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Scool!!  作者: 白金千乃
一学期
5/25

クラスマッチ(春) 3




   学内を縦横無尽に駆け巡る学生達。

   ゆらゆらと、その後ろについて回る、しっぽ。


   その光景を異様に感じるものは、少なくともこの学園内には居なかった。


   ピリリリリリリリリリリ


   「そこの生徒!階段は取り合い禁止区域ですよ?」

   「す、すみません!」

   「はい、警告1、と」


   速やかに、警告を受けた生徒にステッカーを貼る。


   「3つで退場だからなー」


   そして、九郎は移動する生徒の背中にそうなげかけた。


   「さすがに暴挙に出るような人はいないみたいね」

   (そりゃあ、暴挙に出たら暴挙が返ってくるからなー)


   王貴はにこりと微笑む。

   手には警告用に彼女専用スピーカーを持っている。

   ちなみに、他の審判はホイッスルを装備している。


   「……1年の復活タイム、もう終わったな」

   「じゃあ慧斗たちが戻ってくるね」

   「交代で亜丞達が2年復活タイムに入ったか…………」

   「大丈夫、この様子なら無茶な行動に出る人はいないでしょ」

   「いや……世乃と亜丞だろ?2年の担当って」

   「?うん」


   「明らかに世乃の方が捕まえられる確立が高いだろ?」

   「………………あ」









   東校舎、敗者復活区域。


   「「「待てえええええええええええ!!」」」

   「い、や、です!!」


   世乃はくるりと方向転換し、廊下を駆け抜けた。

   その後ろで、しっぽがくるりと揺れる。


   そしてその後を、大勢の生徒が駆け足で追いかける。


   (何で、こんなに、多いの!?)


   世乃は走りながら泣きそうなほどに焦っていた。

   追いかけてくる人数は、思っていたよりも多い。


   元から世乃を追いかけようとしていた人物。

   更に、本気で復活にかけているため、確立の高いほうに賭けた人物。


   それらが一気に世乃を追いかけているのだから、当然である。

   もちろん、本人が知る由はないが。


   「いた!」

   「!!」


   世乃が走る方向に、クラスメイトの姿が見える。


   (あ)


   (同じクラスの人にわざと捕まれば……!)



   世乃のクラスが勝利に近づき、加えて安全になる。



   「…………」



   世乃はクラスメイトに捕まる寸前で身をかわし、そのまま駆け抜けた。


   「それはやっぱり駄目っ!!」





   「……馬鹿真面目」


   上から眺めていた亜丞は、生徒会として仕事を全うする少女にそう呟いた。

   一通り逃げおおせて様子を見に来たが、思っていた通りの出来事に苦笑いが浮かぶ。


   ちらりと時計を見て、残り時間を確認し。


   「さて……そろそろ助けに行くか」





   「も、もう……無理……」


   時間はあと少し。

   しかし、もう体力が持たなくなり始めていた。


   「世乃!」

   「!亜丞君……!?」


   声のしたほうには、亜丞の姿。

   その後ろに階段(安全地帯)が見える。

   世乃は気力でそこまで走った。


   「下にも何人かいるから、とりあえず階段で休んで「きゃあ!」世乃!?」


   ふらつき始めていた足は、段差に耐えられなかったようだ。

   階段にたどり着いた世乃は、亜丞の横を倒れるように通り過ぎていく。


   まっさかさまに。







   西校舎の一角。


   「……ああ、心配だ!」


   そういいながら、希雪は華麗にしっぽを取りさった。


   「わざとでもしっぽとられればよかったじゃないすか」

   「それはそれで嫌だ!」


   気だるそうに呟かれた言葉に、希雪は言い返す。

   気だるそうな声の主、慧斗は、ため息を吐いた。


   「じゃあ愚痴るのやめてください、こっちも疲れてるんで」

   「……へえ、本気で頑張ったんだ、仕事」


   いつだって何事も程ほどにやっている慧斗にしては珍しい、と、思わず感嘆のため息がでた。

   それに対し、慧斗は疲れきったため息を吐く。



   「一応生徒会の仕事だし………捕まる方がよっぽど面倒」

   「……ああ」


   理由が分かり、希雪は納得してうなづいた。


   今回のクラスマッチ、頑張っているのは何も優勝目当てだけではない。

   公式に、誰かを追い回すことができる、という点でも、やる気を出している者たちがいた。


   「きゆ先輩も面倒なことになってると思ってたんすけど」

   「奴目当ての女の子達のおかげで大助かりしたよ」

   「あー、一応モテますからね凌先輩も」

   「倉石なんて凄かったぞ。嵐が駆け抜けたかと思った」

   「それで早々と脱落しちゃったんすね、王子先輩」


   「……ああ!余計に心配になってきた」

   「せの先輩も、人気者ですからねー」



   東校舎の方向を見つめ、慧斗は欠伸をした。






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