実験②
ロイドside
シルヴァとの実験が終わった後、消灯された部屋でベッドに寝転がる。
俺にはいつだってそうだ…。
前世でも異世界でも、何て非力なんだ…。
大事な人を守る事も出来ずに、一つしか違わない子供にも勝てはしねえ。
右手を上に掲げる。
もっともっと強くなって、誰にも負けない。誰も失わせない!
掲げたままの右手を握りしめ、固い決意をした。
シルヴァside
時同じく、月明かり差し込む部屋でシルヴァもまた、思う。
それにしても、ロイドの奴…。
俺に傷つける事さえ出来なかったものの、なかなかだな。
柔軟な思考、臨機応変に動くこともできていた。
一つ一つの魔法の威力は低いが、センスはある。
間違い無く磨けば光るな。
少し、真面目に指導してやるか。
「ちっ、めんどくせえな。」
そう言ったシルヴァの顔にはかすかにニヤついた笑みが浮かべられていた。
「ロイドくーん。起きてー。朝だよー。」
アヤノの声が聞える。
「うーん、あと五分…」
もそもそと布団の中で蠢きながら呟く。
すうっ。
「朝だよー!起・き・て・よーーー!!!」
っ??????
突然に大声に体は嫌が応にも反応し、ベッドから跳ね起きる。
「あ、起きた。ロイドくん、おはよー。」
跳ね起きた視線の先、まさに十センチあるかないかという所にアヤノの可愛らしい笑顔が確認された。
つ????!>!!‘*!LP!+`?
驚きの余り、急いで後退する。
「いでっ。」
「あはは、ロイドくん。見かけによらずドジだなー。」
どうやら俺は後退しすぎて壁に頭をぶつけたらしい。
朝一のアヤノの笑顔と壁に頭をぶつけた醜態に、耳まで赤くなる。
それにしても、アヤノを可愛いとか思っちゃうなんてロリコンなんだろうか。
それとも、アヤノの事がマジです…。
「おい、ロイドはいるか。」
さらに赤くなってしまうような事を考えていると、シルヴァの声が聞える。
「あ、シルヴァくんおはよー。」
「ああ。」
シルヴァはアヤノと挨拶を交わした後、俺の方に近づく。
そして突然、水魔法で顔面に冷水をぶっかけられた。
「実験開始だ。パシリ。」
シルヴァが俺を見下ろして言い放つ。
それでもキョトンとしていると、土魔法で小石を頭にぶつけられた。
「次は炎か…。」
シルヴァが物騒な事を言い出したので、慌てて寝巻きから普段着に着替える。
人差し指でライターのように炎を出しているシルヴァの元へ小走りで駆けつけ、部屋を出る。
「二人とも、頑張ってー。」
アヤノが相変わらずの笑顔で手を振りながら声を掛ける。
こうして俺のちょっぴり賑やかで、ハードな一日が始まった。
今日の実験は、室内でやるらしい。
今はシルヴァの部屋で昨日の実験の結果を聞いている。
「ロイドの魔眼だが、何の影響も無く魔法を使えていた所から三つの推測が立った。」
シルヴァは指を三本立てて言う。
「一つ目は、お前が意図的に魔眼による魔力の吸収を抑えているというものだ。
次に二つ目は、お前の魔眼は他とは違うというもの。
三つ目は、体と魔眼の魔力のリンクが切れているというもんだ。」
「はあ。」
イマイチ理解してないが、とりあえず適当に相槌をうつ。
「一つ目の推測はまず無しだと思うがな。
それが当てはまってなきゃ俺の所には来なかっただろうしな。」
確かに。
俺が始めから使いこなせていればシルヴァを頼る事は無かったもんな。
「二つ目の推測はお前の魔眼に体内の魔力を吸収する機能がなくて、全て周りの魔力で補っているという事だ。
現時点ではこれが一番有力だ。」
「三つ目の推測は魔眼が魔道具だっていう事だ。」
ここでふと気になる単語が出てきたので質問してみた。
「魔道具とは何ですか?」
「魔道具ってのは魔力が予め貯められている道具だ。
魔力が空になったら周りから充填する。
そういう魔力量が少ない奴でも使える魔法の道具版みたいなものだ。」
「なるほど。」
今日のシルヴァの説明は分かりやすい。
嫌な顔せずに丁寧に答えてくれる。
それは嬉しいのだが、何故かかえって不気味だ。
てか、こんなに口数多い人だったけ。
「話を戻すが、お前の魔眼がそれなんじゃないかという事だ。」
「分かりました。」
シルヴァの言葉に俺は短く返事をする。
「それで、今日の実験は推測の確認だ。」
「はい。」
そうして今日の実験内容が決まった。
「じゃあ、一つ目から。
声が聞えるようになったのはいつからだ。聞えなくなる時はあったか。」
シルヴァはテキパキと話を進めて早速実験に取り掛かった。
「あの…その事なんですが…。
シスターとシルヴァさんの声だけが聞えないんです。」
一瞬興味を持って俺の目をじっと見たが、すぐに興味が失せたという感じで目を逸らした。
「シスターや俺のような上位魔導師は、自分に結界魔法でプロテクトをかけている。
自分の技術が盗まれないようにな。」
「そうだったんですか。」
分かりやすい説明に納得したので質問に答える。
「声は修道院に来た時から聞え始め、先程のケースを除いたら聞えなかった事は一度もないです。」
「そうか。なら一つ目と三つ目は消えたな。」
シルヴァは抑揚の無い声で呟く。
「何で三つ目まで消えるんですか?」
俺が素直に疑問を口にする。
「馬鹿が。さっき説明しただろ。」
シルヴァが鋭い目つきで俺を睨む。
ええっ! 説明されたっけ!? 怒らせちゃった?
