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剣と魔法の異世界ライフ  作者: 春夏秋冬
聖ミカエラ修道院 前編
13/18

シルヴァさん

「うるせえよ、カス。」

シルヴァの突然の暴言に、唖然としていた。

「駄目だよ、シルヴァくん!!」

アヤノのやや怒り気味の声が聞える。


シルヴァが俺に暴言を放ち、アヤノがそれを注意する。

ようやくそれを理解してなるべく冷静に言葉を返す。


「どういう意味ですか?シルヴァさん。」

自分でもよく出来た方だと思う。

敬語で喋れていたし、声のトーンだって通常通りだ。


だが、シルヴァは俺の努力を踏みにじるかのように次の言葉を発する。

「気安く呼ぶんじゃねえよ、ガキ。」


その瞬間、俺の限界は頂点に達した。


「俺が何したってんだよ!!気に入らない事があるならハッキリ言えよ!!!」

短気だと思うかもしれないが、自分でもよく分からない問題に悩まされ、希望が見つかったと思えばこれだ。怒りたくもなる。


俺の反論を聞いても尚、シルヴァは変わらず死んだ魚のような目のまま言葉を紡ぐ。

「そうだ、お前は何もしていない。そこが気に入らない。

 被害者ズラして助けを求めているくせに自分では動かない。

気に入らない事があったら逆切れ。

お前は一体何様なんだ?」


シルヴァの言葉に反論を返そうとするが声が出ない。

シルヴァの言葉が正論で、俺の言葉が理不尽。

こんな事、少し考えれば分かる事だ。

理不尽は正論に勝てない事を知っているから、言葉がでない。


「とにかく、俺はワガママな野郎の面倒は見切れない。」

シルヴァはそう言って部屋から出て行き、隣でオロオロしていたアヤノも慌てて後をついっていった。


しばらくしてから、一人になった部屋でふらりと立ち上がりベッドに倒れこむ。

「何なんだよ…畜生……」

ぼそりと悪態をついてから布団を頭まで被りそのまま眠った。



その日、俺は夢を見た。

ミスタとシャルと俺が、仲良く食事を取っている夢だ。

おいしいね。などと他愛もない事を話しながら笑いあっていると、辺り一面が炎に包まれる。

炎の中に、シャルが消えていく。

続いてミスタも後を追うように炎の中に消えていく…。



「はっ!」

夢の途中でベッドから跳ね上がる。

体中から汗が噴出していて、べっとりとして気持ち悪い。

「何なんだよ…畜生……」

眠る前と同じ台詞を吐いてからベッドから出る。

そのまま近くの壁を背にして座り込み、ボーっとしながらもロイド・ユースタンスの一日が始まった。


子一時間同じ体勢でボーっとしていると、コンコンとノックの音が聞こえた。

「シスターだけど…入っていいかしら?」

訪れたのはシスターらしく、まだ寝起きで気だるい体を起こして扉へ近づく。

扉を開けると、トレイを持ったシスターがやんわりとした表情を浮かべて立っていた。

「昨日の話はアヤノから聞いたわ。大丈夫?」

「ええ、まあ…」

曖昧な返事を返すと、シスターはフフッと笑って言った。

「ここの子は一癖も二癖もあるけれど、みんないい子なのよ。」

昨日も聞いた気ような事を言った後、トレイを机の上に置いて出て行った。


トレイの上にはパンとコーヒーが一つずつ。

質素だが、前世での一般的な朝食を前に軽く感動する。

ユースタンス家では離乳食っぽいのしか食べれなかったからな。

そんな事を思いながら、モグモグと朝食を食べ終える。


食べた後に布団に座って昨日の事を思い出す。

シルヴァの暴言は決して褒められるものではないが正論だったのは確かだ。

俺はしばし考えた後にのシルヴァの元へ行く事にした。


心の中で散々悪口を吐いたのは内緒だが。

てへぺろっ。


思い立った日が吉日、それ以外はすべて凶日の言葉通り、すぐさま行動に移そうと扉を開ける。

開けた先にはアヤノが立っており、二人同時に肩をビクつかせる。

「あ、ロイドくん。おはよー。」

「おはようございます。アヤノさん。」

アヤノは年上の為敬語で挨拶をする。

「いいよー普通に喋ってくれて。アヤノとかお姉ちゃんとかでもいいよ。」

どうやらアヤノは上下関係が苦手らしく、敬語で喋る事を嫌った。

「何でお姉ちゃんなんですか?」

疑問を口にすると、また敬語だ!と言って笑いながら答えを口にする。

「修道院のみんなは一つの家族みたいなものなんだよ。実際、シスターの事をマザーって呼んでいる人も少なくないしね。」

「なるほど。」


話が一区切りした所でアヤノが本題を口にした。

「今から…行くんだよね? シルヴァくんの所。」

俺はコクリとうなずく。

「じゃあ案内するね。こっちだよ」

そう言って彼女は歩き始める。


「アヤノ。」

「何?」

短い会話だが、呼び捨てで呼んだ事が余計に浮き彫りになって恥ずかしい。

「シルヴァさんには、俺一人で会いたいんだ。」

俺がそう告げると、アヤノは一言分かったと言って笑ってみせた。


「着いたよ。」

アヤノが一つの扉の前で立ち止まる。

この扉は他の扉とは違って、鉄で出来た厳重そうな扉だ。

「私はここまでだから、頑張って!」

アヤノの声援を聞きながら、俺はその扉に手を掛けた。


「失礼します。ロイド・ユースタンスです。」

面接をするかのように、ハキハキと喋る。

「ああ、昨日のワガママ野郎か。」

当然のように暴言を吐かれるが、心を落ち着かせへりくだった態度で接する。

「昨日は大変申し訳ありませんでした。」

そう言って頭を深く下げる。

「まあ、話だけは聞いてやるよ。」

熱意が伝わったのか、とりあえず一歩前進だ。

俺はアヤノに話した内容をより丁寧に伝えた。


「そりゃ魔眼の一種だ。」

話が終わると、シルヴァが昨日と変わらず死んだ魚のような目で言った。

「魔眼…とは何ですか?」

「説明するのかよ…めんどくせえ。」

「魔眼ってのは、体内の魔力が全て目に収束されている目の事を言うんだ。

 それは何ならかの病とか遺伝とか色々言われているが、今の所分かってない。

 収束するのは目だけに限らず、手や足の場合もあるんだが…」

愚痴を言いながらも説明をしてくれた所を見るといい人なのかもしれない。

なのでもう一つ質問してみる事にした。


「魔眼の一種というのはどういう事でしょう?」

今度は少しイラっとした顔になったが説明してくれた。

「魔眼にも色々種類があるんだが、話を聞くかぎりじゃあ、お前は盗視眼の持ち主だ。」


「盗視眼とは何ですか?」

好奇心でもう一つ質問したが、舌打ちされた。

…この質問が最後だな。

「盗視眼ってのは目を合わせた人物の頭の中が覗ける人物だ。」


全ての質問に最後まで丁寧に答えた後、シルヴァはツカツカと俺の方に歩み寄り顎を捕まれた。


……何で顎?


「お前の魔眼が何とかそんなもんはハッキリ言ってどうでもいいが、昨日お前は自己紹介の場で魔法を使った。魔眼を持った奴は魔法が使えない。体中の魔力が目に集まるからな。

お前はそれらのルールを否定している、いわば珍種だ。

ギブ&テイクだ。お前の悩みを解決してやる代わりに俺の実験に付き合え。」

何とも言えぬ威圧感と自身に満ちた表情を見て、俺はハイとしか言えなかった。




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