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剣と魔法の異世界ライフ  作者: 春夏秋冬
聖ミカエラ修道院 前編
11/18

アヤノの優しさ

廊下の壁にもたれ、体操座りで座っていると、扉の開く音がした。


誰かと思い確認したい気持ちもあったが、今はそんな気分ではない。

どうせシスターが来たんだろと思い、顔を膝の間に埋める。


「ロイドくん、どうしたの?」

シスターの声が聞こえた。

「…………」

だが、何も喋らない俺を見て、一つため息をついて優しい声で言う。

「何があったのかは知らないけど、今は言わなくていいわ。

 気が少しでも楽になったら、私に所に来てちょうだい。必ず力になるから。」


「アヤノ、この子を部屋まで連れて行ってくれるかしら?」

シスターの言葉から、ここには俺とシスターの他にアヤノという名前の人がいる事を理解した。

名前からして女だろうか。


「分かりました。」

女の子らしい明るい声が聞こえてくる。

その声からアヤノの人物像について考えるていると、扉の方へ歩いていく足音と、俺の方へ近づいてくる足音が聞こえてきた。


「じゃあロイドくん、行こっか。」

アヤノは俺に話しかけるが、俺は構わず無視だ。

「ロイドくん、聞こえてる?」

アヤノはまた話しかけてくる。

それでも無視し続けていると、アヤノが俺の手をとって、そのまま引っ張る。

そのままつんのめらないように、よろつきながらも立ち上がると、アヤノはさっと俺の顔を覗き込み、何も言わずに輝かんばかりの笑顔を浮かべた。



今俺は、アヤノに手を引かれ廊下を歩いている。

廊下には二人以外誰もいないし、アヤノも喋らないので、二人の足跡だけが聞こえてくる。


そんな状態でしばらく歩くと、アヤノが一つの扉をあけ、中に入っていった。

最初に俺がいた部屋とは、違うようだ。


「よいしょっ。」

アヤノは近くにあったベッドに腰掛けながら、じっと俺を凝視してくる。

しばらく俺は扉の前に無言で立ちすくんでいたが、アヤノの視線に耐えかね、扉を閉めて壁にもたれかかりながら座った。


「私はアヤノっていうんだ。六歳なんだー。よろしくね。」

アヤノは足をブラブラさせながら、俺の方を見て自己紹介を始めた。

「ロイドくんは何歳かな?私と同い年?それとも年下?」

俺にも質問を投げかけるが、相変わらず無視だ。

それでもアヤノは喋り続ける。

「さっきの落とし穴でどこか怪我してない?

 犯人はギルティくんっていう四歳の男の子なんだけど、許してあげてね。」

「ロイドくんは魔法を使えるんだねー。他にも何か出来ることある?

 私はねー、炎と、水と、風と、土と…あと治癒もできるんだよ。」


気がつけば俺の目の前にきていた彼女が、心配しそうな目でこちらを見ている。

何だか俺は目が逸らせなくなり、アヤノの目を見ていた。


すると、また声が聞こえてきた。


大丈夫?

怪我は無い?

私に出来る事ないかなあ…

早く元気だして欲しいな。

何の話なら話してくれるかな…


声が聞こえてきた事に、反射的に目を背けようとしたが、聞こえてきた暖かな声に、それをする事はできず、視線を動かす事なくして目を見開いた。


その声はアヤノの声であったが、目の前にいるアヤノに口を動かした素振りは無く、今も聞こえ続けている。


「あれ……?」

その事実に思考を巡らそうとするが、涙が頬を伝う感触に思わず声が漏れた。

慌てて目を擦るが、涙は止まる事なく、声を漏らして泣いた。

「…ひっく……ぐすっ……ひっく…ふん…」


アヤノは突然泣き出した俺に驚いてオロオロしていたが、俺の隣に座って泣き止むまで背中を優しくさすってくれた。


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