「魔道具ってのは充填がいる。四六時中見えるなら違うに決まってるだろ。」
うん。やっぱり、この人すげえいい人だ。
愚痴を吐きながらも説明してくれてるんだ。そうに違いない。
「じゃあ次、二つ目だ。」
そう言ってシルヴァは魔法で折り鶴を作って室外に飛ばした。
やっぱり、何考えているかわからないな…。
魔眼が効かなくて良かったような良くなかったような…。
「これにはお前の魔力を空にする必要がある。という訳で、この中に入れ。」
そう言ってシルヴァは一辺が三メートルほどの半透明な立方体を出現させた。
「この中でお前は全ての魔力を使いきれ。
お前は魔力が多いほうではないからすぐに終わると思うが、使い切れよ。」
またしても俺は気になる事が出来てしまい、シルヴァに問う。
「僕って…魔力量少ないですか?」
「ああ、少ない。」
不安げに聞くと、シルヴァに即答された。
俺は軽いショックを受けながらも、更に問う。
「魔力量は増やす事は出来ないんですか?。」
「出来る。」
シルヴァが端的に答える。
そう聞いて明るくなってしまう。
「えと、どうやったら魔力は増えますか!?」
やや興奮気味に聞くと、シルヴァに魔法で顔面に水を掛けられた。
本日二回目……。
しょぼん。
「それは実験の時とは関係無い。
もううぜえから早く魔力使い切れ。」
さすがに我慢の限界か、苛立たしげに言う。
「はい!!」
返事をしながら立方体の中に入り、イメージする。
使う魔法は氷魔法…!
体内の魔力を白く、硬く……!!
俺は全魔力を使った氷魔法を使う。
室温は急激に低くなり、所々に氷塊や氷柱が出来た。
「はあっ……はあっ…。」
全魔力での魔法の為か、息が切れ、クラクラする。
何だか部屋が回っているようだ。
「よし、そろそろだな…。」
シルヴァがぼそりと呟くと、扉が開けられ声が聞えてきた。
「シルヴァくん、ロイドくん。やっほー。」
明るくて、聞いてるだけで元気が出そうな声が聞えてきた。
「ロイド、アヤノの目を見ろ。」
現れた人物がアヤノだとは気づいたが、突然そんな事言われると照れるな…。
……ませてるな。
中身は大人びているが外見はまだ五歳なんだ。
ちょっとヤバイだろ。
などと考えて、少し躊躇った後に、アヤノの目を見た。
「どうだ、何か聞えてくるか。」
シルヴァが聞いてくる。
「いえ…何も…聞えません…………」
意識が遠のいていく。立ちくらみもしてきた…。
「『ヒール』。」
アヤノは一秒後には背中から倒れそうな俺を支え、何やら言った。
すると、体が力を取り戻していく。
俺は驚きで、声が出ない。
「まあ、ロイドの魔眼は吸収機能が他とは違うって事だな。
明日少々お前の体いじくるから。覚悟しとけ。」
ん???
今さらっととんでもない事いったよなこの人。
「大丈夫!!ここにはシスターも私もいるし、痛くならないから!!」
そういう問題かなアヤノちゃん?
こうして、俺のちょっぴり賑やかでハードな一日が終わる。
そして、ちょっぴり賑やかでベリーハードなR15指定の一日が始まった。




