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Scool!!  作者: 白金千乃
一学期
14/25

生徒会の夏休み(計画)



   夏休み。

   とはいっても、高校生にもなれば学業や部活やで忙しい。

   気がつけば、普段と変わらず学校に来ている、ということも多い。


   とはいっても、やはり休み。


   皆の気がやや浮かれ気味になることも致し方ないだろう。



   「だからと言って、学園内を荒らす事は一切認めませんけどね」


   夏だというのに、春の精の様な微笑と冬将軍の覇気を背負って。

   生徒会長帝王貴はガラスを割り正座した学生二人の前に仁王立ちしていた。



   「やあ、今日も働き者だね」

   「先輩方」


   にこやかなその声に王貴は振り返った。

   予想通りにこやかな笑顔の人物と、その隣でため息を吐いた人物。

   前生徒会長である御堂司春と、前副会長の沢城六花。


   「どうしたんですか?さすがに先輩に説教をするのはちょっと……」

   「いや、別に用があってね……まあ、彼らと並んで正座しても構わないけどね゛っ」

   「ちゃんとした用事だから、安心してね」


   司春に肘打ちを食らわせながら、六花が告げる。

   王貴は何時もの光景に微笑みながらうなづいた。










   「海?」

   「そう、先輩方からのお誘いで」


   先程司春と六花から持ちかけられた話。

   現生徒会と前生徒会メンバーで海に行こうという話。

   王貴は生徒会室へと戻ると、九郎と亜丞に伝えた。


   「まあ、私達も後半体育祭の取り決めまではお仕事も無いので」


   王貴は微笑みながら手を軽く叩く。


   「生徒会の夏休み、やりましょう」


   「……ちゃんと計画を立ててから、な」

   「世乃たちにもちゃんと聞いてからだぞ」


   きらきらとした、有無を言わさないその笑顔に。

   二人は仕方ない、と笑みをこぼしたのだった。










   「海?」


   世乃は少し驚いたように答えた。

   その様子に亜丞は聞き返す。


   「何だ、海嫌いなのか?」

   「え、ううん。そうじゃないけど……水着買わないとなあ」


   恥ずかしそうに声を小さくしながら世乃は言った。

   それを聞いて、ああ、とうなづいて。


   「まあ、スクール水着でも俺はいいと思うけど」

   「それはちょっと」


   冗談半分で言う亜丞に、世乃は苦い顔を返す。

   その顔を見て、亜丞は更に笑う。


   「でもまあ、それなら大丈夫だ。水着選びから皆で行くらしいから」

   「皆?」

   「そ。王貴も水着買うし、俺たちはまあ付き添いだな」

   「それなら大丈夫かな」


   「ね、買い物ついていってもいい?」

   「希雪」


   世乃に後ろから抱きつくように、希雪がくっついてきた。

   振り返りながら世乃が尋ねる。


   「二人の水着選びたいし、私も水着欲しいし」

   「それは構わないと思うぞ。なんなら海も来るか?」

   「生徒会水入らずでしょ?遠慮するわ。その代わり、別でプールに行く」


   予定ではなく、断定で希雪は言った。

   それを聞いて世乃は苦笑いを返す。


   「うん、プール、行こうね」

   「うん」


   世乃の微笑みに、希雪の笑み。

   亜丞もつられるように、笑みをこぼした。









   「そういうわけだから、海に行くよ」

   「どういうわけっすか……」


   若干呆れた顔でため息を吐いた慧斗は、目の前の王貴の顔を見る。

   きらきらと効果音をつけてもいいだろう笑顔。


   「まあ、いいですけど」

   「予定とか大丈夫か?」

   「今のところ特に未だ無いんで平気ですよ」


   尋ねる九郎に一応携帯電話で確認をしながら、慧斗は答えた。


   「食べ物とか奢ってもらえそうですし」

   「はは……」

   「それより会長は大丈夫なんですか?」

   「ん?」

   「海」


   海といえば強い日差しに潮風。

   一応病弱な王貴の体で大丈夫なのか。


   「うん、それは大丈夫」

   「ちゃんと対策をしておけば、な」


   はあ、とため息を吐いて九郎は王貴の頭を小突く。

   それを見て、慧斗もこっそりとため息を吐いた。


   「それより、そろそろ昼休み終わりですよ」

   「お、じゃあまた連絡するな」

   「またね慧斗」


   肘を突いて手を振りながら、二人の背中を見送る。


   ふと、視線を少し動かしてみると。

   周囲の生徒達もその背を目で追っている。


   カリスマ的な生徒会長、そしていつも隣にいる頼れる人物。

   後輩からすると憧れがそこにはあるものだ。


   もちろん、慧斗自身も、それが全く無いというわけではない。



   口にすることは無いけれど。



   「慧斗ー次移動教室だぞー」

   「……今行く」


   友人の声に、慧斗はゆっくりと立ち上がった。






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