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嘘つく理由  作者: 槻乃
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圭太の彼女

かなえ達の通う学校は中高一貫校の高等部だ。

かなえは高校からの編入生。

しかし、圭太は中学から、この学校に通っていた。

だからこそ圭太は学内で有名人でもあった。

「なんで佐熊君があんな子とつきあうわけ?」

「冗談でいってるんだから本気にするとか馬鹿でしょ」

「身の程知らずよね」

同学年の女子の間ではそんなことがささやかれていた。

大志のいっていたように圭太はもてる。

ルックス、成績 、性格がいいのはもちろん、お金持ちなのだから当然と言えば当然だ。

そして、中学から誰に告白されても彼女を一度も作らなかった圭太が罰ゲームで告白して彼女ができてしまったのだ。

しかも、高校からの編入組につづき親のいない施設育ちの得たいの知れない同級生が彼女なのだ。

「かなえ、大丈夫?」

かなえの親友、雫がため息をついていたかなえに声をかけた。

「え?」

「ほら、佐熊君のことあってからいろいろ言われてるし」

「まーね…。大丈夫よ。すぐにおさまるって」

かなえは平然と受け流すがいじめにも似た嫌がらせは止まらなかった。

「あーあ…支給品なのに」

学費免除と同じく教科書代も免除してもらえている特待生のかなえの教科書に落書きがされていた。

「かなえー、それはまずいよ…」

雫が教科書を覗き込んでいた。

「仕方ないよ…こうなることくらい覚悟してたし。それにこれは私が招いたことだし…」

困ったように教科書を閉じる。

「いい?絶対に圭太には言わないでよね」

「うん…」

雫が渋々と返事するものの圭太は大志からその情報を仕入れていた。

さくら園の大志の部屋でテスト対策として訪れていた圭太はかなえの今の状況を知らされた。

「かなえがいじめにあってる?」

「やっぱり知らなかったか」

「だってあいつそんなこと一度も!」

「言わなかったのはなんでかわかるよな?」

大志はシャープペンシルを圭太に突きつけた。

「俺のせい…か」

圭太は頭を抱え込んだ。

「かなえに…会ってくる」

圭太はそう言って立ち上がった。



かなえが部屋で勉強をしているとトントンと部屋の戸が叩かれた。

「はーい」

かなえが出ると目の前に、圭太が立っていた。

「何?」

「お前、いじめられてるって」

圭太は話しかけながら部屋に入った。

「そんなことないよ」

かなえはいつもの笑顔で答えた。

「じゃあ、この教科書なんだよ」

机の上に広げられていた教科書を持ち上げた。

「ふざけて落書きされただけよ。勝手にいじめとか思わないでくれる?」

圭太の手から教科書を奪い返そうと手を伸ばした。

「なまいき、しね、ばか、きもいが…そうか!?」

「あんたには関係ないでしょ」

「俺と付き合ってからなんだろ!

するとかなえは大きくため息をついた。

「大志ね…」

「なんでだまってるんだよ」

「別にいいじゃない」

「よくねーよ。俺が原因…」

「原因とか関係ないわよ。それにあの時からこんなことになることくらいわかってたし」

「……関係なくないだろ……」

「もてもての佐熊君に得たいの知れない彼女が出来て、皆とまどってるだけ」

「あのなぁ」

圭太は心配そうにかなえを見た。

「そんな顔しないでよ。こんな関係もうすぐ終わるから」

かなえは圭太から教科書を取り返した。

「それまでの我慢よ」

「どういうことだよ…。別れるってことか?」

かなえは何も言わずににっこりと笑った。

「さて、もう用ないなら出ていってよ。テスト近いんだし」

「あ、ああ…」

そして、かなえに背中を押されながら部屋を出ようとしたときに圭太は急に振り返った。

「な、何よ。まだ文句あるの?」

「いや、そうじゃなくて…」

圭太はかなえの机の上をじっと見た。

「何?宿題は見せないわよ?」

「ちげーよ」

机のうえに広がる教科書、ノート、プリントの周りをみた。

「何か足りなくないか」

「はい?」

「ほら、写真たてのとこ…」

かなえや友達、施設の子達の写真が飾ってあるところを指差した。

「あ…うさぎ」

圭太が呟いた。

「え?」

「うさぎがいないんだ」

かなえが驚いたように圭太をみた。

「手作りの小さなうさぎのぬいぐるみだよ。珍しいな、あそこにないなんて」

「私が何を飾ろうと自由でしょ」

「だけど、あのうさぎはおまえがここに来たときに一緒にかごの中にはいってた大事なぬいぐるみだろ?」

かなえが一瞬ひるんだ。

「捨てたの」

「え?」

「もう高校生よ。今さらそんなもの持ってたって意味ないじゃない」

かなえは勢いよく圭太を部屋から押し出した。

「汚くなってたしね。ほら、もういいでしょ」

邪魔しないで、といってかなえは圭太を出して鍵をしめた。

「かなえ!」

戸の向こうからかなえを呼ぶ声がするがかなえは返事を一切しなかった。

そして、圭太の声がしなくなるとかなえは大きく息をはいた。

「めざといなぁ…」

髪をくしゃりとかきあげながら机の上を見た。

「大丈夫…大丈夫だよ」

自分に小さく言い聞かせながらかなえはテスト対策に戻ったのだった。



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