衣替え
衣替え。
季節の変化にあわせて、服装を変化させる。
天祥学園にも、その季節がやってきた。
「何だかにぎやかね」
「そうだな」
門の辺りがいつもより騒がしいのを見て、王貴は首をかしげ、九郎はうなづく。
「風紀委員だ」
「おはよう河野君」
「おはよう」
「風紀……ああ、衣替えか」
後ろから現れたクラスメイトを振り返り。
九郎は思い出したように言って、ため息をついた。
「それはまた……騒がしいわけだ」
「そこの生徒、ネクタイが乱れている。直すか外すかどちらかにしろ!」
「そこ!そのシャツは指定違反だ!」
「止まれ!貴様、違反をしておきながら逃げるとはいい度胸だな」
「元気ね、真幸」
「というか、熱いな……あいかわらず」
天祥学園風紀委員長、東堂真幸。
学園一生真面目で熱いといわれている。
元々規則は緩めの学園ではあるのだが、その分、守らなければいけないとされるのだ。
一人、また一人、門で捕まる生徒。
「まあ、大きく違反してなければ問題無いな」
「そうだな……と、王貴」
「何?」
「ネクタイ」
王貴は、"リボン結び"にした自分のネクタイを見た。
はあ、と息をついて九郎はそれに手をかける。
「生徒会長が引っかかるわけにはいかないだろ」
「そうね」
周囲の視線は気にせずに、九郎は王貴のネクタイを結びなおした。
隣にいるクラスメイトは、既に慣れたのか動じることは無かった。
が、それでも少しは思うところがあるのか。
「よし、行くか」
「……そうだな」
「?修二、どうかしたのか」
「なんでもない。行くぞ」
歩き出すクラスメイトを、不思議そうに二人は見つめた。
「! そこ、出てこい!」
真幸が投げたペンが、木の中に吸い込まれるように飛んでいった。
そしてそこから、人が落ちる。
「何すんだ!」
「高良か……相変わらずだらしの無い格好だな」
「別にいいだろ、動きやすいんだよ」
「残念ながら駄目だ、ベルトはするのが規則だからな」
「規則規則とお堅い頭しやがって……」
「文句があるのなら堂々とすればいい、それをこそこそと……」
「「やるのかっ!!?」」
(((また始まった……)))
周囲の風紀委員や一般生徒何人かはそう思った。
高良和氏と東堂真幸の争いは、今に始まったことではない。
しかも、大方の理由は"何となく"反りがあわないため。
「和氏ー先いってるからなー」
遠くから、凌が軽く手を振って通り過ぎた。
「いやしかし、夏服はいいよね。薄着だし」
「希雪……」
友人の言葉に呆れながら、世乃はため息をついた。
「で、世乃はいつ上着脱ぐの?」
「……もう少し暑くなってきたらかな。希雪は?」
「ぎりぎりかな。日焼けするの嫌だし」
「あ、なら許可とる?」
「許可?」
「許可があれば、真夏だろうと上着オッケーなんだよ」
「そういわれると、帝人は年中上着を羽織ってるな」
「日差しとかクーラー苦手だからね。おはよう」
教室でクラスメイトに挨拶を返しながら、王貴は答えた。
「でも、許可を取るのも大変じゃないの?」
「……いや、それは……」
クラスメイトに尋ねられ、九郎はやや苦笑いを浮かべる。
そこに、予鈴が鳴り響た。
席に着き、ほっとしたように息をつく。
そして、誰にも聞こえないように呟いた。
「許可も何も、生徒会長権限だから、な……」