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ーーー20分後。
「⋯⋯で、どうしたらいい?」
「戸籍なんかはいくらでもどうにかなる」
「へ?!」
杏里の言葉にビックリ。
「そんなのは魔術の力を借りて…」
おっと、そんな微妙な設定の話しはそこまでだ。
これはフィクションのお話ですから。
「と、いうことは、あとは住むとこだけだね」
そうですね、細かいことは割愛しましょう。
「杏里のとこには一緒に住めないの?」
杏里のマンションに一緒に住めばいいじゃない。
仲良しなんだしさぁ。
「冗談言うな。ただでさえ忙しいのに、葉月の面倒まではみれない」
冷たいこと言わないでよぉ、くすん。
「自分も杏里様にご迷惑はおかけできませんよ」
「でも野宿はマズイでしょう。体調だって崩しちゃうよ」
「平気です。頑丈ですから」
そんなこと言ったって、さすがに見過ごせないわ。
冬は寒くなるんだよ?
あ、いいこと思い付いた。
「じゃあ、こうなったらうちに住めば?」
あたしんち一応一軒家だし、他に誰もいないから無問題。
「い、いえ、そんな恐れ多いですっ」
「葉月の言う通りだ。さすがに同居なんて許可できないね」
「別にいいじゃない。葉月さんには向こうでお世話になったもの」
「そういう問題じゃないだろ」
「杏里のとこダメだったら、うちしか無いでしょう?」
「だったらオレがここに住んで、葉月がマンションに住めばいい」
「杏里はお仕事忙しいんだから、他に人いないほうが専念できるんじゃないの?それに葉月さんがいきなり一人暮らしなんて、大変じゃん」
ご飯とか洗濯とかきっと困るよ。
「そういう意味じゃない。他の男とひとつ屋根の下なんて、許せないって事だ」
あら、妬いてるの?
「じ、自分、本当に大丈夫ですからっ」
「葉月さんがあたしにちょっかい出すと思う?。杏里の大切な部下でしょ?」
「それは否定できないが…」
「それにあたしもひとり暮らしよりは葉月さんが居てくれたら安心する」
「ユキナ様…」
「心配なら杏里も一緒に住めばいいよ。賑やかなのは好きだわ」
「…ったく、君って子は突拍子もないことを平気で言うね」
そんなの、今に始まったことじゃありません。
「オレは静かな場所じゃないと仕事に集中できない。それに⋯⋯」
それに?
杏里はあたしの耳に唇を寄せる。
「邪魔者がいたら、二人でいい事できないだろ?」
葉月さんに聞こえないように杏里が囁く。
「ちょっ⋯⋯/////」
あたしは茹で蛸のように赤く染まり上がってしまう。
なんてこと言うのっ。