13
ようやく目を覚ましてみれば、なんとあたしは西の国の城に連れて来られていた。
「離せっつってんの!!」
縄で繋がれて運ばれるあたし。
「うるさいっ。いい加減静かにしろ!」
褐色の鬼があたしに剣を突きつける。
「殺すならさっさと殺しなさいよ!!」
これからあたしは、西の王に差し出されるのだ。
人間の女は珍しいから、だってさ。
そんなのイヤ!!
ギャーギャー騒ぎ立てるが、結局、玉座の前に放り出されてしまった
くそ…勝てるわけない。
目の前には、偉そうに座ってる褐色の国王がいる。
年は右京と同じくらいに見えるけど、これが王なの?
人を馬鹿にしたような顔でこちらを見ている。
まるで値踏みされているようで非常に不愉快極まりない。
「ほー。人間の女か」
あたしはキッとそいつを睨みつける。
右京達の敵。
こいつのせいで、右京も杏里も苦しめられてる。
「離して!!」
「なんだ、随分と威勢がいいな。そんなにオレに殺されたいのか?」
ニヤニヤとイヤな笑いを浮かべている。
すっごいムカつく。
「だからサッサと殺せって言ってんの!!耳聴こえないの?」
死ぬのはイヤだけど、こんなやつに犯されるよりはマシ。
「…口の利き方を知らないようだな」
褐色の王は立ち上がり、剣を抜く。
「あいにく、女相手にこんな乱暴する奴らなんかに利く口はないわよ」
剣は怖いけど、負けたくない。
「黙れ。人間の分際で」
「はあ??鬼だからなんか偉いわけ?あんた世の中知らないんじゃないの??世間知らずの暴力バカなんでしょ」
言い終わるか終わらないかのその瞬間、そいつは剣を素早くあたしの喉元に当てた。
ちくっと鋭い痛みが首に走る。
ヒッ!!なんとか声には出さずに済んだけど、心臓が飛び出るんじゃないかって程驚いた。
でもあたしは睨むのを辞めなかった。
「あまり調子に乗ると、次は喉元掻き切るぞ」
「脅したってあたしは屈しないわ。あんたみたいな暴力バカ、大嫌い!」
パンッ!!
剣ではなく、平手打ちが飛んできた。
叩かれた頬がジンジンと酷く痛む。
「黙れ」
「暴力でなんでも思い通りになると思ったら大間違いなのよ」
ガシッ。
乱暴に髪を掴まれ、身体が少し浮いた。
「お前、そんなにオレが嫌いか?」
強引にぐいっとそいつの顔の方を向かされる。
「当たり前でしょっ?」
「オレは西の王だ。媚びを売れば妾にしてやるぞ?本当は死にたくないだろう?」
「ふんっ!!ふざけたこと言わないで!!あんたなんかに媚びるくらいなら、死んだほうがマシよ」
言い終わると同時に、さらに強い力で頭を持ち上げられる。
ブチブチと髪の千切れる音が頭皮から伝わる。
「じゃあこのまま首を斬り落としてやろうか」
「だからサッサと殺れって言ってんの!」
褐色の王は、再びニヤニヤとイヤな笑みを浮かべた。
右京の言ってた通り、最低なやつ。
こんな奴に殺されるのは悔しいけど、捕まったあたしが悪い。
「そうか。じゃあ死ね」
そう言って、王は剣をあたしの首に当てた。
あたしは最後まで睨みつけてやろうとそいつを直視したままでいた。
剣を大きく振りかぶり、降りてくる⋯!!
くっそー!ママごめん!
⋯⋯と思ったけど、いつまでもあたしの首は胴体から切り離されなかった。