19
空が黒から淡い紺に変わる。
時計がないから時間がわかんないけど、朝の4時くらい?
森の出口が見えてくる。
ようやく気味悪いとこ脱出できるー。
森を抜けると、少し先に町のような建物の集まりが見えた。
もし、あそこにいる鬼の肌が白ければ、ここはもう東の国ってことになる。
褐色の肌の鬼だったら、まだここは西の国ってことだね。
どうか、白鬼さんでありますように⋯⋯。
恐る恐るあたしはその小さな町に入る。
何軒かある店は閉まっている。
こんな時間だし、人の気配はない。
あたしは建物の影に隠れて様子を伺うことにした。
ツノのないあたしがこんなとこにいたら、例え東の鬼でも見つかるとマズイと思うの。
みんなが右京みたいないい人ならいいのに⋯⋯。
東の兵士に見つかって、東の王の前に投げ出されたくはないわ。
杏里か右京の名前とか出せばどうにかなるかしら。
しばらくそこで身を潜めていると、ついに向こうから人影が現れた。
細心の注意を払い、その人影を待つ。
隠れているあたしの前を通り過ぎ、気配を感じなくなるまで息を殺す。
見えた。
その鬼の肌の色は⋯⋯あたしと同じ色だった。
よかった!!
もう東の国に入ったんだ。
ほっと胸を撫で下ろす。
これでとりあえず西に連れ戻されることはないね。
連れて行かれても、東の国だ。
すると、また新たな人影が見えた。
あたしはまた様子を伺うが、その姿を見て愕然とした。
「え⋯⋯⋯?!」
その鬼は⋯⋯褐色の肌をしていた。
な、なんで?
さっき白い肌の鬼がいたのに、どうして???
ここは東の国じゃないの??
「ここは中立の町だからな」
突然頭の上から降ってきたその声に、飛び上がるほど驚く。