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Scool!!  作者: 白金千乃
一学期
10/25

テスト準備





   「…………!」

   「あ、こら王貴!投げるな!」


   教科書を放った王貴の額を亜丞がつついた。

   が、何時もの明るさはそこには無く。

   うなだれるように、王貴は机にうつぶせた。


   「…………うう」

   「苦手科目を残しておきたくないって言ったのは王貴だろ」

   「化学というのは日進月歩、日々移り変わるものであって、その時だけを学んでもダメだと思う」

   「もっともらしいこと言ってもダーメ」

   「うう……」

   「一旦休憩するかー……何か飲むか?」

   「お茶。熱いの」

   「ちょっとまてよ、冷蔵庫の中確認してくる」



   「……お前ら、ここどこだか分かってるよな」

   「「九郎の家」」


   顔を見合わせて同時に言い放った王貴と亜丞に、九郎はため息をついた。



   「大体なんで俺の家で……」


   お茶を配りながら、九郎は呟く。

   色々といいながらも用意するあたりが九郎だ、と亜丞は思った。


   「王貴は丁度薬を受け取りに来る用事があって、俺のところは無理だから」

   「亜丞の家、今日も忙しいの?」

   「ああ、今週一杯は予約詰めだそうだ」


   そう言いながら亜丞は王貴の放った教科書を机に戻した。

   王貴は微笑みながらそれを自分の目の前からずらす。


   「……王貴」

   「……国語にしない?亜丞は国語の勉強しないといけないんでしょ?」

   「国語なら九郎とやる。から、王貴は化学な」

   「うっかり平均以下になりたくないんだろ?」


   九郎に言われて言葉に詰まる。

   王貴の成績は悪くはない。

   寧ろ、学年で10位前後には確実に居るほど良い。

   しかし、王貴は生徒会長。

   できれば他生徒の手本として、平均以上の成績は保っていたいのだ。

   ただ、何にも負けない彼女にも苦手な物はあるということで。


   大人しく教科書を手に取った王貴を見て、二人は小さく笑った。


   「やろうと思えばできるんだからな、まったく……」

   「さて、こっちも始めるか。九郎、頼むぞ」

   「はいはい。俺も苦手科目つぶしとかなきゃいけないんだけどな」

   「世乃……は和氏で手一杯か……王次郎にでも頼んどいてやるよ」






   ファミレスの一角。

   世乃はシャープペンシルを持って、和氏を指差した。


   「とりあえず、まずは問題演習からね」

   「……俺、公式覚えてないのもあるけど」


   ストローを加えながら、和氏は世乃を見た。

   そのストローを世乃は取り上げてコップに戻した。


   「問題をといて、公式を使い方ごと覚えるの」

   「なるほど」

   「和氏、計算は速いほうだし直感はあるから、後は問題を解いてなれる事」


   そう言うと、世乃は自分の飲み物に口をつけた。

   そして、自身の勉強分のノートを取り出す。


   「頑張るなー……"今度も"」

   「……頑張るよ」

   「……デザートも、奢るな」


   世乃が頑張る理由のひとつを、和氏も知っている。

   知っているから、応援しようとも思う。


   ついでに自分もケーキを頼もうと考えながら、和氏は目の前の数字にむかうことにした。








   「まったく……」


   ふう、とため息をつきながら、手元のプリントを束ねる。

   そこに、さっと湯飲みに入ったお茶が差し出された。


   「お疲れ様、甲斐田先生」

   「雨宮先生、ありがとうございます」

   「今日も賑やかだったようですね」

   「はは……」


   苦笑いを浮かべながら、差し出されたお茶を受け取る。


   「是非、そうしてもらいたい」


   職員室の扉を開き入ってきた人物は、淡々と言い放った。


   「曾我先生」

   「お疲れ様です、お茶、いかがです?」

   「結構だ」


   雨宮の申し出を断り、自分の席へとつく。


   「……すみません、本当に」

   「………………」


   トーンを落として謝る甲斐田に、曾我は無言で答えた。

   怒っているのではない。

   別に甲斐田が悪いと思っているわけではないし、曾我自身も馴れてはいることなのだ。

   機嫌が悪く見えるのは、彼の元来の性格と表情の所為である。


   「せめてテスト期間くらいは、静かになるといいんですが……」

   「ならんだろう」

   「…………」


   返す言葉も無く、甲斐田はお茶を口に含んだ。


   「テスト期間ですか……大変ですけど、頑張ってください」


   今回はテストがない家庭科教師である雨宮はそう言って、にこりと微笑んだ。







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