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Scool!!  作者: 白金千乃
一学期
7/25

クラスマッチ(春) 5




   「さすがだね、一見病弱可憐な少女とは思えない動きだよ」

   「先輩こそ、いろんな意味で常識はずれです、ねっ」


   「はは、褒めても何もないよ?」

   「すみません、言葉を間違えたようです」

   「それにしても、他を全て九郎君に任せて一対一で来るとは。下克上かい?」

   「嫌です先輩、下克上は下から上にするものですよ?」

   「あれ、俺先輩だよね?上じゃないんだ?」

   「先輩は斜め右辺りです」

   「それは……どこ?」



   楽しげに会話を交わしながら、二人は走り続けていた。

   時折、跳びながら。


   「さて、そろそろ逃げられないよ?」

   「!」


   そこは、壁で囲まれた廊下の端。


   「制限時間まであと少し……頑張ったけど、ここまでだよ」

   「あら、"これから"の間違いでは?」


   そう言うと、王貴は微笑みながら抱えた。

   消火器を。



   「……それの使い方知ってる?」

   「消すんですよね」

   「何を!?でも何か楽しそう!」

   「ですよ、ね!」


   勢いをつけて、王貴はそのまま司春に向けて駆け出した。


   そして、通り過ぎた。



   「え、殴らないの!?」

   「殴りませんよ!!?」


   そのまま通り過ぎる算段だったのだが、思わず返答してしまった。

   司春はその隙を逃さなかった。


   「あ!」

   「捕まえた。まだまだ、甘いね」

   「……!」


   しっぽをとられるその直前。

   王貴が不意に咳きをした。


   廊下に、赤い染み。


   「王貴!?……え」








   「お疲れ様でした」


   王貴のねぎらいの言葉に、片手だけ挙げて九郎は答える。

   息を切らせながらも、ちゃんとしっぽをつけて。


   「そろそろ競技も終わるから、戻りましょう」

   「ああ……先輩は?」

   「先程沢城先輩が引き取りにこられました」

   「……了解」


   引きずられていったであろう姿を思い浮かべ、九郎は立ち上がった。

   ふと、王貴に手を伸ばす。


   「大丈夫だったみたいだな」

   「……特技がありますから」


   微笑む王貴の頭を撫でてあげながら、九郎は笑った。

   二つのしっぽが、ゆらりと揺れていた。






   数分前。


   「王貴!?……え」

   「甘いですよ、先輩?」

   「……やられた」



   思わず手を離した司春から、王貴が距離をとる。

   口元を拭いながら、王貴は微笑んだ。


   終了の合図が、鳴り響く。


   「……大丈夫なんだ?」

   「はい、これも特技ですから」

   「それは凄いね、誰にも真似できないや」

   「先輩なら、特技出血、にできそうですけどね」

   「……その手があるか」

   「……ですよね」






   結局、司春は復活しなかったものの、彼の言ったとおりに彼のクラスは優勝していた。

   恐らく、彼により全てを押し付けられた"彼女"の功績でだろう。


   「相変わらずだったな、先輩」

   「本当。人を困らせるのが好きな人だよね」


   困らせられるのも好きなくせに、と。

   二人は顔を見合わせて笑った。






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