白線とグラウンド
登場人物 高良和氏 厳木風子
グラウンドに惹かれた真っ白な線を見つめた。
「完璧ね……さすが私」
「やったのは俺だけどな!!」
腰に手を当てて言い切った風子に、息を切らせながら和氏は怒鳴った。
まだ朝早く、人気の少ない学園の敷地内。
昨日の雨で崩れたグラウンドの線を、引きなおしていたのだった。
「あら、引く場所を指示したのは私よ?」
「そうだけども!なら線引きも自分でやれよ!」
「そしたら和氏の仕事がなくなるでしょ」
そもそも何で俺が、といいかけて、和氏は口をつぐんだ。
グラウンド整備は体育委員会の仕事である。
和氏は体育委員ではない。
ただ、部活の朝練でその場に居ただけである。
厳木風子。
天祥学園の中でも目を引く容姿の持ち主であり。
女子にして、体育委員長を努める彼女。
誰もが知っている。
もちろん、本人も含めて。
澄んだ朝の風に髪をなびかせる彼女を見る。
まるで、雑誌の表紙を飾れるような絵になる姿。
本人がそれを言うのもどうかと思うのだが、それも彼女ならと思えてしまうのだろう。
線引きも、確かに彼女の指示があったから手早く綺麗にすんだ。
これを自分でやってくれれば文句は無いのだが。
「どうかした?」
「……何でもないです」
体育委員長は伊達じゃなく、頭も運動能力もキレる。
勝てないことなどもう知っている。
「手伝ってくれてありがとう。和氏なら上手くやってくれるって思ってた通りね」
「……おう」
そう、彼女には勝てない。