テスト後日
(世乃マジ感謝っ……!!)
自分にとっては十分すぎる点数に、テスト用紙を握り締め和氏は心で叫んだ。
答案用紙をを渡す際の曾我が、いつもこれなら、という目も気にしない。
また、今回は平均点も良かったらしく、曽我の機嫌もそんなに悪くは無かった。
ように見えた。おそらく。
「はー、どやされずにすむ……」
「部活か?」
「夏のこの時期に練習禁止とか……考えるだけで怖い」
「世乃ちゃんさまさま、だね」
「本当にな……何時もの事ながら頭が上がらないよ」
別の教室。
「せのー、とりあえず頭を上げろ」
机にうつぶせた世乃を、希雪がゆする。
手には、先程帰ってきた答案用紙。
彼女にしては珍しく、ぎりぎり平均点である。
もっとも、他の科目を考えれば、痛手でもないのだが。
ただ、彼女の目標は、今回も果たせそうに無い。
「きゆ……私はもうだめかもしれない……」
「苦手科目くらい、落としたってしかたないでしょ」
「……今回は何時もより頑張ったのに……」
いつになく頑張りすぎると、結果が反比例する。
そういうこともある、と希雪は思ったが、言わずにただ世乃の頭に手をやった。
そしてまた別の教室。
「王次郎、九郎が感謝してたぞ。何時もよりいい点が取れたってな」
「それはよかった。俺も社会のコツとか教えてもらえたし」
「それ以上点数とってどうするんだよ……」
「……まあ、いろいろと」
珍しく、ぼかすように笑った王次郎を見て、亜丞は少し首を傾げる。
王次郎は、何時もの様に微笑んでいるだけだった。
少し離れて、生徒会室。
「さすが真幸、相変わらず完璧だね」
「これで夏期休暇中の取り決めは終了だな」
「うん、次は体育祭だからね」
「体育委員か……まあ、これに関してはちゃんとするだろうな」
はあ、と疲れたようなため息を真幸はついた。
それをみて、王貴は微笑む。
「おつかれさま。テストとも重なってたけど、疲れたでしょ?」
「このくらい問題無い」
「まあそういわずに、お茶でもどう?丁度おいしい和菓子があるんだけど」
「学校だぞ、というかお前風紀委員の前で堂々と……」
「甘いもの、好きだよね?」
「……」
「……」
「……」
「……おいしいって評判のお店の、水羊羹なんだけどなあ」
「……いただこう」
「うん」
微笑みながら、王貴は立ち上がった。
「今回のテストは、皆中々頑張ってた様だね」
「ええ、甲斐田先生も曾我先生もご機嫌でしたから。それより」
「うん?」
「いいんですか?自室を抜け出して家庭科室でお茶なんて飲んでて」
「構わんよ、こっそりとだから誰も気づいてないさ」
ニコニコと微笑む人物に、雨宮は笑いながら小さく息をついた。
「もう……ちゃんと仕事しないとだめですよ、学長」
「わかってるよ」
「本当かしら……お菓子まで持参して」
皿の上で、水羊羹が冷たく揺れていた。