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―――その頃、右京―――
右京は森の中を必死の形相で走っていた。
忽然と姿を消したユキナを探しまわっていたのだ。
(あの足では一人で遠くには行けない…。ケモノに襲われたのなら血が落ちているはず。もしかしたら…)
恐れていたことが頭をよぎる。
洞窟の前には争った形跡があった。
(西の国に捕まったのでは…)
足を止め、西の城のある方角を睨む。
一人で乗り込んでも勝ち目はない。
(私が彼女を巻き込んでしまった。この命に代えても彼女を助けなければ)
右京は自分の国⋯⋯⋯東の国へと走り出した。