだりするんだよ。」

予想的中。

やはり魔力とは、この世界を支える全てのものであった。

以前の世界での原子と同じ立ち位置だろうか。

「ぼくもつかいたい!」

「そっかあ、ロイドは魔力に興味があるのかあ…

そう言うと、シャルは俺の手をとり、家の庭へと向かう。


「あなた、ロイドは魔力に興味があるそうよ。」

シャルがミスタに話しかける。

俺の中ではミスタはいつも家にいたから、ニートだと思っていたが、目の前の光景を見てそんな考えは否定されていた。

俺の目の前には、右手に持った剣を右肩に置きながら、左手で汗を拭くミスタの姿があった。

しかも、周りには、狼の死骸がたくさん転がっている。


若干、俺は引いた。

いや、かなり引いた。

二歳の子供とかそれ以前に見たことのないグロテスクな光景が目に飛び込んでくる。

ミスタは俺の表情が固まっているのを見ると、少しやらかしたと言わんばかりの顔で

「シャル、処理よろしく。」

と言った。

シャルも、当然といった表情で

「はい。」

と言った。

『火炎弾フレアショット』

シャルが一言そう言って、手のひらを前にかざす。

すると、サッカーボール台の球が作られていき、一匹の狼に向けて発射される。

その一匹を導火線の先端として、他の狼に燃え移り、たちまち炎の壁が出来た。

中にはミスタがいたんじゃないか…

と、思ったが、杞憂だった。

ミスタは二メートルはあった炎の壁を軽々と飛び越えた。

そしてミスタは何事も無かった様に、頭を掻いて、

「ロイドは魔力に興味があるのかー」

なんて言った。

「あなたの子と思うと、楽しみね。」

「おいおい、お前の子でもあるだろ。」

などといちゃついていた。


俺はとても混乱した。この世界の事をを知らなかった俺にとっては、ただの狼の殺傷現場だ。

ラピと会った時までとはいかなくても、前世では味わうことの無かった恐怖に冷や汗が噴出す。


ゃあ、ミスタ、これから一緒に頑張ろうな。」

「頑張ってね、ミスタ。」


俺にはそんな二人の言葉が、脅しにしか聞こえなかった。



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