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~手のなるほうへ~  作者: コンブ
第1章
12/112

12

右京と出発してから2日。


あたしはヘロヘロになりながら、歩いていた。


「休憩しようか?」


この右京って人はとにかく優しい。


あたしの怪我の心配をしながら歩いてくれるのはもちろん、お腹すいてないかとか、喉渇いていないかとか。


夜もずっと寝ないで番をしている。


森の中では超恐ろしいケモノが出たりするので、それらからあたしを守るために、夜中ずっと見張ってくれているのだ。


いやー。なんて甲斐甲斐しい人なんでしょ。


「まだ歩けるよ。少しでも先に進んだほうがいいし」


実際、あたしが速く歩けないから、予定より進んでない。


足でまといだわー。


「明日には東の国に入れる。そうなればかなり安心だ」



道中、鬼のことや西の国のことを教えてもらった。


鬼は人間の10倍近く寿命が長いらしいよ。


右京も見た目は20台後半だけど、実際は200年以上生きてるんだってさ。


すごいよね?羨ましい。



西の国とは500年以上戦争してて、ずっと決着がつかない。


その国の鬼は、褐色の肌をしていて、物凄く野蛮なんだって。


他にも北や南の国なんかもあるけど、西の国とだけ戦争してる。


西は、東の豊かな土地を狙ってるらしい。


できれば西の鬼だけは会いたくないわ…。


特に国王は残忍な鬼で、自分の部下であっても気に入らなかったらすぐに切り捨てるって。


争いなんかしたって、失うものばかりなのにな。


戦争とか経験してないあたしは、そんなこと言える立場じゃないんだけど。


杏里も右京も戦争で家族を失って、孤独な身の上らしい。


右京と杏里は小さいころから仲良しの幼馴染で、信頼できる仲間だって言ってた。







それから1時間ほど歩くと、小さな洞穴を見つけた。


「少し早いが、今夜はここで休もう。ユキナの体力も限界だろう」


足の痛みはだいぶひいたけど、無理して歩いてるせいか、ひどく疲れる。


「そうだね」


右京はちゃんとそういうことも気にかけてくれてるの。


「薪と水を探してくるよ。ユキナはここで休んでいなさい。


そう言って、右京は荷物をおろした。


「わかった。ここで待ってます」


あたしは近くにあった大きな石に腰を下ろし、痛む足をさする。


あー、まだジンジンしてる。


それに普段殆ど運動なんかしないし、こんなに長い距離歩いたことないもんね。



「すぐ戻る」


「いってらっしゃい」


右京を見送る。


あの人、あんなに色々してくれるけど、本当は疲れてるんだろうな。


怪我したあたしに合わせて歩いて、世話も全部やってくれて。


確かに右京のせいでこの世界に来ちゃったけど、彼のおかげであたし生きてる。


最初は恨んだけど、今はもうそんな気持ち吹き飛んだ。


彼は私利私欲のために行動しない、優しい人。


国のために杏里を迎えに行って、巻き込んだあたしのために世話してくれて。


ちょっと不器用なだけの真面目な人。


このまま人間の世界に帰れればあたしはそれでいい。



でも⋯⋯。


杏里はどうなるんだろう。


あのとき杏里は、こっちには帰りたくないって言ってた。


よっぽどツライ思いしたんだろうな。


でも右京には杏里の助けが必要。


なんかとても複雑⋯⋯。


ただ、あたしなんかが口を挟めることじゃない。




そういえば杏里、あのときあたしに真剣に告白してくれて、ちょっと嬉しかったな。


でも、杏里は鬼であたしは人間…付き合えないじゃん。


あたしがおばあちゃんになっても杏里はまだ若いままなんでしょ?


それってなんか複雑よ…。


杏里に会ったらなんて言おう。


本当はいい人だし素敵な人で、普通なら断わる理由なんかないよ。


あの真剣な愛の告白、酔っ払ってなかったら、卒倒してたかも。


チャラいだけの人かと思ってたのに、あんなのずるい。





⋯⋯ガサガサッ


斜め後ろから、気配がする。


あ、右京帰ってきたっ。


あたしは振り向いて、


「おかえ⋯⋯!」



絶句した。




「こんなところに女がいるとは⋯いい土産ができたな」


そこにいたのは、右京ではなかった。



褐色の肌をした、鬼だった。



「ひぃっ!!」


どうして?!?!


殺される!!


突然の事に、身体がすくむ。


「おい女。おとなしく一緒に来い」


その褐色の鬼は乱暴にあたしの腕を掴んだ。


「ヤダっ!!」


ジタバタと逃げようと抵抗するが、すでに捕まっているために逃げられない。


「助け⋯⋯っ!!」


右京に助けを求めようと叫ぼうとすると、


「抵抗するな!!」



バチィンッ!!



あたしは強い力で殴られ、不覚にもそのまま気絶してしまった。


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