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~手のなるほうへ~  作者: コンブ
第3章
105/112


「んで、国王陛下がこんなとこでのんびりしてていいのかい?」


杏里が右京を皮肉るときは、必ずこう呼んだ。



「ん、ああ。頭の堅い長老達の相手は疲れる」


「西との事か?」


西の国とは先代の頃より最悪の状態が続いている。



「まあな。私としてもそろそろ終止符を打つべきだと考えている」


「西か…」


この戦争で、杏里と桔梗の両親は亡くなっている。


彼等にとっても、憎むべき相手。



「西の国王は忌わしい存在だ。卑劣で残忍。あの男だけは許せない」


「でも、その息子も悪どいんだろ?」


「ああ。私たちより少し若い王子がいる。気に食わない者は、部下であろうと斬り捨てるような奴だときいているよ」



「そんなのが後に控えてるなんて、まったく嫌になるな」


「いつかはその王子とも戦う日が来るであろうな」



右京はひとつため息をつき、カップに残った茶を飲み干した。




「そこで、杏里」


「なんだ?改まって」



右京は友としてではなく、国王として口を開く。


「お前を騎士団の団長に任命したい」


その目は真剣そのものだった。



「ふん、オレが団長だと?」


杏里は鼻で笑う。



「そうだ。先の戦いで我が騎士団は、頭をもぎ取られた。次にその座に着けるのは、お前しかいない」



「勘弁してくれ。オレは上に立つような器じゃないさ」


杏里は肩をすくめ、戯けて見せる。


彼はそういう肩書きをむしろ嫌っている。


自由を奪われることや、堅苦しいことを苦手としているためだ。



「そんな事はない。お前は強く、勇敢で頼れる男だ。私もお前を一番信頼しているからこその話なのだ」



「…買い被りすぎだろうよ」



「国王として、と言いたいところだが、あくまでも親友としての頼みだ。私のために一緒に戦って貰えないか?」


右京は、この友人が自分の頼みを無下にしないことをよく知っている。


幼いころからこうして無茶を言っては彼を困らせてきた。



杏里は大きくひとつ息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。



「お前さんってヤツはまったく…」


それ以上は言葉に詰まり、出てこない。



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