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「気に入った。お前、面白い女だな」
王はそう言い放つと、掴んでいた髪を離した。
突然自由にされた反動で床に投げ出される。
「はあ?!」
なんでやらないの?
「お前みたいな面白い女は殺すにはちと惜しい。オレの女にしてやる」
「そんなのイヤだっつってんでしょ!!早く殺しなさいよ!!」
こんなやつの女になんかなりたくない。
「おい。こいつを風呂にいれて部屋に連れて行け」
「イヤだって言ってんでしょ!!」
その後ギャーギャーわめくも、あたしは女召使いに無理矢理風呂に入れられた。
「綺麗になったか?」
あたしが閉じ込められた部屋に、西の王が入ってきた。
ここは奴の部屋らしい。
「あたしはあんたの女になんかならない!!」
部屋の隅まで逃げる。
あの後、無理やり風呂に入れられ、綺麗なドレスを着させられていた。
「そんなに嫌がるな。オレに気に入られたんだから喜べ」
王はマントを脱ぎ、大きなベッドに腰かけた。
「こっちに座れ」
自分の横に呼ぶが、あたしが従うとでも思ってるの?
「イヤ」
「そうか。ではお前が従わないなら、牢にいる東の兵士を殺そう。バカみたいに攻めてきた弱っちいのが何人かいる」
またニヤニヤと笑う。
東…右京たちの国の人達ってこと?
「お前、東の国に向かってたんだろ?」
バレてるのね…。
「そ、その人たちは関係ないでしょ?!」
右京の大切な仲間かも知れない。
「関係ないなら殺したって構わないだろ?」
この最低な王ならやりかねない。
あたしのせいで、そんなことになんてさせられない。
「わかったわよ…」
あたしは渋々そいつの隣りに座った。
「変なやつだ。自分の命は簡単に捨てようとするくせにら血の繋がりもない鬼のためには言う事聞くんだな」
「あんた、本当に最低ね」
「ああ。オレは最低だ。欲しい物のためならなんだってするさ」
引っ叩いてやろうと手をあげたが、あっさりと腕を掴まれた。
そしてそのまま抱き寄せられる。
「離して!」
「嫌だね。せっかく捕まえたんだ」
首筋にそいつの舌が這う。
「⋯ヤッ!」
「あまり抵抗するな。おとなしくしていれば乱暴しないでやる」
ゾクゾクと悪寒が走る。
あたし、こんなとこでこんなやつに犯されちゃうの?
「お前、名前は?」
抵抗したいけど、牢にいる東の鬼のことが頭をよぎる。
「…ユキナ」
「ユキナか。ユキナ、お前はオレに愛を捧げろ。そうすればずっと可愛がってやる」
はあ?愛?そんなこと無理に決まってるでしょ。
「オレの名前は志龍だ。いい名前だろ?」
あたしは返事する気力を失っていた。
「オレに口づけをしろ」
志龍王は言った。
「⋯⋯⋯」
あたしはなにも答えずに彼を睨んだ。
「その目、いいね。今までの女は殺さないでくれと泣きながら股を開いたんだぜ?でもお前は違う。そのプライドの高さがそそられる」
本当に最低…。
「少し酒でも飲むか」
そう言って、志龍王はあたしを離して立ち上がる。
よかった。
「ああ、枕元に隠してあるオレのナイフ、机に戻しとけよ。手紙を開けるのにそれがないと困るからな」
志龍はテーブルのグラスに酒をつぎながら言う。
「な、なんでわかったのよ?!」
志龍がくる前に、机にあったナイフを枕元に隠しておいたのだ。
「オレを騙せると思うな。それにそんなのじゃオレは殺せないぜ?」
あたしは枕元に隠したナイフを手に取る。
「それにお前さんにそんなことできるわけがない」
ふん…。そんなつもりじゃない。
見てらっしゃい。
あたしは静かにナイフを向けた。
「おい⋯⋯」